2016.03.07

「サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた」第12回外池大亮さん(スカパーJSAT株式会社)

サッカー総合情報サイト

構成=菅野浩二 写真=兼子愼一郎

大好きなサッカーにかかわる仕事がしたい――サッカー関連の職場への就職や転職を検討しているあなたにとって、『サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた』は必読の連載企画です。毎回、日本サッカーの発展に貢献してきた人たちが、どんな立場で、どんな信念を持って仕事に取り組んでいるかを教えてくれます。

今回は元Jリーガーの外池大亮(とのいけ・だいすけ)さんが登場してくれました。2007年、湘南ベルマーレでのプレーを最後に現役を引退した外池さんは、大手広告代理店を経て、現在はJリーグオフィシャルブロードキャスティングパートナーであるスカパーJSAT株式会社でサッカー文化の浸透に尽力しています。現役時代の話も交えながら、メディア、スポンサーという立場で心がけていることを話してくれました。

今春、男子・女子サッカーの専門学校「JAPANサッカーカレッジ」のサッカービジネス科を卒業する清野修平(きよの・しゅうへい)さんがインタビュアーを務めました。Jクラブへの就職を夢見る清野さんが、元Jリーガーの仕事の流儀に迫っていきます。

JAPANサッカーカレッジは、「サッカーにかかわる仕事に就きたい」人たちのための専門学校です。

今の仕事を選んだ理由と、業務内容を教えてください。

2013年に広告代理店から今の会社に転職しました。ご存じのとおり、スカパー!は基本的にJリーグの放映権を取得し、J1・J2全試合中継や関連番組などのサービスに興味があるお客さんに視聴料を支払ってもらう形で事業が成り立っています。スカパー!はJリーグという日本サッカーの基盤となるコンテンツに広く強く向き合っていること、そしてサッカーにおいて広告代理店での経験でメディアとスポンサーの重要性をより感じていたので、転職を決めました。

現在はJリーグの中継や関連番組の制作や編成などのコンテンツ管理から、パートナー同士の広告事業やリーグやクラブとのプロモーション業務など、幅広く携わっています。制作に関しては、『Jリーグラボ』と『Jのミライ』という番組を担当していて、社会の中に存在するサッカー界の分析や問題提起、それからクラブの基盤となっている育成の取り組みをテーマにした情報発信をしています。たまにJリーグの試合中継解説をやることもありますよ。

プロ時代にやっておいて良かったことなんですか?

Jリーグのキャリアサポートという活動を通して、企業でインターンを経験したのは大きかったと思いますね。これは選手の引退後の可能性を広げてくれる支援制度で、僕自身は8つの企業にお世話になりました。

第二の人生を真剣に考えるようになったのは、プロ6年目が終わった2002年に横浜F・マリノスから0円提示を受けたのがきっかけです。プロになった時は「10年現役をやったら3億円くらい貯まるかな」なんて考えていたけど、現実は厳しかった(苦笑)。

それで、クビを言い渡された02年に引退後の人生を真剣に考え始めて、その時は新聞社のインターンで野球やボクシング、演劇の取材の勉強をさせてもらいました。それ以降、スポーツメーカー、Jリーグ事務局、広告代理店、人材派遣会社などの世界をのぞかせてもらって、この『サッカーキング』を運営しているフロムワンさんで取材や編集の作業もしましたよ。

そういったインターン活動を通して、選手時代に「サッカーを盛り上げようとしているのはプレーヤーだけじゃない」ということに気づけたんです。それが今の仕事につながっているんじゃないかな。キャリアサポートを受ける中でできた人とのつながりは財産になりましたし、実際、現役引退後に入社した広告代理店もインターンがきっかけの一つでした。

なぜ指導者などの道を選ばなかったのですか?

サッカー界の中心にいるのは選手ですが、実はその外側からいろんな企業や人たちが支えている。ピッチやスタジアムの外にもサッカーを広げていく仕事があることを知って、そういう世界で生きてみたいなと思ったんです。たとえ指導者になったとしても、選手へ何かを伝えるにも、サッカーをうまくなることだけでは事足らないことをプロ経験を通じて感じることになったことも大きな要因です。サッカーを選手として諦める選手へのアプローチも育成期には必要な考え方だと思いますし、自分にはピッチレベル以外の経験が必要だと感じました。

僕は11年間も現役をやらせてもらいましたが、選手としてのキャリアが長い人間ほど、その強みがピッチの外で生きるような気がしますし、生かしていくその責任がある存在です。プロという場でやらせてもらうとはそれだけ重いことです。実際、インターンの時も、前に勤めていた広告代理店でも今の会社でも、僕のキャリアは社会の中ではレアな存在としておもしろがってもらえましたし、サッカーにかかわる企業にとっては、選手の経験や視点が必要とされる場面も多いんです。サッカー選手も同じですけど、世の中でレアな存在になること、その付加価値を持っているのは強みになりますよね。

メディアとしてサッカーを扱う際の信念を教えてください。

サポーターの方たちに楽しんでもらえるのかどうか、サポーターが何より大切にしているピッチレベルをリスペクトしているかどうか。その思いがサッカー番組を手がける上では大きな軸になっています。プロサッカー選手として誰にいちばん育ててもらったかというと、やっぱりサポーターの方々ですし、皆さんのサッカー愛に応えていきたいという思いがあります。

僕が働くスカパー!には「地域のサポーターのため」「クラブのため」「Jリーグのため」「日本サッカーのため」最後に「スカパー!のため」という順番の5箇条があります。メディアの立場からサッカーを発信する中では、その5箇条を念頭に、現状を伝え、課題を未来にどうつなげていくかを意識していますね。単にスポーツというだけでなく、教育や地域、ビジネスといったいろんな視点で語られるようになれば、サッカー文化は成熟していくはず。自分の仕事を通して、様々な角度からサッカーにかかわる人を増やしていきたいという気持ちは強いです。

どんな若者と一緒に働きたいですか?

