アーセナル就任後200試合目を迎えたアルテタ監督 [写真]=Getty Images
アーセナルのミケル・アルテタ監督がチームを率いて200試合に到達した。
現地時間25日、プレミアリーグ第13節のブレントフォード戦はアーセナルにとって特別なゲームだった。同日の早い時間帯に行われたマンチェスター・シティvsリヴァプールの大一番が1-1のドロー決着に終わり、今シーズン初めて首位に浮上するチャンスとなったのだ。
無論、それだけではない。ブレントフォードからローン加入中のスペイン代表GKダビド・ラヤがリーグ規約によりローン元との試合には出られず、背番号「1」を背負うイングランド代表GKアーロン・ラムズデールが久々にゴールマウスを守ることになった。そして何よりこの一戦は、わずか数年でアーセナルを再建した41歳のアルテタ監督にとって、節目となる公式戦200試合目だったのである。
そんな記念すべきゲームにおいて、アーセナルは途中出場のドイツ代表FWカイ・ハフェルツが89分にヘディングでネットを揺らし、1-0の勝利でリーグ首位に躍り出たのである。およそ3カ月ぶりのリーグ戦出場となったGKラムズデールは、ゴール前でのパス交換で危うく失点しかけたが、それでも最後はクリーンシートを達成しチームメイトから祝福を受けた。アーセナル指揮官としての200試合目を終えたアルテタ監督は、次のようなコメントを残している。
「ああいう光景を見るのが監督としての喜びなんだ。選手たちが互いを支え合い、愛情を示す。それ以上のことはない。今日は私の200試合目だったが、チームがこうやって喜び、スタッフが笑顔でいる。私は本当に幸せだ。これ以上に誇らしいことはない。そして、日頃からチームのために働き、私の仕事を楽しいものにしてくれる人たちに感謝しかない」
そんな素敵な200試合目を迎えたアルテタ政権だが、アーセナルで一時代を築いた偉大なアーセン・ヴェンゲル元監督と比較すると、その道のりはどのようなものだったのだろうか。今回は両者の就任後200試合における様々なデータを紹介しよう。
[写真]=Getty Images
■勝敗
4年前の12月にアーセナルの指揮官に就任したアルテタ監督は、公式戦200試合で115勝34分け50敗という成績を残している。一方、Jリーグでも手腕を振るったヴェンゲル監督は、1996年10月から2018年5月までの約21年7カ月の任期でクラブ歴代最多となる1235試合を戦い、707勝280分け248敗という成績を残した。
アルテタ監督が偉大なフランス人に追いつくためにはまだまだ20年近くの歳月が必要になるが、最初の200試合の成績を見れば遜色はない。アルテタ監督の「115勝34分け50敗」に対し、ヴェンゲル元監督の最初の200試合での成績は「112勝52分け36敗」。こうしてみると、勝利数はアルテタ監督の方が3つも多いのだ。しかし、敗戦数に関してはヴェンゲル元監督の方が少なく、勝ち点数に換算するとアルテタ監督の「379ポイント」に対してヴェンゲル元監督は「388ポイント」を獲得している。いずれにせよ、アルテタ監督はあのヴェンゲル元監督と肩を並べる成績を残していると言えるだろう。
■タイトル
ヴェンゲル元監督は就任4年目の2000年5月に200試合目を迎えたのだが、その頃には既に名声を手に入れていた。フランスの名将は就任2年目の1997-98シーズンにプレミアリーグとFAカップの2冠を達成。そして最終的には通算3回のリーグ制覇、FAカップに至っては歴代最多7度の優勝を経験することになる。しかし、200試合の時点でのタイトルは2つだけ。202試合目にはUEFAカップ決勝を戦うも、PK戦の末にトルコのガラタサライに優勝を譲っている。
一方のアルテタ監督は就任からわずか7カ月後の2000年8月にFAカップを制した。そして昨シーズンは最終的に優勝こそ逃したもののプレミアリーグで2位という好成績を残し、ヴェンゲル政権以来となる実に7シーズンぶりのトップ4に入った。実は、昨シーズン獲得した勝ち点「84」というのは、ヴェンゲル政権の22年間で見ても3番目の好成績となっている。
200試合時点でのタイトル数はヴェンゲル元監督がリードしているが(FAコミュニティ・シールドは含まない)、現在プレミアリーグで首位を走るアルテタ監督は今シーズン中にヴェンゲル元監督に追いつく可能性もある。ちなみにリーグ戦の順位を見ると、ヴェンゲル政権の22シーズンでアーセナルは優勝3回、2位が6回、3位が5回、4位が6回、5位が1回、6位が1回。平均順位は驚異の「2.95」位。一方、アルテタ政権の平均順位は「5.75」位となっている。
■ライバル
ヴェンゲル政権における最大のライバルは、サー・アレックス・ファーガソン元監督率いるマンチェスター・ユナイテッドだった。ジョゼ・モウリーニョがプレミアリーグに襲来するまでの8シーズンで、マンチェスター・ユナイテッドが優勝5回、アーセナルが優勝3回と完全な“二強時代”を築いていた。
一方、アルテタ政権のライバルはあまりにも強大だ。ユルゲン・クロップ監督のリヴァプールもいるし、何よりアルテタの“恩師”が率いるマンチェスター・シティが無類の強さを誇っている。ジョゼップ・グアルディオラ監督のチームは過去6年間で5度もリーグ制覇を成し遂げており、今シーズンはイングランドトップリーグ史上初となる4連覇を目指している。
■選手起用
ヴェンゲル政権での主力選手を見ると、一流の選手がずらりと名を連ねる。フランス人指揮官の元で最も試合に出場したのは同胞のMFパトリック・ヴィエラで402試合。続いて元イングランド代表FWセオ・ウォルコット(397試合)、元フランス代表FWティエリ・アンリ(377試合)、元オランダ代表FWデニス・ベルカンプ(376試合)、ウェールズ代表MFアーロン・ラムジー(329試合/現:カーディフ)となる。
得点者を見ると、1名が飛び抜けた形となっている。ヴェンゲル元監督の元で最もゴールを決めたのはクラブ歴代最多ゴールを打ち立てアンリで228ゴール。2位は100点近く離れて元オランダ代表FWロビン・ファン・ペルシー(132ゴール)。そこからウォルコット(108ゴール)、フランス代表FWオリヴィエ・ジルー(105ゴール/現:ミラン)、ベルカンプ(102ゴール)と続いている。
アルテタ政権を見ると、この200試合で最も起用された選手はイングランド代表FWブカヨ・サカで178試合だ。生え抜きのウイング(WG)は、アルテタ政権の実に「89%」の試合に出場していることになる。続いて2位がスイス代表MFグラニト・ジャカ(148試合/現:レヴァークーゼン)、3位がブラジル代表DFガブリエウ・マガリャンイス(136試合)、4位にはイングランド代表FWエディ・エンケティア(130試合)が入っている。
ゴール数を見ると、やはり1位はサカで42ゴール。続いて、最終的に仲たがいして退団することになったガボン代表FWピエール・エメリク・オーバメヤン(38ゴール/現:マルセイユ)。そして3位はエンケティア(34ゴール)、4位タイはアルテタの信頼厚いノルウェー代表MFマルティン・ウーデゴーア(29ゴール)と昨年夏に退団したフランス人FWアレクサンドル・ラカゼット(29ゴール/現:リヨン)となっている。
こうしてみると、今のアーセナルには絶対的な点取り屋が不足しているように感じるが、いずれにせよアルテタ政権の最初の「200試合」は間違いなく正しい方向に進んでいると言えるだろう。
(記事/Footmedia)
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