2012.06.28

金崎夢生×永井謙佑「グランパスの将来を背負って」

グランパスが誇る若き“ファンタジスタ”金崎夢生と先輩によって歴代スピードキングに認定された永井謙佑。現在、グランパスの攻撃陣をけん引している両選手は、ピッチ内外で「息が合う」と語っている。両選手が考えるこれからのチームとお互いの歩む道とは。


インタビュー=西川結城


[写真]=足立雅史

 

永井と一緒にいる時の自分が結構好き(笑)

 
Jリーグ、名古屋グランパスともに今年で20周年を迎えました。小さい頃に見たJリーグの思い出はありますか。

永井 子供の頃、あまりJリーグを見る機会がなかったんですよね。初めて試合を生で見たのは中学生の頃で、博多の森球技場(現レベルファイブスタジアム)でのアビスパ福岡の試合でした。グランパスの試合は直接見たことはなかったけど、やっぱりミスター(ストイコビッチ監督)の印象は強かったですね。
金崎 僕も生で見たことはないけど、もちろん《ストイコビッチ》という存在は知っていました。実はお姉ちゃんがグランパスファンで、マスコット(グランパスくん)が大好きだったんです(笑)。それにうちは父がすごくサッカーが好きなので、家族もそれぞれ好きなチームを決めて応援してました。
 
金崎選手は大分トリニータから、永井選手は福岡大から名古屋に加入しました。加入する前の印象は?
 
永井 優勝争いをするチームでしたし、素晴らしい選手が多く在籍するという印象は持っていました。大学4年時に練習参加させてもらった時には、トゥさん(田中マルクス闘莉王)がご飯を食べに連れて行ってくれて、そこで「優勝争いをしているチームでプレーしないと、プロとしての面白みはないぞ」と言われたことを覚えてます。
金崎 僕はグランパスが熱心に誘ってくれたことが何よりうれしかった。(移籍を決めた前年の)09年にも一度声を掛けてもらっていて、2年続けて自分に興味を持ってもらえたことも大きかったですね。対戦していた頃はサイド攻撃を重視する印象が強かったけど、僕のようにドリブルで仕掛ける選手が少ないから、どんどん仕掛けていこうと思いました。加入1年目でリーグ優勝を経験できましたし、右サイドを中心にプレーして、《仕掛け》がハマったのはあったかな。
永井 僕は途中出場も多いので、そういう時は試合の流れを変えたり、負けている場面で劣勢を跳ね返すようなプレーを意識してる。昨シーズンの横浜F・マリノスとの開幕戦では自分の特長であるスピードをうまく発揮することができたし、得点は欲しかったけど、PKを取ってチームに貢献できたので、いいスタートを切れたとは思ってます。
 
昨年からグランパスで一緒にプレーをしています。お互いの印象は?

金崎 一番最初はU-18日本代表で一緒になった時だよね?
永井 うん。僕が大学1年の時。
金崎 でも、グランパスで会った時の印象は当時とは違った。もちろん僕もプロに入ってプレーが変わったけど、永井もそうだよね。でも、考え方とか「似ているところがあるな」って思った。一緒にプレーしていて面白いなって。永井はたくさん動くタイプだし、二人で相手をうまく崩せたらいいなとは常に考えてる。
 
以前の永井選手とは具体的にどこが変わっていましたか?

金崎 U-18の頃は……ただ走ってただけだもんね(笑)。
永井 (笑)
金崎 いつも「あいつ、メチャメチャ足が速いな」って見てた。
永井 あの頃はプロのサッカー選手になるつもりがなかったから、ただ走ってたんだよね(笑)。当時はほとんど考えてプレーしていなかったな。身体能力には自信があったから、そこだけを生かしてプレーしてた。夢生の言葉を聞くと、自分も進歩したんだなって思う(笑)。そういう話を夢生に言われるのは恥ずかしいけど(笑)。
金崎 でも、普段から結構言い合ってるよね。これまでも二人で取材を受けたことは何度もあるし(笑)。
 
では、永井選手から見た金崎選手は?

