2012.07.04

メッシとC・ロナウド、他の選手と一線を画す“世界最高の名手2人”の値段を検証する

 リオネル・メッシとクリスチアーノ・ロナウド。現在のサッカー界を代表する2大スターである彼らは、それぞれの所属クラブで唯一無二の存在である。では、他の選手とは一線を画す2人の値段はいくらなのか。いくつかの推測から、この超難問の答えに迫る。

 リオネル・メッシとクリスチアーノ・ロナウド。“世界最高の選手”である2人の市場価値はどのようにして算出すればいいのだろうか。彼らほどのスーパースターともなると、通常の移籍金のメカニズムで価値を算出することは困難である。彼らはピッチ上でのパフォーマンスだけでなく、その商業的価値でもクラブに利益をもたらすからだ。

 2009年、レアル・マドリーはC・ロナウドを獲得するために、マンチェスター・ユナイテッド側が提示した100億円を超える要求額を値引き交渉なしに支払った。しかしこの金額は、その後の12カ月間のマドリッド市内のユニフォーム売上だけですぐに回収できたそうだ。世界中で「RONALDO」のネームと背番号「9」が入ったR・マドリーのユニフォームは飛ぶように売れている。いや、ユニフォームの売り上げは彼の存在によって生じる経済効果のごく一部にすぎない。端的に言ってしまえば、C・ロナウドのようなスーパースターを擁することだけが、クラブの人気や知名度を世界的なレベルに高める手段なのだ。

 バイエルンはチャンピオンズリーグでR・マドリーを撃破したが、世界的な人気ではR・マドリーよりも格段に劣る。その構図はヨーロッパを制したチェルシーと、準決勝で敗れたバルサにも当てはまる。アルイェン・ロッベンやフランク・ランパードは素晴らしい選手ではあるが、こと“商業的価値”となるとC・ロナウドやメッシに太刀打ちできない。

 市場価値の話に戻そう。R・マドリーはロナウドの獲得に史上最高額の移籍金を投じたが、それをあっという間に回収した。今後も「C・ロナウドが在籍している」という状況をキープしていれば、巨額の利益が約束される。では、そんな“金の卵を生む鶏”を手放したマンチェスター・ユナイテッドは間抜けだったのだろうか。いや、彼らはC・ロナウドを仕方なく手放したにすぎない。C・ロナウドやメッシのようなスタートもなると、プレーする場所を選ぶ権利を手にしている。クラブにできることと言えば、彼らが満足するだけの待遇を与えることだけだ。高額年俸はもちろん、選手の野心を満たすだけの戦力を整え、納得できる起用法を保証するなど、すべてにおいて居心地の良さを提供しなければならない。

 2人がクラブと交わしている契約の中には「違約金」という項目がある。スペインの『マルカ』紙の報道によれば、メッシは約150億円、C・ロナウドに至っては約1000億円と言われている。どちらも大金だが、これが彼らの市場価値というわけではない。もちろん、C・ロナウドにはメッシの6・5倍の価値があると見るのも間違いだ。

 違約金とは「契約を途中で解除するために必要な金額」のこと。実際には選手とクラブの紳士協定である。バルサが設定した150億円という違約金は、メッシの感情に配慮したものだろう。仮にメッシが「別のクラブに移籍したい」と願うことになった場合、150億円を支払うことで契約によるクラブの拘束を解除できる。彼個人には支払えない額かもしれないが、それを提供しようとするクラブはいくらでも現れるだろう。バルサは現実的に支払いが可能なぎりぎりの額を設定することで、メッシ側に「君を悪く扱うことはない」という意思表示をしているわけだ。こんなことをせずとも、両者の間には強い信頼関係があるが、契約の話だけはまた別物である。

 では、C・ロナウドの1000億円はどうだろう? ロシアや中東の大富豪が本人を口説き落としたとしても、1000億円を用意するのはそう簡単ではない。もっとも、今やサッカー界は世界経済の一部である。いざとなれば投資家によるファンドが組まれ、金は瞬時に集まるはずだ。

 人の心が金で買えないとは断言できないが、メッシやC・ロナウドに移籍市場で値づけすることは不可能だというのが結論だ。彼らの思惑一つで金額は高くも安くもなる。本当の値段は本人たちにしか分からないのだ。

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【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING @SoccerKingJP』の編集長に就任。

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