チームとして何かをやろうという時に、損得抜きにまずはかかわってみようという人間が好きですね。たとえやりたくないと思っても、かかわるという意欲を持つこと。若い頃はそれだけでいいぐらいで、まずやってみることで気づくことも多いと思うんです。

僕自身、現役時代はFWから始まり、ボランチやDFなどいろんなポジションをやらせてもらいました。その経験から言うと、こだわりも当然ある中で「できません」というのは簡単だけど、挑戦してみたら意外と自分らしさが出せることもあるんです。自分の殻を破ってみることは決して悪いことじゃない。もともと設定していたゴールじゃなくても、前のめりに動くことで別の目標が見えてくることも多いので、まずはかかわってみよう!という人間がチャンスをつかんでいくんだと思いますよ。

逆に……もう若くない私自身としては(苦笑)、精査するための選択肢を生み出し、判断として捨てる覚悟を持つことの重要性を感じ、日々精進しているステージにきているように感じます。

今後の目標を教えてください。

日本サッカー協会は2050年までの目標として、「サッカーを愛する仲間=サッカーファミリーが1000万人になる」というものを掲げています。メディアとして、パートナーとして、そこに貢献できたら、という思いはありますね。

サッカーにかかわる人を増やすためには、クラブやJリーグをどう根づかせていくかが重要になってくる。クラブとその地域の力を示すという意味では、昨年から特にユースやアカデミーの取り組みを紹介するコンテンツ作りに力を入れ始めています。クラブの育成や普及にフォーカスを当てる『Jのミライ』という番組がまさにそうですね。スカパー!はJリーグのパートナーですし、覚悟あるそれぞれの思いをコンテンツとして発信して、いろんな人をつなげるコミュニケーションを生み出していく、というところに落とし込みたいと考えています。

外池さんにとって、“プロフェッショナル”とは。

現役生活の7年目くらいに、自分の中でプロの定義が固まったんですよ。僕にとってのプロフェッショナルは、自分が楽しんで、その上で周囲を楽しませられる人間のこと。だから、苦しい姿は見せないのがプロです。

Jリーグや代表では、厳しいプレッシャーを受けながらも自分が楽しみ、ファンも楽しませてくれるプロがたくさんいます。それを目指す子どもたちもいますし、それを支えるサポーターもいます。彼らのプレーの信条や生き方をいかに引き出し、どう伝えていくか。その部分では、僕が今携わっているメディアという立場はすごく重要なポジションだと思っています。

サッカーの仕事を直接教えてくれた人
外池 大亮(とのいけ・だいすけ)さん

スカパーJSAT株式会社放送事業本部Jリーグ推進部に所属。早稲田大学を卒業後の1997年にベルマーレ平塚(現・湘南ベルマーレ)に加入。以降、横浜F・マリノス、大宮アルディージャ、ヴァンフォーレ甲府、サンフレッチェ広島、モンテディオ山形、湘南ベルマーレに所属し、FW、MF、DFと、様々なポジションでプレーした。2007年に現役を引退し、大手広告代理店の勤務を経て、13年に現在の職場へ。「Jリーガーや日本代表選手、有望な中高校生などを一堂に集めて、フラットにテクニックやメンタルを競い合う運動会のような番組も手がけてみたい」と話す。

サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた
・「視聴者から反響があった時は本当にうれしい」第1回 岡 光徳さん(テレビ朝日 GetSports)
・「サッカーの仕事を始めたきっかけは、日本サッカー協会への出向」 第2回 松本健一郎さん(西鉄旅行株式会社)
・「サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた」 第3回 山崎祐仁さん(株式会社 ニューバランス ジャパン)
・「サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた」第4回 上野山信行さん(株式会社 ガンバ大阪)
・「サッカー愛とビジネススキルを兼ね備えた人材」が求められている 第5回 幸野健一さん(アーセナルサッカースクール市川)
・「『人から可愛がられる』という要素が仕事スキル以上に重要かもしれません」 第6回 岡本文幸さん(鹿島アントラーズ)
・『どんな付加価値を与えられるのか』を明確に設定しておくことが大事」 第7回 渡邉和史さん(日本コカ・コーラ株式会社)
・「情熱さえあれば『ええもん』を作ることができる」 第8回 青井俊輔さん(ミズノ 株式会社)
・「仕事というのは向き不向きではなく、自分が変われば何だってできるもの」 第9回 山川幸則さん(FC東京 ホペイロ)
・「好きなことを仕事にする難しさをたくさん経験しました」 第10回 澤田勝徳さん(株式会社日本テレビサービス)
・「データを駆使した分析の分野で、日本サッカーの成長に携われていると実感を持てるのがこの仕事の魅力ですね」 第11回久永啓さん(データスタジアム株式会社)