2014.08.22

【ブンデスリーガを愉しむ方法】評価の高い日本人選手、今季活躍するのはこの選手[鈴木良平]

いよいよ開幕するドイツブンデスリーガ。今季は1部に11人もの日本人選手が在籍。そこでFOXスポーツ&エンターテイメントのサッカー解説でお馴染みのドイツサッカー協会公認コーチ鈴木良平さんに、日本人選手への期待を語っていただきました。
写真●Bongarts/Getty Images

ドイツでの実績がある岡崎と内田

 ブンデスリーガは日本人選手が最も多く在籍し、みんな評価されている。ブンデスリーガも日本、アジアには目を向けており、日本にスカウトを送り込んでいるブンデスリーガのチームは多い。その中でも実績を残しているのはマインツの岡崎慎司、シャルケの内田篤人だろう。

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 昨シーズン、岡崎は15得点を記録、1トップとして完全にチームの信頼を勝ち取った。今季もレギュラー。昨シーズン、シュツットガルトから岡崎を獲った時にメディアは、「前のシーズンに1点しか取っていない選手を何で獲るのか」と言っていたが、トゥヘル監督が1トップに据えて見事に成功させた。しかし、今季はそのトゥヘル監督が交代し、ヒュルマンド新監督が就任。シーズン当初から結果を残さないといけない状態だ。

 内田は現在、ケガのため開幕戦に間に合うかは微妙な状態。しかし、シャルケは内田のバックアップは獲らない。もし、内田がケガをしたら他の選手で賄うと言っているくらい、内田を信頼している。今季で5シーズン目となった内田はシャルケへ来た頃はフィジカルが弱く、守備に問題があると言われていたが、今ではバイエルン・ミュンヘンのリベリーとマッチアップしても完璧に抑えている。また、攻撃面でもファルファンとの右サイドはシャルケの武器。ケガさえなければ今季もシャルケの中心選手として活躍するだろう。

新監督、新天地で復活する乾、長谷部、清武

 昨シーズンはややくすぶっていた選手たちが、今季は活躍しそうな気配がある。まずはフランクフルトの乾貴士。フランクフルトに入団した12-13シーズンには左アウトサイドとして評価されていたが、昨シーズンはプレースタイルを読まれ、良さが出せなくなってしまった。それで評価が下がり最後は戦力外扱いだったが、今季から速い攻撃を求めるシャーフ新監督になって評価が高い。10番のゲームメーカーのポジションに入ってレギュラーを獲りそうだ。

 ニュルンベルクからフランクフルトに移籍し、乾の同僚となった長谷部誠にも大きな期待がかかっている。昨季までレギュラーボランチで2枚看板だったローデ、シュベグラーの2人がいなくなり、その後釜として非常に期待されている。また、ニュルンベルクからハノーファーに移籍した清武弘嗣の評価も高い。チームが変わって生き生きとやれているようだ。新天地での活躍を期待したい。

信頼の厚い細貝、2人の酒井はレギュラー定着へ

 昨シーズンからヘルタ・ベルリンに移籍し、レギュラーとなった細貝萌には更なる飛躍のシーズンになりそうだ。細貝はレヴァークーゼンではボランチでなかなか出番がなかったが、現在のルフカイ監督がヘルタ・ベルリンに呼んだ。いまでは完全にボランチのレギュラーだし、場合によってはキャプテンマークを巻いてもいいぐらい信頼されている。それによって今季からヘルタ・ベルリンに移籍した原口元気も細貝がいることで、伸び伸び自由にやっている。

 日本代表のサイドバック、シュトゥットガルトの酒井高徳と、ハノーファーの酒井宏樹もチームでの立場が大きくなっている。酒井宏樹は元々、ハノーファーで長年キャプテンをやっていたチェルンドロが引退したら、後釜はお前だぞと言われて獲得されていた。そのチェルンドロが引退したので今季はレギュラーが有力。また、酒井高徳も昨シーズンまでは右も左もやっていたが、今季は左で定着しそうだ。

1部初挑戦の大迫、ケガからの復帰が待たれる長澤

 昨シーズン、2部の1860ミュンヘンで15試合6得点と結果を残した大迫勇也は、今季ケルンに移籍し、1部デビューを果たす。大迫はテクニックがあって、足元の収め方とかシュートは評価が高い。結果も出ているので、レギュラーを取れそうなところに来ている。

 そして大迫の同僚、専修大学から今年の1月にケルンへ移籍した長澤和輝の評価も現地では非常に高い。残念ながら左膝の内側靭帯を断裂したため、長期離脱となってしまったが、左も右もアウトサイドはできるし、テクニックもスピードもあり、非常に注目されている選手。早い復帰で大迫とのコンビを見てみたい。

 11人の日本人選手が所属するブンデスリーガ、どの選手も高い評価で、全員がレギュラーを確保しそうな勢いだ。日本代表のアギーレ新監督はゲームに出ているところをチェックするので、試合に出て活躍することが選ばれるためにも重要だと思う。今後の日本代表に選出されるためにもドイツにいる日本人選手はがんばって欲しい。

