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「1日1日が勝負」と覚悟して挑む清水6年目。ベテランに厳しい環境の中、再開を待つ 鄭大世(清水エスパルス/FW)

2020.05.03

コンディション維持に努めつつ、再開後の活躍を誓う鄭大世 [写真]=©J.League

 5月6日までの緊急事態宣言が1カ月程度延長される見通しとなり、Jリーグクラブも活動再開を先送りせざるを得なくなっている。4月14日までトレーニングを継続していた清水エスパルスも全体練習休止して早3週間が経過した。

 4月25日にオンライン取材に応じた金子翔太は「近所の広場で人のいない時間帯に走ったり、家の中で器具などを使って筋トレや体幹をやってますけど、やっぱり不十分。コンディションが維持できているかどうかは正直なところ分からないですね。『今、息が上がっている』とか『体が動いている』とかは実戦形式のトレーニングじゃないと分からない。何気なく送っていた生活が失われてみて、サッカーができる日常がどれだけ幸せだったかを痛感しています」と神妙な面持ちで語っていたが、それはチーム全員が感じていることに違いない。

 鄭大世のような年長者にしてみれば、先の見えない現状に焦燥感を覚えることも少なくないはずだ。「俺らは(キャリアの)最後が見えてるからね。1日1日がメッチャ大事だし、若手と違うモチベーションがあるから」と3月時点で彼は話していたが、ベテランにとっては本当に毎日がサッカー人生を賭けた勝負。通常シーズンでも結果が出なければ「引退」の二文字が脳裏をよぎるだろうし、長期ビジョンで未来を思い描くことはできない。そこに追い打ちをかけるように新型コロナウイルス感染症が拡大し、実戦の場も奪われた。自分のパフォーマンスを上げようにも上げられない……。そんなジレンマは大きい。

 今季清水では「1トップの重要戦力の1人」と位置付けられていたからこそ、本人の悔しさは募る。2月16日のYBCルヴァンカップ・川崎フロンターレ戦、23日のJ1開幕・FC東京戦ではいずれも後半途中から登場。3月28日のジュビロ磐田との練習試合でも2本目の出場ながらハットトリックを達成し、ピーター・クラモフスキー新監督の信頼を高めていた。2ケタゴールをマークした2017年以来の結果を残せる自信と手ごたえを本人もつかみつつあったという。

「2015年に清水に来てから6年目。いろんな監督の下でやりましたけど、小林(伸二)さんの後はダメでした。(ヤン・)ヨンソン監督の時はトレーニングが北欧式で『どれだけ休むか』って感じだったから、僕には合わなかった。ドイツ時代のボーフム2年目もそういう考え方の監督で、ボールを使った練習だけでフィジカルを全然やらないから調子も上がらなかったですね。
 でも、ピーター監督のトレーニングは物凄く密度が濃いんです。中断期間に入ってからはほぼ2部練で負荷の高い筋トレも連日あった。1部練の時はボール回しからフィジカルみたいな内容だから、そこで乳酸が出るし、メッチャしんどい。正直、寝る時に『朝が来るのが怖い』と思うくらいキツイ(苦笑)。それでも練習試合をやっても全然走れるし、スプリントのところで足も上がるし、体も軽い。これは一番大きい。今の監督のサッカーは戦術強度が高い分、走れないと試合に出られない。そういう意味でもフィジカル的なベースは重要だと思ってます」

 このように目に見える進化を実感していただけに、空白期間が長くなるのは辛い。全体練習ができない今、この状態を維持するのも極めて難しい。それでも、再開後にキレのあるパフォーマンスを出せるところまで引き上げるのが、真のプロフェッショナルだ。長年サッカー選手をやってきた36歳の男はその重要性もノウハウもよく理解しているはず。今こそ、百戦錬磨の経験と実績を生かすしかない。

 そのうえで、自身の地位を確立することが求められてくる。「本気でタイトルを目指す」とクラモフスキー監督が強調する今季の清水には、タイの至宝・ティーラシン・デーンダーを筆頭に、ジュニオール・ドゥトラカルリーニョス・ジュニオヘナト・アウグストエウシーニョなど優れた外国人選手がズラリと並んでいる。その多くが2~3月はケガで別メニューを余儀なくされていたが、これだけ長い中断期間があれば、再開時にはフルメンバーで戦える状態に戻る。鄭大世を取り巻く競争も激化する見通しだが、本人はその環境を前向きに捉えている。

「エウソン(エウシーニョ)とかヘナトとかが入ってきたら物凄くいいサッカーができると思います。ウチの外国人選手のクオリティはJ1の上位チームに引けを取らないから。ただ、純粋な1トップに関しては、僕とムイ(ティーラシン)しかいない。再開後は連戦になりますし、チャンスは増えてくるのかなと考えています。どういう競争があっても、結局は自分との戦い。途中交代でもいいから、とにかく試合に出たい。早く公式戦の緊張感を味わいたいですね」

 鄭大世は切なる思いを吐露したが、それは全ての選手に共通するものだ。クラモフスキー監督も「1日の中でサッカーを考えない時はない。どうしたらこのチームをチャンピオンにできるかをつねに考えています。自分たちがどうしたらもっと成長できるか、全てのサッカーの部分でよくなれるか、どういうチャレンジができるのか。それが成功の秘訣だと思っています」と2日のオンライン会見で飽くなき向上心をにじませた。

 彼らの凄まじい情熱をピッチで爆発させられる日はいつ戻るのか。今はみんなでステイホームを心掛け、事態終息を祈るしかない。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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