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人気サッカーゲームのプロデューサーが聞く「教えてドラゴン!」…久保竜彦の描く最強のFW論に迫る

2014.12.19

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写真=小林浩一

 自らがサッカークラブの監督となり、選手を育て、戦術を選択し、世界一を目指す本格サッカークラブ育成ゲーム『BARCODE FOOTBALLER(バーコードフットボーラー)』。スマートフォンのカメラで身近にあるバーコードを読み取ると3兆通りもの選手が生成され、バーコード毎に能力や表情の違った選手が登場することで人気を博してきた。

 ゲームのプロデューサーは、自身も浦和レッズのサポーターである阿部淳氏。同ゲームの開発と発展に尽力し、大型アップデートや実在選手、クラブとのタイアップを数々実現させてきた。今回は12月にゲームが『2蹴年』を迎えたことを記念して、豪華対談が実現。圧倒的な身体能力と類稀な決定力を武器に、日本代表のエースに君臨してきた“ドラゴン”久保竜彦氏の描く最強のFW論に迫った。

ストライカーは瞬間的に逆をつくことが大事

阿部「私達ファンから見て、今まで久保さんほど見る者をワクワクさせてくれたFWはいませんでした。久保さんは身体能力という言葉がしっくりくるFWでしたが、ご自身では理想のFW像を持っていましたか?」

久保「よくビデオで見ていたのは、(マルコ)ファン・バステンや(ヨハン)クライフです。マラドーナはもちろん、ロナウドなど色んな選手を見て研究していました。その中でも、ブラジル人は見ていると、『えっ』という驚きが多くて好きでした。真似はできないので、ヒントを探す感覚です」

阿部「確かに、タイプとしてファン・バステンは近かったと思います。ちなみに、好きな国はありましたか?」

久保「特に好きな国はなかったです。けれど、サッカーを見るときはいつも日本を応援していましたよ(笑)」

阿部「『バーコードフットボーラー』ではポジションごとに能力があり、FWにはストライカーという能力があります。点取り屋だった久保さんは、ストライカーには何が必要だと考えていましたか?」

久保「相手の逆をつくことですかね。瞬間的に逆をつくことが、シュートまで持ち込む最善の方法だと思っていましたから、それがストライカーに一番大事な能力だと思います。走るだけで相手を抜き去ることができれば、それに越したことはないです。しかし、自分自身が圧倒的に速いわけでもなかったので、自分の能力の中でやれることは、何とか相手の逆を突くことでした」

阿部「対戦相手はJリーグだと日本人選手、日本代表だと外国人選手と、違いも多かったと思います。相手によって、逆をつくための方法に違いはありましたか?」

久保「それは、違いましたね」

阿部「日本代表の場合は、どのように工夫をされていましたか?」

久保「外国人選手相手では、なかなか逆をつけないんですよ(笑)。親善試合では多少プレッシャーが緩くなり、ボールを奪おうと伸ばしてくる足が日本人選手よりも少し深く来るだけで、ボールを動かすことでかわすことはできました。ただ、ガチの時はやっぱり苦しかったです。なかなかシュートを打たせてもらえませんでしたから」

阿部「数々の相手と対戦されてきた中で、印象に残っている選手はいましたか?」

久保「フランス代表の守備陣相手には、『何もできんかった』という感覚を覚えています。他には韓国代表もプレッシャーが結構厳しく、苦しかったですね」

阿部「当時のフランス代表の守備陣は、歴史的に見ても名選手が揃っていました」

久保「そうですね。フランス・ワールドカップでも優勝していましたから。あれは、本当にすごかったです」

阿部「『バーコードフットボーラー』には、ストライカーの他にも決定力という能力があります。プロフェッショナルのレベルでゴールを奪うために必要なことは、技術でしょうか、メンタルでしょうか?」

久保「どちらかが欠けていたらゴールを奪うことはできないですし、2つの能力が高ければ高いほど良い選手だと思います。Jリーグでもそうですけど、プロにおける差はほんの少しだけ。その少しの差、ちょっとした隙を狙い続ける意地や気持ちが大きければ大きいほど良いわけです。そこに、シュートを10本打って同じところに10本蹴ることができる多彩な技術があればなお良いですね。(能力を表す)レーダーチャートの面積が大きいか小さいかで、スーパーな選手かどうかが分かれてくると思います」

阿部「一つの能力が突出しているというよりも、技術とメンタルの積み重ねが大切になってくる感じですね」

久保「プロの世界で結果を残すならば、技術とメンタルのどちらもないと無理だと思います」

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無心になれることをコントロールできる選手がスーパースター

