
インタビュー・文=波多野友子
AFC U-23選手権カタール2016(オリンピック・アジア最終予選)でU-23日本代表の10番を背負い、大会の最優秀選手賞(MVP)に選出されたFC東京MF中島翔哉。「メッシのプレーを目標にしている」と語る小柄なアタッカーはリオ五輪でメダル獲得を目指すべく、“圧倒的な個”へ自己研鑽を重ねている。
――リオデジャネイロオリンピック・アジア最終予選での完全勝利について、要因を聞かせてください。
中島 チームの一体感、まとまりですね。勝ち上がりながら成長できたという点が大きかったと思います。運や監督の采配も含めて、すべてがうまく噛み合ったというか。短期決戦という厳しい条件の中で、課題を次のゲームに反映しやすいというメリットもありました。
――後半に得点する試合が多かったと思いますが、その理由をどう分析していますか。
中島 苦しい試合が続く中で「前半はなんとか0点で抑えて、後半に勝負をかけよう」という意識が形になっていった結果だと思います。前半を無失点で抑えれば、後半は自分たちの方が体力面で勝てる自信があったので。そこを生かしていこう、というのがチームの共通認識になっていました。前半から相手が飛ばしてくることは最初からわかっていたので。
――ここからいい流れを掴める――、そう感じた試合はありますか。
中島 やはり初戦の北朝鮮戦です。苦しい試合になりましたが、初戦で強敵に勝てたことは大きかったです。印象的だったのは、浮き球をヘディングした時に北朝鮮選手がお腹とか腰のあたりを思い切り蹴ってきた瞬間。日本に対しての当たりの強さを感じました。会場も沸いていたのでよく憶えています。
――中島選手自身の武器はどこだと思いますか。
中島 結構好き勝手やらせてもらっているので、ゴールを奪うこととかゴールをアシストすることでチームに貢献したいです。キャラクター的には特に貢献してないです(笑)。ボーっとしているので、基本まわりに任せちゃっています。「俺が、俺が」っていう引っ張り方をする選手がいなくて、本当に「みんなで」って言う意識が強いチームでした。チームみんなが大事で、誰かひとりでも欠ければ出場権を獲得できなかったと思います。

――準々決勝、イラン戦での2ゴールのインパクトは鮮烈でした。
中島 やっといつもの感覚が戻ってきた、という印象でした。イメージどおりタイミングやインパクトが噛み合っていたなと思います。ただプレー全体でのパフォーマンスは、準決勝、決勝の方が良くなっていたので、そのあたりは今後合致させられるようになりたいですね。
――オリンピック代表チームの武器はチームの力ということですが、個の力についてはどう見ていますか?
中島 チームで戦える一体感は、たしかに日本の武器だと思います。あとはやっぱり個人ですよね。バルセロナみたいなチームを見ていると、圧倒的な「個」をもっている選手がいるのはやっぱり一番強い。一人で点を決められる選手がいれば、他の選手は守っていればいいわけですから。自分はそういう選手を目指しています。メッシは才能かも知れないけど、自分は努力によってそうなれるというところを見せていきたいです。
――結果が出せないという苦い経験を、多く乗り越えてきたと思いますが。
中島 そもそも結果がすべてだとは思っていないです。結果はもちろん大事だけど、自分にとってはまずはサッカーを楽しむことが一番。そこからパフォーマンスが上がってくると思っているので。もちろんゴールやアシスト以外でも、あらゆるプレーでチームに貢献したいと思っています。チーム全体でいいパフォーマンスが出せれば、結果につながると信じてこれまでやってきました。
――スピードを求められる現代サッカーについては、どう感じていますか。
中島 正直、世界トップレベルの選手と日本選手にはまだ差があると感じます。スピードはやっぱりすごく大事です。相手より速く動けることで考える時間ができるので、プレーに余裕が生まれるんです。ゴール前では特にですが、頭より先に体が動けるような感覚が必要。自分も1年を通してそこをずっと求めてきたので、少しはうまくなったかな、と……。でもスピードに乗った時に相手をより引き剥がすというか、相手をどんどん抜いて行けるようなドリブルを目指したいですね。浅野拓磨選手のゴールに向かう姿勢は見習いたいです。

――スピードと聞いて想像する、世界で活躍する選手は?
中島 やっぱりメッシ、ネイマール。僕自身バルセロナが大好きなので試合は全部観ていますが、メッシのプレーは本当に目標にしています。
――率直に伺いますが、今の日本は世界と戦えると感じていますか。
中島 戦えるように自分が頑張りたいですけど、まだまだ差がありますね。ただ、考え方やサッカーのやり方を少し変えれば、いけるんじゃないかとも思います。たとえばゴール前に関しては、日本人選手は互いに譲り合ったりするけど、海外だと自分は自分、相手は相手。自分がゴールを決めることしか考えていないですよね。その気持ちは大事にしたい。ゴール前では、僕は基本的にパスはいらないと思っています。相手がくいついてきたらやり方を変えればいい。そういった感覚を磨いていけば、自然と技術も結果もついてくるはずです。
――スパイクについて伺います。大会を通して履いていたスパイク「X」の感触はいかがでしたか。
中島 準決勝までずっと同じ一足を履いていましたが、足によくなじんでくれました。カタールのピッチコンディションは比較的良かったんですけど、ピッチが濡れていたり土がゆるかったりした時、しっかりプレーをサポートしてくれました。でもターンや踏み込みで滑った時に、スパイクのせいにはしたくないですね。自分の体の使い方で、転倒などの危険を回避できることもあると思うで。
――スパイク選びの際に重視することはなんですか。
中島 普段の靴を選ぶのと同じ感覚で、スパイクも選んでいます。かかとが浅いスパイクはプレー中に脱げそうな感覚になるので、履き口の心地よさは重視します。あとは指や足の裏が痛くならないかどうか。アディダスのスパイクは自分の足に合っているので、これまでストレスを感じたことはありません。
――リオデジャネイロオリンピックまで残りわずか。目標を聞かせてください。
中島 あと5カ月ですか。この期間がすごく大事だと思います。どれだけ成長できるか。まずは所属チームのFC東京で試合にしっかり出て、チームを勝利に導くゴールを決めて、プレー以外の部分でもいいパフォーマンスを出して成長していきたいです。代表チームでは、メダルを取ることを目指したいです。これまでのベスト、銅メダルを越えていくところが目標ですね。

By サッカーキング編集部
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