2018.12.03

記録が途絶えても変わらなかった存在感…鉄人・中澤佑二はどこへ行くのか?

[写真]=Jリーグ
日本代表から海外まで幅広くフォローするフリーライター。

「ボンバーが入ってきて、フィールドの中で指示を出して、周りを動かしてくれた。そういう選手がもっと増えないとタイトルは見えてこない」と守護神の飯倉大樹は試合後にそう話した。中澤佑二のことだ。セレッソ大阪に1-2とリードされた82分、横浜F・マリノスの看板であり大黒柱の背番号22が、約3カ月半ぶりにJ1の舞台に戻ってきた。

 1点リードを許し、残り10分弱という場面にもかかわらず、アンジェ・ポステコグルー監督は中澤の投入を選択した。攻撃の手札を切って強引に1点を獲りに行くという采配もあっただろう。それでも、ベテランDFをピッチに送り出したのは、「チームをしっかりと統率し、最終ラインから落ち着きをもたらしてほしい」という思惑があったからこそ。

 実際、中澤が入ってからの横浜FMはチーム全体が落ち着きを取り戻した。それまでは、攻守で不安定なプレーが続いていたが、バランスも改善。安定した守備から攻撃にも躍動感が生まれ、相手ゴールに迫った。しかし、試合は1-2のままタイムアップ。“中澤効果”を勝利につなげることは叶わなかった。それでも……、

「最後にこうやって10分でしたけど、監督が試合に出してくれて、また改めて『試合っていいな』と思いました。サポーターの前でマリノスのユニフォームを着てプレーができる喜びや幸せを、たった10分でしたけど、感じることができたのはよかった。負けてしまったのは残念だし、悔しいし、最後に純のFKが決まってればなと思ったけど、久しぶりのサッカーは楽しかったです」

 わずか10分程度の出場にとどまり、チームは敗れたが、中澤自身は清々しい表情をのぞかせた。

Jリーグ通算593試合に出場した男の来季は?

[写真]=Jリーグ

 2002年の横浜FM移籍から17年、抜群の身体能力と強心臓を武器にトップレベルで戦い続け、今年2月には40歳となった。チームが転機を迎えたのは、まさにそのタイミングだった。昨年までオーストラリア代表を率いていたポステコグルー監督が就任した。

「今年は新しいことにチャレンジしてきた。新しい選手が入って、新しい監督が来て、全てが新しいことだらけのシーズンだったかなと思います。それに対して僕自身も一生懸命順応しようとしてきたし、自分なりに進化しようとしてきた」(中澤)

 難易度の高いテーマに挑んできた。新監督は守備ラインを目まぐるしくアップダウンさせ、超攻撃的に戦う新スタイルを導入したのだ。中澤は持てるエネルギーを注ぎ込んで、これまでとは異なるスタイルを体得しようとした。新たなチームスタイルをピッチで体現することは、当然容易ではないが、内田篤人(鹿島アントラーズ)が「今のマリノスのラインの上げ下げがどれだけきつくて辛いか分かる? あれって一番、足に来るから。それを中澤先輩は40歳でやってるからね。本当にすごいよ」と賛辞を送るほどのパフォーマンスを中澤は見せていた。だが、さすがの鉄人も体が悲鳴を上げた。シーズン途中にはコンディションを維持できず、8月19日の鹿島戦で6年ぶりのベンチ外に。2013年7月6日(大分トリニータ戦)から続いた、連続フル出場記録も178試合でストップした。

「別に記録のためにやってたわけじゃなくて、センターバックがいないとか、監督が『大丈夫?』っていうから『大丈夫』って言ったりとか、特に記録とかではなかったですね」

 記録に対してはそう話したが、満身創痍の身体に鞭打ってプレーしていたのだろう。DFのフィジカル的負担は傍目から見る以上に重いという。かつて中澤とコンビを組んだ田中マルクス闘莉王も「ヤット(遠藤保仁)のようにジョギングでサッカーできる人だったらいいけど、自分はバンバン競らなきゃいけないし、バンバン体当てなきゃいけないから本当に大変です」と話してくれたことがある。そんな状況に耐え続け、ピッチに立ち続けた中澤のフィジカルとメンタルは明らかに常人離れしていると言えるだろう。

 その後はピッチから離れたが、リハビリに多くの時間を費やし、今季のラストマッチでようやく出番がつかんだ。そこで自身の役割を果たし、チームメートにも認められる価値を示したのだから、流石は中澤である。こうして2018年はリーグ戦22試合出場(1得点)という結果で終わった。

 そして、気になるのは去就の行方だ。最終節を終え、本人は「俺が決められる問題じゃないですよ。マリノスがどう考えてるかマリノスに聞いてください」とだけ語り、現役続行とも引退とも語らなかった。一方で「チームの結果が出なかったこともあるし、自分自身も満足いくプレーができなくて、ネガティブなことが重なった」との発言も。不完全燃焼感を漂わせる言葉を聞くと、体が動く限り、とことんプレーするという選択をしてほしい。もちろんクラブがそれを許せばという含みを持つことになるのだが……。残留、移籍、引退、Jリーグ通算593試合出場という偉大な記録を持つDFはどのような道を選択するのか? 今後の動向を見守っていきたい。

文=元川悦子

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