永井 夢生は昨年、ケガで試合に出られないことが多かった。でもリーグの終盤戦は二人で同時に投入されることが多くなったんだよね。グランパスには足元でボールを受ける選手が多いので、自分が一人で裏のスペースへ抜けても誰も周りがいなかったりするんだけど、夢生は自分のプレーに反応してくれる。やっぱりいてくれて助かった。
 
昔からお互いにプレー感覚が合うという感触はあったのですか?
金崎 そうですね。あるプレーをきっかけにそう思い始めたわけではないですけど。僕は永井を本当にリスペクトしてるんですよ。プレーはもちろんだけど、何より性格がいい(笑)。フィーリングが合うから、試合中も永井を助けてあげたいし、良さを出させてあげたいと思ってる。
永井 なんか、照れるね(笑)。
金崎 僕がプロに入って1年目に、そういう存在が欲しかったんだよね。自分の特長を生かしてくれる選手がそばにいてくれたら、精神的にも楽になる。だから永井がグランパスに来た時に、自分がそういう存在になれたらいいなって。それなのに自分がケガで思うようにピッチに立てなくて、逆に迷惑を掛けちゃったけどね。それでも練習でも試合でも、助けたり助けられたりしたいって感情が自然に芽生えるんですよ。
 
金崎選手から見た永井選手の魅力は人間的な部分が大きいですか?

金崎 確かにそこが大きいかもしれないですね。「ここが」、「あそこが」って具体的な部分じゃないけど、普段から一緒にいて楽。永井の前では《いい自分》が出せる(笑)。悪い人といたら、影響を受けて《悪い自分》が出ちゃうじゃないですか。だから(永井と)一緒にいる時の自分が結構好き。永井がマイナスイオンを出して癒してくれてる(照笑)。
永井 急に何を言うかと思ったら……。告白みたいで、聞いててもさすがに恥ずかしいだろ(笑)。
一同 (爆笑)
 
では、永井選手から金崎選手への思いをお願いします!(笑)

金崎 何も考えてないでしょ?(笑)
永井 そんなことないよ!!(笑) 確かに同じタイプではないとは思うけど、僕も夢生と一緒にいるのは居心地がいい。僕も性格的に合わなかったり、悪い人とは絡まないから(笑)。
金崎 でも、誰か一人を特別視したりするタイプじゃないでしょ?
永井 うーん。どうだろう。
金崎 僕は他人に対して考えちゃうタイプなんだよね。
永井 でもグランパスに来て、夢生の存在に助けられたことは何度もあったよ。分からないことがたくさんある中で、いろいろなことを教えてくれたし。それがプレーでもいい方向に出ているし、普段助けてもらっている分、ピッチで夢生に何かできればいいとは思ってるよ。
金崎 いやいや、こっちも助けてもらっていることはいっぱいあるから。何か持ち上げ合ってるね(笑)

独特のリズムで仕掛けるドリブル突破と決定機につながる鋭いパスが武器の金崎 [写真]=山口剛生

 

僕は性格もプレーも周りに生かされるタイプ

 
グランパスだけではなく日本代表でも息の合ったプレーを望む声は大きいと思います。

金崎 もっと実力をつけたら二人ともチャンスはあると思いますけどね。
永井 そうだよね。
金崎 もちろん上を目指してお互い頑張っていきますけど、チームも代表もその時の監督が選手を選ぶわけだから、僕たちの考えと常に一致するわけではないんですよね。二人が代表で選ばれても僕たちが思い描くサッカーとは全然違うスタイルの戦い方ならば、あまり意味がないのかもしれません。逆に30代後半とか40歳を過ぎたりしても、お互いにいいイメージを持てるサッカーをプレーできたら、それはすごく幸せなことだと思う。期待の大小は注目度によって違うけど、僕自身はそこにあまり興味はないんです。それよりも、やりたいスタイルのサッカーを続けることを大事にしたいんですよね。
永井 その考え方は前にも聞いたことがあるよ。確かにそう思う部分はある。
金崎 永井はそこまで考えていないでしょ?(笑) よくメディアの人が永井に細かい質問をしているんですけど、「永井は絶対そんなに細かいことを考えてないだろうな」って思う(笑)。
永井 そう! さすが夢生。僕は本能のままに生きてるから(笑)。でも僕たちはお互いに違うタイプでいいよね。
金崎 そうだね。違うよね。
永井 僕は性格もプレーも周りに生かされるタイプ。いいパサーがいないと、自分は絶対に生きない。だからいろいろ考えている夢生に生かされているんだと思う。自分で言うのもおかしいけど、僕ってポカーンとしてるんだよね(笑)。だからこういう考えを夢生が持ってくれていることはすごくうれしい。
金崎 永井は人に慕われる能力がある。後輩からはもちろんだけど、先輩からも可愛がられている。これは僕に限ったことじゃなくて、他の選手も永井のことを考えてくれてると思うよ。
永井 これまでもピッチ外で仲の良かった選手はいるけど、ピッチ内でもここまで感覚が合う選手はいなかった。先輩が気を使ってくれたりしたけど、同い年ではやっぱりいない。だから貴重な関係だよね。もう夢生に付いていきますよ! ここまで自分のことを考えてくれる人は今までいなかったから(笑)。

