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【イタリア発コラム】イタリア紙記者が見た日本代表の戦い

2026.07.08

[写真]=Getty Images

 6月29日、ノックアウトステージの1回戦、日本は「激闘」の末、“王国”ブラジル代表に1-2で惜敗した。

 後半アディショナルタイムでの被弾。日本代表は、この試合を含めてワールドカップの舞台で5度、ノックアウトステージに駒を進めているが、いずれも敗れ、そのすべてが1点差、あるいはPK戦決着であり、本当に惜敗ばかりなのだが、“初戦の壁”がなかなか打ち破れない。

 敵将、カルロ・アンチェロッティ監督の母国、イタリアの記者は、「5度目の正直」を果たせなかった今大会の日本代表をどう見たのか。

『コリエレ・デッラ・セーラ』のカルチョ担当、パオロ・トマゼッリ記者と話した。なお、『コリエレ・デッラ・セーラ』は、一般紙ながら今大会に4人の特派員を送り込んでいるという。ピンク色で有名なイタリア随一のスポーツ新聞『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は、実に11人の記者を各地に配置しているというのだから、やはり“カルチョの国”。自国の代表は予選敗退でも、人々の関心は高い。

 ヒューストンでの試合は、両軍にとって難しい試合になった。

「ブラジルは、決してトップの状態ではなかった。見方によっては、カタールのときよりも悪い状態だった。一方、日本ももう少しやりようがあったんじゃないかな。前半から後方に下がり、コンパクトに守備を固めた。前半はそれが機能したと思う。アンチェロッティは、攻めあぐねる自軍の選手たちを見て、後半、大きく戦術を変えてきた。中央からサイドに。CBとアンカーのカゼミーロを中心にボールを幅広く散らしだした。後半になりチームがようやく機能し始めた」

 日本に対処法はあったか?

「いつものボッレンテ(イタリア語で『泡立つような』という意味)なプレーをするべきだった。スピードとインテンシティを重視した彼らの得意なサッカーを、だ。オランダ戦では2度勝ち越されたことで、やむを得ず、プレーを泡立たせていった。それでいい面が引き出されたんだ。あくまで私見だが、アンチェロッティが仕掛けを始めたとき、日本も守備に気を配りながらも、仕掛ける勇気が欲しかった」

 チーム全体に疲れもあった。

「それは見て取れたね。交代枠が5人となった今、ノックアウトステージのような状況では、いかにパンキーナ・ルンガ(イタリア語で長いベンチの意味。豊富な交代要員を持っているチームの例え)を持っているかにかかってくる。フィールドプレーヤーの半分を交代できるわけだからね。チームの状態はどうあれ、王国のベンチはやはり長い。決勝点を挙げたガブリエル・マルティネッリみたいな選手が、うようよベンチに控えている。一方、日本は明らかにコマ不足だった。三笘、南野をけがで連れてこれず、遠藤はこちらに来てから離脱、久保も間に合わなかった。もともとベンチが短いわけではなかったが、これだけけが人が出ると…。グループリーグから出続けている選手の疲弊も見逃せなかった」

 長期戦となるとやはり厳しくなる。

「森保監督は、『誰が出ても機能するサッカー』を標榜していると聞くが、ワールドカップのような大会、特に今回のように48チーム参加の大会になると陣容の貧富は大事な要素となる。その点では日本は少し不運だったように思う」

 くじ運も悪かった?

「どうかな。ブラジル、モロッコ、フランスだったら、ブラジルが一番やりやすかった(笑)。それほど、グループステージのセレソンは、状態が良くなかった。一人ひとりの能力は高いのだが、DFラインと前線が分離していてバランスは最悪だった。アンチェロッティは2戦目のハイチ戦で、カゼミーロをDFラインまで下げて、その問題を解消した。監督の現役時代のポジションはボランチ。つなぎ役の重要さは、人一倍わかっている人さ」

 日本選手の中で気になった存在は?

