アジア杯ではグループ2試合にフル出場した板倉滉 [写真]=2024 Asian Football Confederation (AFC)
ドーハ日本人学校の子供たちの激励を受け、彼らを含めた多くの人々に花道を作ってもらい、27日に27歳の誕生日を迎えた板倉滉。トレーニング後にはボルシアMGカラーの緑と白に彩られたケーキをプレゼントされ、菅原由勢と久保建英にクリームを顔中に塗られて、盛大に祝われるシーンもあった。
「サッカー選手としては、もう若くないなという感じ。自分より年下がこれだけ出てきているので若くないなと感じました。『年取ったな』という言い方はおかしいですけど、ちょっとベテランの域に足を一歩、踏み込んでいると言うか。特に今は若い世代が多いから、(チームを年齢順に)半分に分けたら、全然上になると思うので、より一層責任感を持ってやっていかないといけない」と改めて重責を噛みしめていた。
2019年のコパ・アメリカでA代表初キャップを飾ってから間もなく5年。板倉はここまで24試合に出場し、FIFAワールドカップカタール2022も主軸DFとして最終ラインを支えてきた。自分が「上の方」だと自覚するのは当然のこと。自らがより統率力を示して、今大会の日本を5度目のアジア王者へと導かなければならない。
ベトナム、イラク初戦、第2戦に先発フル出場した板倉だが、正直言って、ワールドカップほどのハイパフォーマンスは出せていない。あの時も3カ月の長期離脱を強いられながら、ぶっつけ本番で大舞台に挑み、すさまじい安定感を示したが、今回は少し実戦感覚が遠ざかっていたのかもしれない。加えてインドネシア戦でベンチ外になった通り、体調不良も重なったのだろう。
「森保(一監督)さんともしっかり話をした上での決定だったので、そこは切り替えていましたし、体調はもう大丈夫。ここから次の試合(31日のバーレーン戦)に向けて仕上げていくだけです」と本人も士気を高めている。
バーレーンは4-2-3-1か4-3-3がベース。最前線に194センチの長身FWアブドゥラ・ユスフがいる。チェコのFKムラダー・ボレスラフでプレーする数少ない海外組だ。イラクの大型FWアイマン・フサインのような完全なるターゲットマンではなく、高さとスピードを併せ持つ絶対的な点取り屋だ。裏抜けも得意としていて、グループ3位から1位に浮上したヨルダン戦を見ても、決勝弾のシーンは相手の背後を取って決めた形。それ以外にも裏を取るシーンが散見された。
もちろん日本がイラク相手に空中戦で苦しんだことも分かっているだろうから、今度はハイボール作戦で来るかもしれない。敵将のフアン・アントニオ・ピッツィ監督も2019年のアジア大会でサウジアラビアを率いて日本に苦杯を喫した経験から、秘策を講じてくるに違いない。
板倉も「相当に力のあるチームだと思うし、アジアカップの怖さというのがある」と警戒。「(長身FWに対しては)まず1対1で負けないところはいつも通りやらないと。その中で常に最悪を想定したポジション取りを、特にディフェンスラインが気を遣ってやらないといけない」とも発言。再びCBコンビを組むと想定される冨安健洋とともに息を合わせていくことが肝要だ。
同時にグループステージ3試合で3失点を喫しているリスタート対策も徹底する必要がある。ベトナム戦の2失点はポジション取りと競り方の問題、インドネシア戦の後半アディショナルタイムの失点はロングスローからだったが、ピッツィ監督もそれをヒントに何かしらデザインしてくることも考えられる。
「グループステージでセットプレーからこれだけ失点をしたというのは、ポジティブに捉えていい。セットプレーになった時の集中力やみんなの気持ちの入り方、声のかけ方が試合の中でも変わっていくと感じていたので。もちろん、ポジショニングの修正はしつつ、あとは個人個人が跳ね返すところとか、負けないポジショニングの取り合いとか、そういうところの勝負になってくるかなと思います」
板倉は失敗を教訓に決勝トーナメントにつなげていく構えだ。それを本当に遂行してこそ、真の守備陣のリーダーになれる。ユスフ封じとクリーンシートを完璧にこなし、ベスト8以降の戦いへチームと彼自身の状態をトップに引き上げることができれば理想的。そうなるように、次戦は日本の底力をしっかりと示し、快勝してほしい。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子