◆ブンデスリーガの日本人選手(8月20日現在)
シャルケ:内田篤人
マインツ:岡崎慎司
ヘルタ・ベルリン:細貝萌、原口元気
ケルン:大迫勇也、長沢和輝
フランクフルト:長谷部誠、乾貴士
ハノーファー:清武弘嗣、酒井宏樹
シュトゥットガルト:酒井高徳

豊富なタレントで「ポゼッションサッカー」を進化させるバイエルン・ミュンヘン

 ブラジルワールドカップで圧倒的な強さを見せて優勝をしたドイツ。その国内リーグであるブンデスリーガはバイエルン・ミュンヘンとドルトムント、対照的なサッカースタイルの2強が君臨している。

 昨シーズン、ブンデスリーガを歴史的な独走で制したバイエルン・ミュンヘン。12-13シーズンにブンデスリーガ、UEFAチャンピオンズリーグ、ドイツ・カップと3冠を達成したチームをグアルディオラ監督が引き継いで、さらに進化させている。スタイルはポゼッションを再優先して、自分たちがボールを持っていれば相手は点を取れないと考えるサッカー。そして、それを実現するだけのタレントが今季も揃っている。

 ワールドカップで優勝したドイツ代表からは、世界No.1のGKノイアー、決勝戦で決勝点を決めたマリオ・ゲッツェを始め、ミュラー、ラーム、シュヴァインシュタイガー、ボアテング。その他、リベリー、ロッベンらといった各国代表の主力が顔を連ねる。但し、タレント揃いなだけに別の悩みもある。主力選手がワールドカップのため、シーズンインが遅れ、チームとして成熟するのに時間がかかることだ。さらにセンターバックのダンテがドイツに7点を取られてブラジルが負けた試合の戦犯と言われており、メンタル面が心配される。

 ただ、シーズン当初は多少もたついても、戦力は図抜けている。加えて、今回のワールドカップでは3バック、もしくは5バックの国が活躍した。今後、3バックがトレンドになりそうな中、グアルディオラ監督は3バックにも挑戦するのではないかと考えている。最先端のポゼッションサッカーに3バックをどう組み合わせるのか楽しみだ。

代名詞の「ゲーゲンプレッシング」に磨きをかけるドルトムント

 バイエルン・ミュンヘンがポゼッションサッカーを進化せる中で、ドルトムントは別の道を歩んでいる。今回のワールドカップブラジル大会を見て、世界のサッカーが変わってきているではないかと感じている。バルセロナやスペイン代表を頂点としたポゼッションサッカー。それをみんなが理想と思っていたのが、少し変わりつつある。ポゼッションサッカーの難しさは自分たちが長い時間ボールを持つが、相手が全員引いてしまって時にどうやって攻めるかが大きな課題。
ワールドカップでのドイツやオランダのように、全員がハードワークをして、前からプレッシングをかけて、ボールを奪って速く攻める。カウンターで相手が戻る前に、守備が少ない時に攻める。そういったサッカーが今後、世界の中心になるかもしれない。力関係で相手に劣っていてカウンターを選択するのではなく、チーム力が優っていてもカウンター。引いて守ってのカウンターではない。その代表格がレアル・マドリードであり、ドルトムントになる。

 ドルトムントはクロップ監督が作りあげてきた「ゲーゲンプレッシング」が代名詞。前へ前へ、縦へ縦へと速いサッカー。ボールを失っても前でボールを取りに行き、素早いカウンターを仕掛けるサッカーに磨きがかかっている。昨季はあまりにもケガ人が多すぎたが、それでも2位。チャンピオンズリーグでも準々決勝で優勝したレアル・マドリードを相手に最後まで戦えた。今季はケガをした選手も戻ってきている。バイエルン・ミュンヘン以上に結果が出せるチームになるかもしれない。

 シーズンを通すとバイエルン・ミュンヘンの優勝の可能性が高いが、直接対決だとドルトムントの方が分がいい。この2チームは欧州のトップレベル。この2強がどれだけ進化するのかが楽しみだ。

ワールドクラスの新星が毎年登場

 ドイツサッカーのもう一つのみどころは若手の台頭だろう。ドイツでは2000年欧州選手権の惨敗から若手育成に力を入れており、フィジカルの強い選手だけでなくテクニックのある、近代サッカーができる選手が生まれてきている。ワールドカップ2006年大会でブレイクしたポドルスキー、ラーム、シュヴァインシュタイガー、2010年の南アフリカ大会ではミュラー、エジル、ノイアー、ケディラ、そして今大会ではマリオ・ゲッツェ、さらには直前のケガで代表からは外れたが、マルコ・ロイス。

 育成の改革は継続しており、毎年のように10代のタレントがデビューして代表に入っていく。今年もまた出てくることは間違いない。誰がブレイクするか楽しみ。これからしばらくドイツが世界のサッカーをリードしていくのは間違いない。