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【星稜】“昇格見送り”を機に絆を深めた3選手が、気持ちを一つに全国の舞台に挑む<第100回高校選手権>

左からCB中村実月、GK田中勇輝、CB井上陽向大  [写真]=松尾祐希

 今から3年前。3人が同じユニホームを着て、選手権のピッチに立つとは誰も思っていなかっただろう。あの時の誘いがなければ、今の自分たちはなかった。

 7年ぶりの優勝を目指す星稜には、特別な思いで選手権のピッチに立つ選手がいる。それがセンターバックの中村実月と井上陽向大、GKの田中勇輝だ。

 彼らの付き合いはチームの中で誰よりも長い。彼らを結びつけたのはサガン鳥栖だった。中村と田中が初めて出会ったのは鳥栖Uー12時代。その後、Uー15に昇格すると井上がチームに加わった。ただ、彼らは中学時代にレギュラーとしてプレーできず、3人がそろってゲームに出た経験はほとんどない。また、プライベートでも仲は良かったものの、そこまで親交が深かったわけではなかった。

 結局、3人ともUー18への昇格が見送られたのだが、これがきっかけで3人の仲が急速に深まる。すべては中村の決断が始まりだった。小学校時代から本田圭佑に憧れていた中村は、昇格できなければ星稜への進学を心に決めていたという。それは仲間たちにも伝えていた。

 そしてある時、井上に声を掛けた。「井上は高校どこに行くん?」。決まっていないと答えた井上に対し、中村は「一緒に星稜に行こうや」と伝えた。軽いノリで誘ったらしいのだが、進学先を決めかねていた井上は星稜への進学を決意。そして、中村は同じく進路が決まっていなかった田中にも声を掛ける。本田圭佑の自伝や鳥栖に豊田陽平が所属していた関係で星稜への進学を検討していた田中は、中村の一声が後押しとなって星稜行きを決断。そうした流れで3人は星稜の練習会に参加し、正式に入学することになった。

「相当悔しかったですし、中学で思うように出られなかったぶん、高校では絶対に試合に出て鳥栖Uー18よりもいい成績を残してやろうと思っていた」(井上)

 飛躍を誓って飛び込んだ高校サッカーの世界。ただ、初めての寮生活は簡単ではなく、慣れない土地で顔見知りもいない。それでも乗り越えられたのは、鳥栖時代から苦楽をともにしてきた仲間がいたからだ。

 とくに田中は3年生になってからもサブGKに甘んじ、出場機会をつかめずにいた。一方で中村はキャプテンとなり、井上もレギュラーに定着。試合で活躍する姿を見るたびに、悔しさが込み上げてくる。それでも、田中は彼らを支え、活躍すれば我が事のように喜んできた。

 だからこそ、田中は言う。

「2人はスタメンで出ていて、本当は悔しい思いもあるし、自分も全国の舞台で同じ試合に出たいという気持ちがある。だけど、自分の実力がないのも事実。悔しいと思うより、最後にこの3人で大会に挑めることがうれしい。試合に出ても出られなくても、あの2人のことは応援したい」

 3人が同じユニホームを着て戦えるのも選手権が最後。だからこそ、特別な思いを持って大会に挑む。
 
「中学校の時に試合に出られず、つらい思いも味わってきた。一緒に苦しい思いをしてきた仲間と試合に出られるのは本当にうれしい。最後は優勝して終わりたい」(中村)

「お互い試合に出られていなかったので、最後の選手権に3人で出て結果を残したい」(井上)

「長い間、実月と陽向大と一緒にサッカーをやってきたので、最後は笑って終わりたい」(田中)

 夏のインターハイはベスト4で敗退。あと一歩のところで優勝は果たせなかった。どんな結果であっても、彼らの絆は変わらないだろう。ただ、胸を張って次のステージに進むためにも、最後の冬は負けられない。

取材・文=松尾祐希



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