国内トップレベルのスピードとゴール嗅覚を持つ永井 [写真]=山口剛生

 

グランパスの将来は僕たちに懸かっている

 
話をグランパスのことへ移します。選手層が厚いこともあり、二人そろって先発出場する機会が多くないと思います。これをどう捉えていますか?
 
金崎 いつも「二人で試合に出たいね」とは話していますよ。そう思える選手は本当に少ないと思いますし。
永井 夢生と一緒にプレーする時間が長ければ長いほど、チームの力にもなれるという自信はあります。
 
開幕当初は一緒にプレーする時間がありましたよね。

永井 開幕からしばらくは一緒にプレーできたけど、どちらかが先発という場合が増えてきてしまいましたからね。
金崎 でも、やっぱり一緒に出ている時は得点につながるシーンがあったよね。思うように結果が出ない試合もあったけど、永井と同時にプレーしていた時は面白い攻撃ができていたんじゃないかな。これからもそういうプレーを増やしていく自信はありますよ。
永井 確かに序盤戦では二人で崩して得点できたり、前からボールを追って、いい形で奪って攻撃につなげられることもあった。夢生と一緒に出ることはチームにとっても間違いなくプラスになると思うので、それを継続していければチームの武器にもなっていくと思います。
 
試合中、二人が常にお互いの位置を探しているのは見ていても分かります。

永井 ボールを持ったら、ます夢生の位置を確認してますからね。パスを出せそうなら出します。
金崎 僕も永井のポジションを常に確認してる。
永井 これまでもコンビプレーで相手を崩せたシーンは何回もあったし、ゴール前まで迫ることは絶対にできる。
金崎 それは僕も感じる。今は選手層が厚いから、試合終盤に僕と永井が交代することもある。同じようなポジションだから仕方がないし、逆に交代することで永井の速さを生かすこともできる。だから永井と代わることはイヤじゃないんだよね。
永井 僕も夢生が試合に出て、自分が出られなくても何も思わないですね。
金崎 でも、僕の母親は「永井君と交代して悔しくないの!?」って言ってくるんだよね(笑)。
永井 夢生はなんて答えるの?
金崎 「永井ならいいよ」って(笑)。僕がベンチに座っていても永井が出ていれば素直に「頑張れ」って思うし、逆に自分が試合に出ていてベンチに永井がいるなら、一緒にプレーしたいから「早く出てこい!」って思う。そう思える選手は貴重だよ。
永井 他の選手ならライバルって考えるのかもしれないけど、僕も夢生はライバル視はしていないから同じ感覚。
金崎 確かにライバルなら「あいつが試合に出ていて悔しい」って思うし、自分も以前はそう考える傾向にあったけど、永井のことはそう思わない。一緒にプレーしたいと思う選手が近くにいて、なおかつ内容と結果を常に出せればいいなって思う。
永井 自分が頑張ってベストを尽くしていけば、一緒にプレーする時間も増えて
いくと僕も思ってる。
 
ここからのグランパスには、二人の力は必要不可欠になりそうですね。

永井 もちろん僕たちも自分たちのプレーでチームを勝たせたいですよ。
金崎 永井と一緒にピッチに立って二人が絡んだ得点で勝てれば、うれしさ倍増だからね。
永井 それにグランパスはベテラン選手が多いけど、若い力がもっと前面に出ないといけないなとも思う。
金崎 うん。永井の言うとおり。僕たちがグランパスを支えるようなプレーをしなければダメだという強い意識はあるよね。自分で言うのも変ですけど、永井と自分にグランパスの近い将来が懸かっていると思う。二人でチームを盛り上げられるように頑張っていきます。
永井 そのためにも僕はとにかく走りまくりますよ(笑)。そして結果で気持ちを示します!!


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