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松永成立、川口能活の系譜を継ぐ攻撃的守護神。中断期間を生かしてJ1連覇の原動力に! 朴一圭(横浜F・マリノス/GK)

2020.03.16

延期期間中の心境を語った朴一圭 [写真]=元川悦子

「プロは公式戦に向けて準備するものじゃないですか。それがないのは正直、モチベーションが上がり切らないところがある。『試合がないしな…』ってもどかしさが頭の片隅にあるのは仕方ないと思うんで。それでも、みんなで鼓舞してやることが大事。去年をサッカー人生のピークで終わらせたくないって危機感は自分もあるし、テル(仲川輝人)もキー坊(喜田拓也)もタカ(扇原貴宏)も持ってると思う。その気持ちをしっかり今後につなげていきたいです」

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、明治安田生命Jリーグは3月18日の再開を断念。4月3日に再延期して、準備を進めることになった。試合間隔がさらに2週間空き、2019年J1王者の横浜F・マリノスも非常に難しいチームマネージメントを強いられている。彼らは13日の取材日を最後に、報道陣も含めて完全非公開に踏み切り、集中を高めながら練習に励んでいくという。

 絶対的守護神・朴一圭もその貴重な時間を活用して、自己研鑽に励んでいく覚悟だ。目下、彼の向上心の源になっているのが、2月23日のJ1開幕・ガンバ大阪戦で倉田秋に決められた開始6分の失点シーン。矢島慎也にボールを奪われたミスは今も納得していないという。

「負け惜しみみたいに見られるかもしれないけど、全く対策されてる感じはしなかったんですよね。相手がああしてくることは分かり切ってましたし、去年も前からプレッシャーかけてくるチームは沢山あったから。そこをチームとしてしっかり打開できたから、去年は優勝をつかみ取れたけど、今年はいきなり悪いところが出てしまった。自分がさらなる飛躍を期待されているマリノス2年目の一発目にああいうことが起きて、僕自身が一番パニックになったし、いまだに理解できていないところがある。周りと連携して、助け合ってプレーすればああいうミスは間違いなく減る。再開がいつになるか分かんないけど、ホントに高い授業料だと思ってやっていくつもりです」と王者の守護神は目をギラつかせた。

 悔しさを胸に秘めつつ、スイーパー的能力を備えた攻撃的GKとしての自分を突き詰め、スタイルを確立させていくことが、今季の朴一圭の命題だ。そもそも横浜というのは、松永成立(現横浜GKコーチ)、川口能活といった「身長こそ高くないが、抜群の反応とインテリジェンスを備えたGK」が活躍していたクラブ。その系譜を継ぐ朴一圭も藤枝MYFC、FC琉球という下部リーグ所属クラブを経て名門の一員になったわけだが、「自分がここに来たのも何かの巡り合わせ」と感慨深い気持ちがあるという。

「僕は89年生まれなんで、シゲさんの全盛期のプレーはしっかりとは見たことがないんですけど、そういう『小柄だけど、守備範囲の広いGK』だったことは知っています。能活さんも単にゴールを守るだけじゃなくて、かなり攻撃的な印象が強かった。そういう偉大な選手が君臨していたこのクラブに来れたことはすごく嬉しいですね」

「去年の優勝で『朴一圭といえば、前に飛び出すし、ビルドアップもするし』とイメージしてもらえるようになったのも大きな喜びです。最近は指導者が『朴選手みたいにプレーしてみよう』と言えば、ポジションを高く取ったり、あえて蹴らずにプレーしたり、考えながら取り組んでくれる子供が多くなったと。そういう話を聞くたびに、まだまだ第一線で頑張りたいなって気持ちが高まってくる。早く試合がしたいです」

 今は公式戦を熱望している彼だが、4月3日に予定通り再開となれば、その後は凄まじい連戦を強いられる。AFCチャンピオンズリーグ(ACL)も含めれば、週2回ペースの試合が長期間続くことも考えられる。それだけに、今のうちに心身両面を最高の状態に引き上げておくことが必要不可欠だ。チームとしてもガンバ大阪戦のような失敗は許されない。それを脳裏に刻み付けて、入念な準備を行っていくという。

「ガンバ戦から2週間くらい時間が空いて、メンタル面も落ち着きましたし、何度も映像を見て解決策を自分なりに考えました。そういう時間を持てたことはありがたかった。去年のチャンピオンである僕らは壁に直面して当然だと思うんです。去年の終盤はホントにみんなすごくいいプレーをしていたし、各々が最高のパフォーマンスを出していたけど、それ以上のものを出さないと今季は苦しくなる。僕自身ももちろんですけど、ピッチに立つ11人、サブに入る7人、メンバーに入れなかった選手も全員が自分にプレッシャーをかけながら戦っていかないといけない。そういうことを言い続けたいですね」

 常に貪欲に前へ前へと突き進む朴一圭。彼のさらなる進化なしに、トリコロール軍団の成功はあり得ない。一段とスケールアップした守護神を姿を我々の目に焼き付けてくれることを期待しながら、4月を待ちたい。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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