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広島GK林卓人が引退会見「大好きなクラブで終えるのが幸せ」…“1番継承”のGK大迫敬介もサプライズ登場

2023.12.05

現役引退のGK林卓人(右)と“1番継承”の大迫敬介(左) [写真]=湊昂大

 サンフレッチェ広島は4日、広島市内でGK林卓人の現役引退会見とミヒャエル・スキッベ監督のシーズン総括会見を行った。
 
 林は今シーズン限りで23年間のキャリアに幕を閉じた。「紆余曲折あったし、悔しい思いもあったけど、今はそういうのを全て受け入れてスッキリした気持ちでいる。サッカーに出合えて良かったなと心から思う」と清々しい表情で心境を語った。
 
 現役引退を決断したのは11月はじめ頃。「新スタジアムでもプレーしたかったけど、来季は選手として契約をいただけないとわかり、現役にこだわるか模索したが、広島で終わるのが自分の幸せだという気持ちが上回った。他のチームを探すより、この大好きなクラブで終えることが幸せだと思った」と決断理由を話し、「家族も一緒に頑張ってくれたので、僕からも『よくがんばったね』という言葉をかけさせてもらった」と明かした。
 
 現在41歳の林は、2001年に金光大阪高校から広島に加入してキャリアをスタート。2005年に一度はクラブを離れたが、北海道コンサドーレ札幌とベガルタ仙台を経て2014年に広島へ復帰した。「広島には『広島のGK哲学』が存在して、プロ入り最初の4年間で叩き込まれた」とGK王国で切磋琢磨した日々を振り返る。「その哲学さえ心に留めておけば、どこに行っても通用するという手応えは移籍して改めて思った。広島でGKをすることがいかに幸せで、いかに誇り高いかを感じました」
 
 広島復帰の翌年2015年にはJ1制覇に貢献。当時を思い起こし、「自分のキャリアの中で優勝できると思っていなかった。広島だから成し得たこと。チームメイト、スタッフ、監督、コーチ、サポーターを含めた全員で勝ち取った優勝だった。自分のキャリアに優勝が刻まれたのは大きなことだったし、本当にうれしかった」と改めて喜びを語った。
 
 今季は出場機会に恵まれなかったが、現役引退発表後の11月25日に行われた明治安田生命J1リーグ第33節のガンバ大阪戦に途中出場。エディオンスタジアム広島でのラストマッチで3点リードの83分にGK大迫敬介との交代でピッチに立ち、紫の大声援を背にゴールを守り切った。試合後には引退セレモニーでサポーターに直接挨拶し、サプライズで自身が背負ってきた1番のユニフォームを大迫に手渡していた。
 
 林は背番号1を大迫に託したシーンについて、「正直、これを言ったら冷めるかもしれないけど、1番を渡したのは最後にファンの方たちに喜んでもらいたかったから。自分はエンターテイメントのような部分が一番足りなかったので、最後に喜んでもらいたかった」と明かしつつ、「もちろん敬介への思いもあった。(1番は)僕だけの番号ではないし、来年はチームが(大迫に)渡すというのも聞いていた。チームからも『(林が)渡したほうが喜んでくれると思うよ』と言われ、アイツ(大迫)も付けたがっていると教えてくれたので、ああいう形でやらせてもらいました」と説明した。
 
 今後については、「半年ぐらい南の島に行きたい(笑)」と冗談を言いつつ、「このクラブに恩や愛情があるので、恩返しやクラブの発展のために情熱を使えるよう勉強し、成長しないといけない。選手から早く切り替えられると思うので、このクラブのために忙しく働く予定です」と広島に残ることを明言した。
 
 会見終了後には、サプライズで大迫が花束を持って登場し、これには林も「この前(G大阪戦)のお返し?」と笑顔。最後のメディア撮影中には「現役中は(メディアに対して)ツンツンしてすみませんでした。今後も選手たちのことを取り上げて、スターダムに乗っけてあげてください」と笑顔で取材陣に話し、最後まで後輩思いの姿を見せていた。

 

総括会見に臨んだスキッベ監督 [写真]=湊昂大


 
 林の会見後には、スキッベ監督が2023シーズンの総括会見に出席。来シーズン続投について正式発表はまだだが、「このチームに関わっていきたい」と意欲を口にした。「(来季の契約について)いい話し合いができている。このチームはまだまだ伸びるので、そこに関わっていきたいと強く思っているし、広島の街もすごく気に入っている。クラブ側も託す気持ちでいてくれると思うので、うまくいけばいいなと思う」
 
 スキッベ体制2年目の今季、広島は J1リーグを17勝7分10敗の3位で終えた。開幕戦から誤審があるなど3戦未勝利でスタートしたが、その後は5連勝と調子を取り戻した。だが、FW満田誠やDF塩谷司などの主力選手が負傷離脱すると、夏には公式戦8試合未勝利が続き、カップ戦2大会とも敗退と苦しい時期を経験した。それでも、主力の復帰やシーズン途中加入のFW加藤陸次樹とFWマルコス・ジュニオールの活躍もあり、苦境を乗り越えて2年連続となる3位でフィニッシュ。来年から新設されるAFCチャンピオンズリーグ2(ACL2)出場の可能性も残した。
 
 ドイツ人指揮官は、「夏場の苦しい時期があっても今シーズン3位になって、昨季より3ポイント多く勝ち点を取れたのはすごく嬉しい。最後の最後まで戦い続けて、同点にする、逆転するという試合を見せられたのは、自分たちの強いメンタリティが出せたところだと思う」とチームの戦いぶりを称えた。
 
 今シーズンは総得点数がリーグ7位の42点、総失点数はリーグ2位の28点を記録。昨季と比べて失点数は13点減ったが、得点数も10点減った。スキッベ監督は、「1年目に比べて失点数が確実に減ったのは良かった」と満足した様子だが、得点については、「数多くチャンスを作ったのに対して得点数が少なかったことは残念」と話し、今シーズンの課題を聞かれても「得点」と一言で指摘した。
 
「得点が少なかったのは前線の選手がなかなかフィットしていなかったから」と理由を語り、「前線の選手たちがケガなく、フィットした状態で1シーズンを過ごせることが非常に重要なポイントになる。そのためにはプレシーズンで強度の高いプレーができる身体づくりをしないといけない」と対策を口にした。
 
 来シーズンは新スタジアム「エディオンピースウイング広島」で新たなスタートを切る。スキッベ監督は、「本当にいい形でエディオンスタジアムとお別れすることができた。そこで培ったことをすべて次のスタジアムに持っていって、またみんなで数多くの勝ち点を積んで、いいものを作っていきたい」と意気込んだ。
 
取材・文=湊昂大

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By 湊昂大

Kota Minato イギリス大学留学後、『サッカーキング』での勤務を経てドイツに移住して取材活動を行う。2021年に帰国し、地元の広島でスポーツの取材を中心に活動中。

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