阿部「その小さな差で、今季のレッズは優勝を逃しました。特に終盤の大事な試合で、ゴールを決められずにいました。久保さんは横浜F・マリノスに在籍していた2003年のセカンドステージ最終節で、試合終了間際にヘディングシュートで得点して優勝を決められています。当時は、どういう心構えでプレーされていましたか?」

久保「無心になって、何も考えていなかったですね。大事な試合だということはわかっていましたし、慕っていた大さん(奥大介)が、『(古巣戦となり)絶対にこの試合だけは負けたくない』と言っていたこともずっと聞いていました。シュートシーンを振り返れば、イメージはパッと頭に思い浮かびましたね。ヘディングでも浮かせて打つか、叩きつけるか。一瞬ですけど、色んな選択肢が出てきて、どれを選ぶか考えていました」

阿部「なるほど。優勝争いの中でも、逆に無心になれるということは興味深いです」

久保「気持ちが入っていたからこそ、無心になれたと思います。全試合で無心になることは難しいですが、大事な場面で無心になれたのは、監督が岡田(武史)さんになって初めての年で、ちゃんと言うことを聞いてキレずにやっていたからですかね(笑)。プレー中に無心になれるときは時々ありましたが、一番大事なところでなれるかどうかはコントロールできませんでした。自分の場合はたまたまです」

阿部「いやいや、すごい結果を残されましたよ。横浜FC時代の2007年にも、レッズとの開幕戦で決めた超ロングシュートもありました。僕もスタンドで観戦していて、一緒に見ていた妻は普段ほとんどサッカーについて話さないのに『そこから打つの』と驚いていました。誰もシュートを打つタイミングだとは思っていなかったと思いますが、当時も無心になれていましたか?」

久保「あの時は無心というか、相手がプレッシャーをかけに来ていなかったので、シュートフォームをしっかりと行えるスペースがあるなという意識はありました。でも、入るとは思っていなくて、『まあ、打ったろか』というぐらいの感覚でしたね(笑)」

阿部「実際にゴールを決めてしまうからすごいですよね。日本代表でも、2004年のチェコ代表戦で決めた豪快なゴールも覚えています。当時のチェコは(パベル)ネドベドや(ペトル)チェフといったスーパースターがいましたが、久保さんのゴールで1-0と勝利しました」

久保「あのゴールは、一番プレッシャーが厳しいエリアですごく簡単にフリーになれたので、思いっ切りシュートを振り抜けました。けれど、本当はありえないことですから、相手も本気ではないということです」

阿部「なるほど。相手が本気かどうかは、プレーしたらわかるものですか?」

久保「やはり、バチッと体が当たった瞬間でわかってしまいますね。対戦した時のチェコはどこか抜けていて、二日酔いみたいな感じでした(笑)。『やっぱり親善試合で、本気じゃないな』とは思いましたが、手応えというか、キレイにボールが足に乗ったので足応えはありました」

阿部「振り返ると、やはりクラブと代表で数々の記憶に残るゴールを決めてこられましたね」

久保「今、自分でも話をしていてフッと思いましたが、毎試合は無理でも、結構な頻度で無心になれるかどうかをコントロールできる選手はいるんですかね。無心になることは誰でもあると思いますが、自分から無心になれる感覚を持っているのかが気になります。そこをコントロールできる選手がスーパースターなのかなと思います」

阿部「スーパースターと呼ばれる選手は、『ここぞ』というところで本当にゴールを決めてきますから、実際にコントロールできていそうです」

久保「メッシやクリスティアーノ・ロナウド、マラドーナといった選手は、ゴールが欲しいと誰もが思っている時に絶対決めますよね。それにみんなも憧れるんですけど、力んで空振りして終わってしまう(笑)。全試合を無心のような感覚でプレーしたいと思いますけど、それができないんですよ」

阿部「なるほど。無心になりやすいかどうかは、調子の良し悪しに関わってくるかもしれないですね」

久保「勝手に無心になることは、みんなも経験があると思うんですよ。自然にヨダレが出ていたとか(笑)」

阿部「そうなんですか(笑)」

久保「マイケル・ジョーダンのスーパープレー集を見ると、すごいプレーしている時はヨダレがダラーっと垂れているんですよ。『ああ、こういうことなんや』と思います(笑)。でも、そうなるのが難しい。みんなも無心の時に良いプレーができているとわかっていて、それを続けたいと思っているはず」

阿部「深く考えすぎてもよくないのですかね」

久保「考えれば考えるほど、ドツボにハマって、『どうすればいいの』となってしまったり。本当に面白いですよね。どうなれば無心になれるか、偉い人に聞いてみてください(笑)」

阿部「わかりました(笑)。本日はありがとうございました」

久保「こちらこそ、ありがとうございました。是非、報告をお願いします(笑)」

 

 

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