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【関東第一】「今まで頑張った人間の成果」の集大成 確かな歴史の積み重ねを武器に初の16強越え狙う<第100回高校選手権>

2021.12.26

関東第一の小野貴裕監督 [写真]=土屋雅史

 とにかく、尖っていた。縦横無尽にドリブルで仕掛ける。ペナルティエリアの中でも細かいパスを繋ぎ、崩し切るまで相手を翻弄する。テクニックと創造性を最大限に活かした“超攻撃的”集団。それが初めて選手権の東京都予選で決勝まで進んだ、10年前の関東第一だった。

 だが、なかなか全国の切符は掴めない。前述した初の決勝はPK戦の末に敗退。翌年もやはりファイナルまで辿り着いたものの、後半終了間際にセットプレーから失点を許し、涙を呑む。良いサッカーはしているが、勝負弱い。率直に言って、それが当時のチームの印象だった。

 躍進したのは2015年。兵庫で開催されたインターハイで、関東第一は全国ベスト4まで駆け上がる。準々決勝で広島皆実に勝利した後、就任6年目の小野貴裕監督は、取材陣の前で声を詰まらせていた。「今まで苦しんできた先輩がいて、脈々と流れてきたウチのチームの歴史があって、そういう積み重ねてきた想いをここで出せたというのが凄く良かったなと思います…」

 あと一歩で悔しい想いを突き付けられながら卒業していった教え子たちの姿を思い出し、感極まった指揮官の涙が記憶に残っている。

 それから、6年の月日が経った。初出場となった2016年から昨年までの5年間で、3度も冬の全国を経験してきた関東第一。もう彼らに『自由奔放さ』や『勝負弱さ』というイメージを持つ人は、ほとんどいなくなってきたと言ってもいいだろう。

主将の池田健人 [写真]=土屋雅史

 2021年も決して楽なシーズンを過ごしてきたわけではない。「インターハイで負けて、そこからT1リーグで2連敗した時は、本当にどうすればいいかわからなくなって、その時期が一番苦しかったですね」と話すのはキャプテンのDF池田健人(3年)。秋口までは順風満帆とは言い難い時期を強いられてきた。

それでも、昨年度の選手権を経験している池田やMF肥田野蓮治(3年)、MF藤井日向(3年)らを中心に、予選では力強く一戦一戦を勝ち上がり、決勝でも大成を相手に2-0と快勝を収め、2年連続での全国出場を勝ち獲った。

 優勝を決めた試合後。オンラインでの会見に現れた小野監督は、「ウチのチームに来たら全国大会に行くということは、前みたいに漠然としたものではなくて、どういうふうに頑張るとどれくらいの距離にいるのかということを、景色として理解でき始めた結果が、積み重ねてきたものとして、我々を支えてくれたんじゃないかなと思っているので、今日に関して言うと、『今日頑張った子供たち』と『今まで頑張った人間』の成果かなと思います」と言葉を紡いだが、最後は6年前のあの日と同じく、少し声を詰まらせていたように感じられた。

選手権予選2回戦でゴールを挙げた肥田野蓮治 [写真]=土屋雅史

 就任11年で4度目の選手権出場。傍から見れば、素晴らしい成績を残してきたことは間違いない。ただ、小野監督が確かな結果を手にした時、真っ先に思い浮かべるのは、トレーニングから必死に努力を重ねながら、晴れ舞台に辿り着けなかった教え子たちの涙であり、そんな彼らが今のチームに与えてくれている影響の大きさだ。

 それはすなわち「今まで頑張った人間の成果」。それぞれの時期で、さまざまな個性がぶつかり合った点と点を、確かな線で結び続けてきた関東第一は、『今まで頑張った』先輩たちの想いも、願いも背負い、初の選手権ベスト16進出へ堂々と挑む。

取材・文=土屋雅史



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