「グループステージでは鎌田。やりくりが難しい中で、中盤の底とシャドーをそつなくこなした。リーダーとしての役割も果たしていたように思う。それから、佐野も。彼は素晴らしい選手だ。今後、サムライブルーの中心になっていくことだろう。そして、やはりGKの鈴木彩艶。彼のセーブがなかったら、ノックアウトステージには進出できていただろうが、多くの結果がまた別のものになっていたかもしれない。イタリアでも彩艶は常に強烈なパーソナリティを示している」

 プレミアリーグなどに移籍の話もあると聞くが?

「控えにまわるよりはゲームに出続けたほうがいい。イタリアならレギュラーはほぼ保証されるし、優秀な指導者も多い。個人的にはもう少しイタリアにとどまり、華麗なプレーを見せ続けてほしいね」

 塩貝選手のネイマールについてのコメントは?

「正直、彼がどんな言葉を発したのか、正確には知らない。『ブラジルは昔ほど強くない』?まあ、私も彼とほぼ同意見だが(笑)。ビッグマッチの前には、なるべくそうした“挑発”は控えたほうがいい。欧州プレーオフの決勝で、ボスニア・ヘルツェゴヴィナがウェールズを破り勝ち上がったことを知ったイタリア代表がロッカーで歓喜する動画が拡散。その後、敵から手痛い“報復”を受けたのは、周知の通りさ」

 試合後のアンチェロッティの行動が日本で話題になっている。

「失望し、ピッチに座り込んだ日本の選手の頭に手を置いて慰めた。もちろん、お互い激闘を演じた日本へのリスペクトがあったと思う。ただ、ブラジルの監督としては、あそこで喜びを爆発させてはダメだ。ベスト32を突破しただけでは、王国のファンは納得しない。アンチェロッティは、そのことも考え、神妙な面持ちで行動しているのだと思う。余計な騒動が選手のプレーに悪影響を及ぼさないように」

 日本の次期監督にアンチェロッティはどうだ、という声もあるが。

「日本は絶対に強くなる。彼とグアルディオラは。個人的に日本代表のサッカーにさらなる進化をもたらせる人物だと思っている。問題は契約と年俸だ。セレソンとの契約は2030年まで延長されたし、年俸は税抜で1000万ユーロ。それだけの条件を提示できる国は、多くない」

 日本対ブラジルではチケットが高騰した。リセールを公式に容認している現行の制度については?

「アメリカを中心に行った今大会では通用した。チケットの高額化の傾向はとめられないだろうが、次回のスペイン、ポルトガル、モロッコの共催大会ではもう少し安価な設定になるのではないかと思う。欧州やアフリカのファンは、この傾向を簡単には受け入れないだろう。普通のファンが気楽に買える値段ではなくなっている」

 フーリガンやウルトラスを大会から締め出したいFIFAの意向も感じる?

「今にはじまったことではない。とにかく今大会はファン層がだいぶ変わったなとは感じたね。今後どうなるか」

 最後に。もし来週、日本とイタリアが対戦したら、結果はどうなると思う?

「1回のみならわからない。ただ、もし10回やったら、日本が勝ち越すだろうな。今のイタリアはプレーが遅いし、ここぞといったときに違いを示せるパーソナリティを持った選手がほぼいない。立て直すのは容易なことではない。僕らも、早く日本を圧倒できるような強いチームを作って、この舞台に戻ってきたいね」

パオロ・トマゼッリ記者


パオロ・トマゼッリ
1978年生まれ。大学で歴史とジャーナリズムを学んだ後、2002年から『コリエレ・デッラ・セーラ』紙の記者に。当初は自転車競技担当だったが、2014年からサッカー専門に。普段はユヴェントスの取材が中心。ワールドカップの特派員は今回が4度目。著書に『ユヴェントスの伝説』(未訳)などがある。

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