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「サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた」 第1回 岡 光徳さん(テレビ朝日 GetSports)

2015.04.13

構成=菅野浩二 写真=野口岳彦

サッカーにかかわる仕事に就きたい――。そんな夢を抱く人たちに有益な連載コーナーが、この『サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた』です。男子・女子サッカーの専門学校「JAPANサッカーカレッジ」の在校生がインタビュアーを務める企画で、今回はサッカービジネス科2年生の石川幸代(いしかわ・さちよ)さんが聞き手を務めました。

お話をうかがったのは、テレビ朝日のスポーツドキュメンタリー番組『Get Sports』(ゲット・スポーツ)でサッカー担当のディレクターとして活躍する岡光徳(おか・みつのり)さん。サッカー選手のドキュメンタリー取材の醍醐味や仕事をする上で必要な能力、今、求められている人材などを教えてくれました。

仕事の内容を教えてもらえますか?

視聴者が何を求めているかを常に念頭に置いて、企画を考え、取材の準備をして、実際に取材をして、構成やナレーション原稿のベースを書いて、映像の編集やナレーション録りに立ち会って……と、取材映像が放送されるまでのほぼすべての過程に携わっています。

大きく言うと、『Get Sports』はアスリートの生き様や哲学に迫るドキュメント系と、選手のテクニックなどに焦点を当てた検証系との2つに分けられます。どちらにしても、番組を観た人に対して「明日も頑張ろう」と思う“生きるエネルギー”や、“プレーするモチベーション”や“試合を観戦するモチベーション”を持ってもらえるように、という思いで制作しています。

仕事をする上でのポリシーはなんですか?

まずは分かりやすく伝えることと、映像でうそはつかないこと。ピッチ上では見えないディテールやコアな部分を、いかに視聴者の方々に理解しやすく届けるかは常に意識しています。

それから、「自分が取材したからこそ撮れた映像や発言を」という思いもあります。練習やサッカー選手の自宅をただ撮影するだけじゃなくて、取材を続けて、会話を重ねて、選手との信頼関係を築いて、少しでも“成功の秘訣”や“企業秘密”を引き出せたら、というこだわりみたいなものはありますね。

サッカー選手で初めて担当したのは誰のドキュメンタリーですか?

今、FC岐阜にいる(川口)能活さんです。2回、密着取材させてもらいました。2回目は2009年の11月から2010年の5月までで、あの時、能活さんは骨折の影響でJリーグに全く出場していませんでした。でも、最後の最後に南アフリカ・ワールドカップの23人のメンバーに選ばれたんです。

“サプライズ招集”とか“奇跡”とか言う人もいましたけど、僕自身はリハビリ中も含め、彼が真摯に取り組む姿をずっと見てきました。能活さんもそうですし、僕が取材させてもらった中澤(佑二)さん、岩政(大樹)さん、大儀見優季さんなど、一流のアスリートは「自分に何が足りないか」を日々見つめ、成功を引きつける努力を続けているんだと感じました。僕自身は、そういう生き方を映像に収めて視聴者の皆さんに届けたいと思っています。

仕事の中で一番忙しい時期を教えてください。

取材映像から、放送用の20分から30分程度の企画を制作する作業は大変ですね。徹夜が続く時もあります(笑)。

例えば100時間カメラを回していたとしたら、もう一度その100時間の映像を見直して、選手の発言をすべて文字に起こすんです。その時に、あとで分かりやすいように、「ここにこういう映像がある」というコメントも残しておく。100時間収録していたら、単純計算でも200時間はかかるわけですが、放送されない99パーセントも含め、すべては間違いなく自分自身の財産になっています。

やりがいを感じるのはどんな時ですか?

初優勝や記録達成、挫折からの成功など、歴史が変わる瞬間に結果的に立ち会えているのは醍醐味ですね。その過程こそが観る人の心を震わせるものだと思うし、それを多くの人に観てもらいたいという気持ちで仕事に取り組んでいます。

だから、視聴者から反響があった時は本当にうれしいです。会社に「感動しました」と電話してくる方がいたり、選手のブログやSNSに「『GetSports』を観て、今まではよく分からなかった部分が見えて、ファンになりました」と書き込んでくれる方がいるんですよ。それを選手から聞いたりすると、この仕事をやっていて良かったなあと思います。

今の仕事をする上で、必要な能力やスキルはありますか?

結局、人に迫っていく仕事なので、相手に対するリスペクトの心はものすごく大切です。選手が「嫌です」というものを強引に撮ろうとするのは絶対にダメ。僕は相手の意思を必ず尊重するようにしています。場合によっては、カメラを持たないで話を聞きにいくだけの時もありますね。

あとは、絶対に一線を踏み越えないというか、こちらから断定したり否定したりしないこと。技術的な部分もアスリートとしての生き方も、第一線でやっているサッカー選手が一番よく分かっている。そこを素人目線で「ああじゃない、こうじゃない」と選手にぶつけるのは失礼ですし、それでは信頼関係も築けません。僕の経験上、リスペクトの心を持って、分からないことは分からないこととして質問していけば、選手も徐々に心を開いてくれます。

学生時代にやっておいて良かったことはなんですか?

同じ高校から大学に入った友人が一人もいなかったんですよ。だから、人の輪に 自分から入っていかないとダメで、学校でもアルバイト先でも自分から飛び込んでいくようにしてました。それが今役に立っている気がします。ドキュメンタリーって会話がないと成立しないので、コミュニケーション能力だったり、質問力はすごく大切なんです。

他には、どうしてもこの業界に入りたくて、自分でデジカメを買ったのも意味がある気がします。17年くらい前の話ですね。見よう見まねで友達のバンドのライブ映像などを撮っていたんですが、そこで「どう撮るか」に少し慣れていたのは良かったと思います。

今、業界で求められているのはどんな人材ですか?

僕自身は「自分はこういうものを作りたい」という意思を持っている人と仕事をしたいですね。目標があれば能動的に動けますし、目的意識があれば吸収力も高いですから。

映像表現の細かいテクニックや取材のノウハウを覚えるのは、仕事を始めてからでも遅くはない。学生時代には、旅行に行ったり、音楽を聴いたり、映画を観たり、小説を読んだり、英語を勉強したり、“幅広さ”を身につけるほうが大切。幅広い知識があって、オールマイティに積極的に取り組める人材は重宝されると思いますよ。


サッカーの仕事を直接教えてくれた人
岡光徳(おか・みつのり)さん

大学卒業後、テレビ番組の企画・制作会社を経て、2008年からテレビ朝日『Get Sports』のサッカー担当。これまで取材したのは、川口能活、遠藤保仁、中澤佑二、鈴木隆行、岩政大樹、佐藤寿人、大野忍、大儀見優季など。福島県の二本松第一中学校サッカー部時代に全国大会ベスト8進出を経験。「自分が真剣にプレーしていたからこそ、選手に対するリスペクトの心を欠かさない、というのはあると思います」と話す。


テレビ朝日『GetSports』は毎週日曜日深夜0:45〜(一部地域を除く)
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【サッカーを仕事にしたいので、現場で働いている人に直接聞いてみた】
●「サッカーの仕事を始めたきっかけは、日本サッカー協会への出向」 第2回 松本健一郎さん(西鉄旅行株式会社)

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