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【近大和歌山】ついに掴んだ全国切符 初戦相手は「驚き」も「選手は頼もしい」<第100回高校選手権>

2021.12.26

近大和歌山の2トップ藤木皇成(左)と谷口金太郎(右) [写真]=安藤隆人

 12年ぶりの選手権の扉をついにこじ開けることができた。近大和歌山の指揮官に藪真啓監督が就任したのは2014年。そこから県予選決勝に進んだのは実に5回に上るが、ことごとく敗れて“シルバーコレクター”になっていた。

「僕も何年も決勝で負けたことで、いつも『絶対に勝たないかん』と思っていけど、それは逆にプレッシャーになってしまっていた。そこに気づいたことで、突っ走っていた自分から今年はいろんな人のアドバイスを聞いたことで、いい意味で開き直ることができました。勝つことに固くなって相手がどうこうではなく、自分たちの普段の力をいかに出すかを考えるようになったことで、選手たちも伸び伸びと戦ってくれた。『最初からこうしておけばよかったんだ』と思いましたね(笑)」と、自ら語ったように藪体制で6度目のチャレンジとなった決勝では、ライバルの初芝橋本に3-1で勝利し、“シルバーコレクター”の名を返上することができた。

 藪監督が口にした「いろんな人に相談をした」という人物の中に、国士舘大学時代の先輩である流通経済大柏の榎本雅大監督もいた。

「いつも電話でいろんなことを教えてもらっていました。練習のこと、サッカーに対する考え方、コロナ禍になってからはできていませんが、就任当初から毎年一緒の遠征に行かせてもらって、お風呂でサッカー談議をしたりと、本当に尊敬をしていて、お世話になっているんです」

 選手権出場が決まってからもよく連絡は取った。組み合わせ抽選会の直前にも連絡を取ったが、抽選の結果、なんと初戦の相手が流通経済大柏となったのだ。

「抽選前に国士舘大の別の先輩から『同士討ちだけは避けたいね』と言われていたのですが、まさかの初戦から榎本監督と戦うことになるとは…。本当に驚きました」

 尊敬する先輩との対戦は、藪監督にとってはむしろ「楽しみだな」と思えた。だが、肝心の選手たちはどう思ったのだろうか。一抹の不安を覚えながら、抽選を引いたDF荒木宏心(3年)に聞くと、「強いところとやりたかったのでよかったです」と返ってきた。他のチームメイトも荒木に対し、「ええとこ引いたな」と盛り上がっており、藪監督の不安も「選手たちは頼もしいなと思いましたね」と、取り越し苦労に終わった。

 対戦が決まってからも、榎本監督からは変わらず多くの話をしてもらえたという。2人の間に信頼関係があるからこそ、お互いの健闘を誓い合える。ある意味、運命的というか双方にとって思いのこもった戦いの舞台が整った。

「100回を迎える記念大会に出場できて、初戦の相手は流通経済大柏。相手が強いのは誰の目から見ても明らかですが、僕らはプレッシャーがないし、選手たちも気負いなく前向きに取り組んでくれているので、全力で榎本監督の胸を借りたいと思います」

 司令塔の畑下葵(2年)、MF北藤廉(3年)、谷口金太郎(3年)と藤木皇成(3年)の2トップと、藪監督が「能力の高い選手は揃っている」と手応えを持つ選手たちとともに、高校サッカー界の横綱に全力でぶつかりにいく。

取材・文=安藤隆人



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