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ボランチ転向2カ月 香川らとの対峙で知念慶が直面した課題とは

2024.03.04

2024シーズンはボランチとして新境地を開拓中の知念 [写真]=J.LEAGUE

 2月23日の2024明治安田J1リーグ開幕節の名古屋グランパス戦(○3-0)に続き、3月2日のホーム開幕戦となったセレッソ大阪戦を1-1で引き分けに持ち込み、2試合終了時点で首位に立った鹿島アントラーズ。ランコ・ポポヴィッチ監督率いる新体制でスタートした今季は、宮崎キャンプ中にキャプテンの柴崎岳とエースの鈴木優磨が負傷。契約目前だったヨシプ・チャルシッチの加入が見送りとなるなど、開幕前から不安要素が少なくなかったが、ここまでは鹿島らしいタフで粘り強い戦いを披露。確実にポイントを稼いでいる。

 そんなチームに新たなエッセンスをもたらしているのが知念慶だ。2017年に川崎フロンターレ入りした当時からFWとして実績を積み上げてきた男は、昨季加わった鹿島でも、もちろん点取屋として期待されていた。今季始動時も同じ位置づけだったが、徳島ヴォルティスとの練習試合で柴崎が負傷した際、突如としてボランチに抜擢され、指揮官から「ブラボー」とゴーサインを出されたという。


「正直、複雑でしたけど、嬉しかった。『意外にやれているんだ』と。そこからずっとボランチでやっています」と、開幕前の水戸ホーリーホックとのプレシーズンマッチの際、苦笑していた知念。だが、さすがは川崎Fで中村憲剛や大島僚太、守田英正、田中碧らと共闘してきた選手だけに、中盤でボールを受け、縦につけたり、ワイドに展開したりする技術も戦術眼も高い。

「彼らのプレーは真似できるものじゃない。多少は参考にはさせてもらっていますけど、自分らしくできたらなと。前に急ぎ過ぎないとか、時間を作るとか、簡単にはたいてリズムを作るとか、ゲームの流れを意識しながら練習からやっているので、そこはゲームでも出せるようにしたいです」と、本人は開幕に向けて着々と準備を進めていた。

 その成果が名古屋戦では如実に出た。序盤こそ相手にボールを握られて苦しんだが、早い段階で先制点を奪ってからは佐野海舟とのコンビも安定。ボール奪取やパス出しも改善され、2人の動きが重ならないような連携面の工夫も目についた。佐野も「距離感はすごく意識していましたし、どちらも前に行くことが絶対にないように意識しました。知念くんはどっしりと構えてくれるので、自分ももっと前に出ていく守備ができる。バランスは悪くない」と前向きな感触を得たようだった。

 確かな自信を得て、次なるC大阪に挑んだ。しかし、今回の相手は名古屋をはるかに上回る連動性やスピーディーな展開を押し出してきた。アンカーの田中駿汰とインサイドハーフの香川真司、奥埜博亮による中盤のトライアングルに加え、毎熊晟矢、登里亨平の両サイドバックがボランチの位置に入ってビルドアップに参加してきた。華麗なパス回しはかつての川崎Fを彷彿させるものがあった。

 知念はそれを敵として受けた時、迅速な対応ができなかったという。確かに前半の鹿島は対応が後手に回り、シュートは0。圧倒されたという印象を拭えなかった。

「周りに人が多くて出づらい状態で、食いついたら後ろを使われるという嫌な状況だったので、そういう時は後ろから声をかけて前の選手を高い位置に出していかないといけない。そこは僕の経験不足かなと感じました」と、背番号13は課題を口にしていた。ボランチ経験1カ月半の選手にとっては、ショッキングな出来事だったかもしれないが、そのレベルに到達しないとJ1で戦い抜くことは難しい。それを再認識したのではないだろうか。

 それでも後半に入って、鈴木優磨がトップ下に入り、佐野が最終ラインに下がってビルドアップに参加し始めてからは、鹿島が押し込むようになった。この時点で1点を奪われてはいたが、鹿島の猛攻は凄まじかった。「ラスト15分は相手の圧力を感じた」と百戦錬磨の香川も語っていたが、知念も要所で本来のFWとしての本能が前面に出たのだろう。78分には自ら左CKを蹴り、こぼれ球を拾ってペナルティエリア右側まで持ち込んで強引にシュートを打ちに行く場面も見せるほどだった。

「やっぱり0-1で負けていたし、点を取りたい想いが強かったので、セットプレーでチャンスを作れていたので。勢いでゴール前に入っていった感じです。やっぱりFW? そうなのかな」と、本人も苦笑いしていたが、そういうストロングを出せるところもポポヴィッチ監督にとっては心強いところだろう。

 前への圧力が奏功し、鹿島は植田直通の一撃でドロー。知念としても安堵感を覚える結末となった。

「個人としてはもっともっとボランチとしてのスキルを身につけないといけないと思いました。(柴崎)キャプテンだったり、海舟、(樋口)雄太から学ばせてもらうことも必要になってくる。チームとしては今回の前半みたいな展開になった時に、逆に相手を押し込んで点を取るかとか。後半みたいに勢いを出して点を取るといったことをやっていかないし、自分たちがやりたいことを前半から出していけるように」と知念は先を見据えていた。

 そういうマインドになるのも、近い将来、卓越した戦術眼のある柴崎が戻ってくるという危機感があるからだろう。佐野も指揮官のFC町田ゼルビア時代からの教え子で、知念は彼らを超える強みを出さないと弾き出されてしまいかねない。

 そうならないためにも、C大阪戦で直面した課題と真摯に向き合い、いち早く修正していくことが肝要だ。間もなく29歳になる“新人ボランチ”の今後が大いに気になる。

取材・文=元川悦子

By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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