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2015.09.23

【2015-16シーズン序盤戦通信簿 欧州10大クラブを徹底検証】<第7回>アーセナル篇

「フットボール」と「メディア」ふたつの要素を併せ持つプロフェッショナル集団を目指し集まったグループ。


 2015-16シーズンが開幕して約1カ月が経過。チャンピオンズリーグも本戦が始まり、ヨーロッパ各国リーグの戦いも本格的にスタートしました。

『サッカーキング』では4大リーグから10チームをピックアップし、夏の補強やここまでの戦略を分析。さらに少し気が早いですが今シーズンの達成目標までを考察し、毎日1チーム、10日間にわたり連載形式で「2015-16シーズン序盤戦通信簿 欧州10大クラブを徹底検証」をお届けします。

 第7回はFAカップを連覇し、今季のコミュニティー・シールドでもチェルシーを破ってタイトルを獲得したアーセナルを特集。2003-04シーズン以来となる悲願のプレミアリーグ制覇を狙う“The Gunners”を分析します。

アーセナル

文=Footmedia

基本フォーメーション

夏の戦力補強評価

採点…3(5点満点)

 この夏、アーセナルは待望だったGKのポジションにペトル・チェフを迎え入れることに成功した。しかし、なんと補強はこれが最初で最後。欧州5大リーグでフィールドプレーヤーを1人も新規獲得しなかったのはアーセナルだけだった。

 移籍マーケットが閉まったあと、アーセン・ヴェンゲル監督は「選手の購入だけがチーム強化の方法ではない。我々の前線には十分なクオリティーがある」と説明した。GK以外は現有戦力でOK。そう判断したという意味だ。あるいは、噂されたカリム・ベンゼマやエディンソン・カバーニには本当に関心を持っていたのかもしれないが獲得できず、それならレベルを下げて補強する必要はないと判断したのだろう。9月半ばの決算発表で、クラブにはおよそ2億ポンドの手元資金があることがわかっている。決して選手を買う余裕がなかったわけではなく、意図的に“買わなかった”ことはたしかである。

 ただし、たとえボスがこれで満足していたとしても、フィールドプレーヤーの補強なしは大きな賭けに出たと見られても仕方ない。サポーターには少なからず落胆の色が見え、一部の批評家からは「ファンを欺いた」との批判も聞かれる。ほぼ横ばいの戦力でリーグタイトルを争えるのか。真価が問われるシーズンだ。

新戦力のここまでの評価

 今夏唯一の新戦力、ペトル・チェフは開幕からゴールマウスを守っている。ウェストハムに金星を献上した開幕戦では緊張からかミスを犯してしまったが、その後はさすがの存在感を示している。スコアレスドローだったリヴァプール戦では、スーパーセーブを連発して押され気味の展開の中で均衡を崩すことを許さず、敵将ブレンダン・ロジャーズから同業のダビド・デ・ヘアまで広く称賛を浴びた。元チームメートのジョン・テリーが語った「ペトルはチームにシーズン12~15ポイントをもたらす」という言葉もあながち嘘ではないと感じさせるほどの活躍を見せている。

 ピッチ上の活躍だけに留まらず、11年を過ごしたチェルシーで4度のプレミア制覇をはじめ、実に13個ものメジャータイトルを獲得してきたチェフがもたらす勝者のメンタリティーも獲得の大きな効果だ。同僚たちは早くも、ドレッシングルームでチェフの“金言”に感心させられたと次々証言しており、チームにポジティブな影響をもたらすカリスマGKの存在感は今後さらに大きくなっていきそうだ。

チームとしての注目ポイント・選手

 補強がなくとも、中盤に関して言えば選手の質と量は間違いなくプレミアリーグ最強である。優雅なメスト・エジル、神出鬼没なアーロン・ラムジー、迫力満点のアレックス・オックスレイド・チェンバレン、そしてハイスペックな万能アタッカー、アレクシス・サンチェス。彼ら、多士済々の2列目が織りなすパスワークと仕掛けは、相変わらずサポーターならずとも息をのむクオリティーを維持している。

 今シーズンの中盤を支えるキーマンは2枚のセントラルMF。昨季チーム最多のプレミア37試合に出場しているサンティ・カソルラと、チーム唯一の武闘派タイプとして昨シーズン後半戦からレギュラーに定着したフランシス・コクランである。技巧派カソルラはチームで最も計算できる選手であり、よりボールに多く触れる3列目で新境地を開拓し、自身もそこでのプレーを楽しんでいると話す。そんな彼を支えているのが、中盤の底をしっかりプロテクトしてカソルラをゲームメイクに専念させているコクランだ。平均身長173センチとリーグ最少の部類に入るコンビだが、それぞれが特別な個性を持ち、補完性も抜群。プレミアリーグ屈指のダブルボランチだ。

チームとしての懸念点

 アーセナルがつまずくとすれば、原因は前線の“火力不足”だろう。加入後、3シーズン連続で2ケタ得点をマークしているオリヴィエ・ジルーがストライカーに君臨するが、計算できるスコアラーが彼だけではどうにも心許ない。クラブ歴代得点王で現解説者のティエリ・アンリもそれを指摘する1人。ジルーの実力は認めつつ、「ストライカーがジルーだけではリーグ優勝はできない。違うタイプが必要だ」とかねてから話している。この夏、様々なFWの獲得話が浮かんでは消えていったのもそうした背景からである。

 実際、そのジルーが昨シーズン終盤からどうにも波に乗れない状態が続いており、それが攻撃の迫力不足を招いている。穴を埋めるべきストライカーの枠にはダニー・ウェルベック、セオ・ウォルコットの2人がいるが、ウェルベックはひざの手術により前半戦を棒に振ることが決まっている。ウォルコットは好調で得点こそまずまずのペースで重ねているが、故障癖や好不調の波があり、“ここ一番”での活躍歴も浅く、絶対的なエースとして期待できるかどうかは怪しいところ。シーズン20ゴールのペースでネットを揺らす点取り屋がいなければ、プレミア制覇は茨の道だ。

シーズン最終目標・予想

 豪華絢爛な中盤が健在で、新GKが守備陣全体にポジティブな影響をもたらしていることを考えると大崩れする心配はなく、指定席の「プレミア3位 or 4位」と「CLベスト16」は十分達成可能。だが、プレミアリーグやチャンピオンズリーグでタイトルが取れるかと問われれば今シーズンも疑問符を付けざるをえない。壁を打ち破ってFAカップ以上の栄冠を獲得するには、試合内容に関係なくゴールでチームを救ってくれるようなエースストライカーの台頭が必要だ。

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