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不調ドルトムントに見えた前主将ケールの輝き/ドイツ現地直送コラム

2014.12.10

DORTMUND, GERMANY - DECEMBER 5: Sebastian Kehl and Matthias Ginter of Dortmund celebrate the win after the final whistle during the Bundesliga match between 1899 Hoffenheim and Borussia Dortmund at Signal Iduna Park on DECEMBER 5, 2014 in Dortmund, Germany. (Photo by Alexandre Simoes/Borussia Dortmund/Getty Images)

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ホッフェンハイム戦で勝利を喜ぶケール(左) [写真]=Borussia Dortmund/Getty Images

 5日に行われたブンデスリーガ第14節で、日本代表MF香川真司が所属するドルトムントはホッフェンハイムに1-0で勝利し最下位を脱出。順位を14位まで浮上させた。

 ドイツ紙『デア・ヴェステン』は7日、この試合の勝因として、昨年まで主将を務めていた元ドイツ代表MFセバスティアン・ケールの存在を挙げている。

 今シーズン限りでの現役引退を表明している34歳の同選手だが、開幕からここまでのパフォーマンスは非常に良く、スポーツディレクターのミヒャエル・ツォルク氏やユルゲン・クロップ監督など首脳陣は、引退撤回の説得に動く可能性も示唆している。

Borussia Dortmund - Training & Press Conference
今季での引退を表明しているケール [写真]=Bongarts/Getty Images

 そんなケールの役割はピッチ上に留まらない。同紙によると、上述の試合が始まる前のロッカールームで、ドイツ代表DFマッツ・フンメルスとケールの間でこんなやり取りがなされたという。

ケール「君がやる? それとも俺がやる?」
フンメルス「君がやってくれ」

 そのやり取りの後、ケールは周囲を鼓舞するためチーム全員の前に立ち、スピーチを行ったという。また、自身の後を継いで現在主将となったフンメルスの顔を立てるため、そのスピーチの前に同選手の意向も確認するという、ケールなりの気遣いもそこにはあった。

 フンメルスがこの件について試合後、CS放送『Sky』でのインタビューで「ケリー(ケール)は試合前にみんなの前で話してくれたんだが、それは彼の才能だよ。ファンタスティックな人間だ」と話せば、MFイルカイ・ギュンドアンも「ケリーはいつだって、どんな状況だって、正しい言葉を見つけることができる。彼は今日再びそれを証明した。彼がみんなの前で語りかけるように話すと、僕は感銘を受けるんだ。その言葉は彼のハートから出ているからだろうね。それを聞くと、残っていた数パーセントの力が湧きあがってくるんだ」と最大級の賛辞を送っていた。

Borussia Dortmund v 1899 Hoffenheim - Bundesliga
ホッフェンハイム戦後、サポーターの声援に応えたケール [写真]=Borussia Dortmund/Getty Images

 ただし、当の本人が「何を話したかは全く覚えていない。ひょっとしたらその中には、言ってはいけない言葉も含まれていたかもしれないね」とはぐらかしたように、ケールが周囲をどのように奮い立たせたのかは内緒なようだ。

 かつて負傷で長期離脱していた同選手は2011-12シーズンで本格的に復帰したものの、切り替えの早いドルトムントのサッカーに当初はついていけず、ドイツメディアからも“終わった選手”と見られていた。

 しかし今や同クラブにおいて、精神面だけでなくプレー面でも最も輝きを放つプレーヤーがケールであることに、異論を挟む者はいない。

鈴木智貴(すずき・としき)。1981年生まれ。静岡県天竜市(現:浜松市天竜区)出身。日本での社会人生活を経て、2010夏よりドイツ在住。現在デュッセルドルフのアマチュアクラブでU-12監督を務め、プロチームの指導者になるべく修行中の身。ドイツサッカー連盟公認C級(UEFA-B級)指導者ライセンスを取得。

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