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【米子北】佐野航大、3年間の集大成の舞台へ 選手権勝利と青森山田への雪辱を<第100回高校選手権>

2021.12.30

米子北MF佐野航大 [写真]=松尾祐希

 ボールを持てば、何かしてくれる…。遊び心を持ったパスや、意表を突いたロングシュート。堅守速攻が持ち味のチームにおいて異質な存在で、米子北のチャンスは全て佐野航大(3年)から生まれると言っても過言ではない。

 FC町田ゼルビアでプレーする3歳年上の兄・海舟は守備で魅せるプレーヤーだったが、弟の航大は創造性豊かなプレーが持ち味。そうしたプレーが中村真吾監督の目に留まり、1年次からトップチームで出場機会を得てきた。しかし、初めての選手権は散々な結果に終わり、今までにない挫折を味わった。0-6で敗れた青森山田との1回戦。試合途中からピッチに立ったが、何もさせてもらえず、最終的にはPKを与えて試合終了のホイッスルを聞いた。

「松木玖生、古宿理久、武田英寿とマッチアップしたんですけど、『何だ、この人たちは』と思わされました。技術もフィジカルも全然違っていて、足元の技術は頑張ればなんとかなると思っていましたけど、全く通用しなかった。あれだけの大舞台でやったことがなかったので、緊張はしていなかったのに、あっという間に終わってしまった」

 当時のことを振り返っても、試合中の出来事を鮮明に思い出せない。ただ、一つ覚えているのは、試合を見返した際に自分の存在感が全くなかったという事実だけだった。

 中学の時から兄の応援も兼ねて、毎年のように現地で観てきた選手権。初めての大舞台は苦い思い出となった。ただ、あの経験があったからこそ、今の自分がある。

「1年生で全国の優勝レベルをピッチで感じたのは自分だけ。3年生の想いも背負って戦う責任感も含めて、色々感じるところがありました」

 2年生に進級してからも思うような結果は出せなかったかもしれない。しかし、めげずに地道に積み上げてきた。課題だったフィジカル面も食事や筋力強化によって改善され、2年生の間に体重は4キロ増加。筋肉量も高まり、当たり負けする回数も目に見えて減った。そうした努力が身を結んだのは、春の中国新人大会だ。下級生の頃に務めていたFWやサイドハーフではなく、ボランチとしてプレーすると、創造性豊かなパスで攻撃を牽引。兄から教わった守備でも成長の跡を示して自信を深めた。

 夏のインターハイでは決勝に進出し、準決勝まで圧倒的な強さで勝ち上がってきた青森山田と対戦。自ら先制点を奪って追い詰めるなど、延長戦で敗れたとはいえ、1年生の時に味わったような圧倒的な差はなかった。

「負けた悔しさはあります。ただ、日本一のレベルを肌で体感できて良かったし、通用した部分もあった」と、積み重ねてきた自信が確信に変わった。10月にはファジアーノ岡山入りも内定。兄の背中を追ってきたプレーメイカーは一回りも二回りもたくましくなって、最後の大会に挑む。未だ味わっていない選手権での勝利はもちろん、2度敗れている青森山田へのリベンジを果たせるか。自らの成長を示すためにも、最後の冬は負けられない。

取材・文=松尾祐希



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