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ブラジルW杯ぶらぶら日記 最終回「地元紙が紹介!? 本田と香川のダブルボランチ」

2014.06.15

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 開幕戦を終えた翌朝の新聞の一面はどこも当然、ネイマール、ネイマール、オスカル、ネイマールで、時々、日本人だった。「ワールドカップ コッパとネイマールと時々、雄一」ってな感じである。
 
 例えば「daitro de S.Paulo」紙の一面の見出しは「Valeu,Neymar valeu,Oscar (Valeu,Yuichi)」だった。Valeuは「価値」という単語なのだが名詞の前だと「〜のおかげ」となる。特集記事の一面にも歓喜の咆哮をあげるネイマールの写真に「Valeu,japones!」のコピーがついていた。さらにそこをめくると「Arigato」とも。そんなに苦しかったのか、ブラジル。
 
「Agora」紙も同じように「Neymar,Oscar e japones garantem vitoria do Brasil」(ネイマールとオスカルと日本人がブラジルを勝利に導いた」である。あの笛はけっこうトピックになっているようだ。

 しかし、ブラジルの新聞にサッカー関係で、これほどまでに大きく取り上げられた日本人はいないかもしれない。ネタがネタだけに手放しで喜べないけれど、ひとつの歴史である。

 その西村さんは記者に「決勝も(審判団に)選ばれるかもしれませんね」と水を向けられて「ないです。日本が決勝に行くから」と即答したという報道があったが、それを現実として15日の朝刊には「Samurai」とかの見出しと本田や香川の笑顔が載らないもんか。まあ、イタリアとイングランドにもってかれる気もするが。
 
 そんな日本の期待度と知名度の現状といえば、うーん、である。

 開幕を控えた最後の日曜日、サンパウロの新聞社「FOLHA DE S.PAULO」誌は「GUIA DA COPA」(W杯ガイド)という本誌と別冊子を編集、配布した。

 全日程、全12スタジアム、全32チームと基本フォーメーションと予想メンバー、3人の注目選手がそれぞれ紹介されている。

 我らがニッポンの注目選手は本田、内田、川島の3人で、本田には「ARTILHEIRO」という見出しがついている。英語でいうGUNNERで砲手、狙撃手、フィニッシャーとでも訳すべきなのか。「ミランのミッドフィルダーで南ア大会でチーム4ゴール中2ゴールを決めてチーム得点王に」という説明付きだ。

 内田は「RECUPERADO」。直訳すると「回復」だが意訳して「病み上がり」といったニュアンスか。わざとかは判然としないがちょっと熱に浮かされているような写真と共に「シャルケのサイドバックで太ももを負傷しているが、ザッケローは回復すると見込んでいる」。「賭け」とも訳せる言葉もあった。

 川島がよく分からんのだが「ARQUEIRO」、射手というかアーチャーだ。眼光鋭いからだろうか。説明は「南ア大会でもゴールキーパーだった」。

 ちなみにドログバは「A ESTRELA」(スーパースター)だった。

 そしてここからが白眉なのだが、日本のシステムは4-2-3-1で紹介されている。メンバーは川島をGKに、「4」の右から内田、吉田、今野、長友となっている。そして「2」が斬新で、本田と香川のダブルボランチだ。「3」が右から長谷部、遠藤、左に清武で、「1」は岡崎。トゥルシエもびっくりのなかなかの采配だ。

 ブラジル人も、とにかく日本の選手を知らない。日本は好きで、がんばってほしいけど、知らない。そんな感じだ。

 試合後にはブラジル人が「オカザキ」「ヨシダ」と声をかけてくれるようになって、大会後には「Vaga lume(螢)をフラメンゴにくれ」とか「Azuis(青)はブラジルで育てよう」なーんて具合に、どんどん日本の選手が欧州に続いて今度は南米に輸出されないかな、とか考えてしまう。夢みたっていいじゃない、ワールドカップだもの。

 さあ、夢と情熱に溢れた日本の挑戦をサポートし、あるいは酒の肴にして、休日への言い訳にして、残りの60試合、応援しましょう。

 開幕前のぶらぶら日記はこれにて終了です。ひょっとしてもうちょっと、やるかもしれませんが、みなさまAte logo!

【過去記事】
ブラジルW杯ぶらぶら日記 第1回「本当に間に合う!? 楽観的で陽気な王国のアイドリング」
ブラジルW杯ぶらぶら日記 第2回「日本の選手、知ってる?」
ブラジルW杯ぶらぶら日記 第3回「開幕24時間前、工事はまだ全然終わってない」

著者/竹田聡一郎(たけだ そういちろう)
1979年神奈川県生まれ。同い年の小野伸二にヒールで股抜きされたことを妙な自慢としながら、フリーランスのスポーツライターとして活動。戦術やシステムを度外視した「アンチフットボールジャーナリズム宣言」をして以来、執筆依頼が激減したのが近年の悩み。著書に蹴球麦酒偏愛清貧紀行『BBB』(ビーサン!! 15万円ぽっちワールドフットボール観戦旅/講談社文庫)と、スルガ銀行のサッカーweb「I Dream」で連載中のコラムを書籍化した『日々是蹴球』(講談社)がある。
twitter:@takedasoichiro

 

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