2015.11.10

「情熱さえあれば『ええもん』を作ることができる」 第8回 青井俊輔さん(ミズノ 株式会社)

構成=金子裕希 写真=CORACAO 齊藤友也

将来、サッカー関係の仕事に就きたいと考えているけれど、どんな業種や職種があるのかよくわからない……。そんな疑問を抱いている人にぜひ読んでいただきたいのが、この連載『サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた』です。男子・女子サッカーの専門学校「JAPANサッカーカレッジ」の事務局長として若者の夢をサポートする藤田耕一(ふじた・こういち)さんが聞き手を務めました。

今回、お話をうかがったのは、ミズノ株式会社のグローバルフットウエアプロダクト本部企画デザイン部の青井俊輔(あおい・しゅんすけ)さん。フットボールシューズの企画がどういう仕事なのかということをはじめ、学生へのアドバイス、求められる人材などを教えてくれました。

仕事の内容を教えてもらえますか?

国内で販売されているサッカーシューズやフットサルシューズの企画全般をさせていただいていて、主に開発者やデザイナーら5〜7人で組んだチームを運営し、1つのシューズを作り上げていくことが私の仕事になります。すべて説明しきれないくらい業務があるのですが、その中で新製品のコンセプトを決めることが私の最初の大きな仕事です。次にそのコンセプトに対してどんなデザイン、機能が必要かというのをそれぞれの専門家に相談し、工場に設計図を渡してシューズを制作していきます。ですが、作って終わりではありません。多くのお客様に届くように作った商品をどうやって売るのかを広告やプロモーションの部署と案を練ったり、価格を決めたりもしています。

新しいシューズの開発は選手とやり取りをしながら決めるのですか?

そうですね。プロの選手から小学生などを含めて、ユーザーの方が何を考えているのか、次にどんなシューズを求めているのかをしっかりヒアリングすることを心掛けています。例えば、弊社契約選手の本田圭佑選手はすごく繊細な感覚を持ち合わせているので、まずはサンプルを履いていただいて、その感触のフィードバックをもらい、また作り直しての繰り返しで作り上げていきます。カラーに関しても本田選手とは毎回テーマから相談して決めていますが、ゴールドなら同じゴールドでも様々な色のゴールドを作って、見てもらいます。

この青色の『バサラ』シリーズは去年行われたブラジル・ワールドカップに向けて、岡崎慎司選手と一緒に開発したシリーズの最新モデルです。岡崎選手はスピードに乗った状態で何回も動き直しをしてフリーになる時間を作り、そこにいいパスが供給されることでゴールを量産されている。だから単純に足の速さだけをサポートするのではなく、スピードに乗った状態でのターンをもっと高めるというコンセプトで作りました。岡崎選手もそのコンセプトに共感してくださったから、10年間履いたミズノの別のシューズからこの『バサラ』に変えようという気持ちになってくれたと思います。


現在の職業に就いた経緯を教えてください。

「ミズノが大好き!」、「サッカーが大好き!」、「靴が大好き!」という想いがありまして(笑)。自宅にミズノのシューズばかり250足以上持っているくらい、生粋の“ミズノマニア”です。ミズノのシューズが好きというのが大前提にあって、自分が今までやってきたサッカー、広く言えばスポーツに関わる仕事がしたいなと思っていたので、中学の時からミズノに入りたいと周りに言っていました。それで進路を選ぶ時にどうしたらミズノに入れるのか、自分がやりたいことにたどり着くためには何を学んだらいいのかを考えて、体育、スポーツについて学べる筑波大学に進学し、卒業論文では「ミズノがこの先もっともっと多くの方に愛されるためにはどうすればいいのか」というのを書きました(笑)。

この仕事をやる上で必要な能力は?

第一は情熱ですね。これは多分、代々この部署で引き継がれてきているものになりますが、私も企画担当になった時に先輩から『情熱はあるか』って一言だけ書かれた資料が送られてきました。センスがあって、頭が切れて、いろいろな企画を生み出していけたら多少の情熱で仕事は回るかもしれませんが、それは本当に「ええもん」なのか。本当の「ええもん」は情熱がないと作れない。逆に情熱さえあれば他に特別な能力がなくても補うことができるというメッセージなのかなと理解しました。ミズノ社員は、創業者・水野利八の「ええもん作りなはれや」という言葉を誇りにしていますが、「ええもん」とはただ単に品質が良い、機能性が高いものという意味ではなく、お客様に素晴らしい価値、体験を提供できるものであると、私は理解しています。そういう観点からも情熱は必要不可欠で、私は誰にも負けない情熱を持っていると自負していますから、そこを大事にしてやっています。その情熱にプラスアルファするなら、視野の広さですね。特に海外というのが1つ大きなキーワードになってくると思うので、サッカーシューズの仕事に限らずグローバルな視点は、すごく大事なのかなと思います。

学生時代に身に着けておくべき能力、習慣は?

まずは英語。もうちょっと学生時代に勉強をしておけば良かったと、後悔していますからね。それと、いっぱい考えることは習慣づけておく必要があると思います。学生時代は時間のあるなしではなく、自由な発想、アイデアを考えられる貴重な時間だと思うんです。自分も卒業論文に書いた壮大な計画は、学生時代だから出てきた発想だったりする部分が多々あるので、会社に入ることだけに一生懸命になるのではなくて、そのあと自分がどうしたいのか、会社がどうなっていったらいいのかを学生時代のうちにゆっくり考えてほしいと思います。

学生時代に考えていたことで実現できたことは?

究極、自分が説明しなくても見た瞬間、持った瞬間、履いた瞬間に感情に訴える何かがあるものを作るということが一番大事なことじゃないかなと思っていて、それを商品で表現していくことが今の私の使命であると思ってやっています。

今、スポーツ業界ではどのような人材が必要とされていますか?

スポーツが好きとか、スポーツに対して情熱があるとか、そういうところなのかなと思います。うちの会社に関していえば、扱っている種目がいっぱいあるので、全員が全員、希望するところに入れることはありません。私もこの部署が第一志望でしたが、最初は別の部署の配属になりました。希望の部署や仕事じゃなくてもスポーツ、会社そのものに対する愛情があって、目の前の仕事を一生懸命やる。そのことがゆくゆくは自分のやりたいことにつながっていく、という考えを持てる人材がより求められているんじゃないかなと思います。


サッカーの仕事を直接教えてくれた人
青井俊輔(あおい・しゅんすけ)さん

筑波大学を卒業後、2009年に念願だったミズノ株式会社に入社。3年間営業として働いたのちに2012年に現在の部署へと異動となり、この4年間で100〜150もの商品を制作。「自分が1から考えたことを具現化でき、企画した商品が世界各国で売られたりするので、すごく幸せだし、一番楽しい仕事です。自分がこの仕事に携われている間にミズノの歴史に残るような、サッカーに一生懸命に取り組んでいる人の記憶に残るようなシューズを少しでも多く作りたい」と熱い想いを持って仕事にあたっている。

ミズノ 株式会社

サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた
・「視聴者から反響があった時は本当にうれしい」第1回 岡 光徳さん(テレビ朝日 GetSports)
・「サッカーの仕事を始めたきっかけは、日本サッカー協会への出向」 第2回 松本健一郎さん(西鉄旅行株式会社)
・「サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた」 第3回 山崎祐仁さん(株式会社 ニューバランス ジャパン)
・「サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた」第4回 上野山信行さん(株式会社 ガンバ大阪)
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・『どんな付加価値を与えられるのか』を明確に設定しておくことが大事」 第7回 渡邉和史さん(日本コカ・コーラ株式会社)