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ヴィッセルが好きなファンのために 芝英幸(ヴィッセル神戸 ファンディベロップ部門チーフマネージャー)

2014.12.11
ヴィッセル神戸芝英幸

「やっぱりいつか優勝したいです」

 ヴィッセル神戸のファンディベロップ部門チーフマネージャー芝英幸さんは将来の目標について間髪を入れずにそう答えた。今シーズンはクラブ創設以来、初めてリーグ戦で首位に立ち、ヤマザキナビスコカップでも準々決勝まで勝ち進み、ファンの期待が高まった。

「一度勝つだけでもうれしいですよね。やっぱり優勝が決まったら、もっとうれしいと思う。スタジアムにはたくさんのファンの方が来てくれていますし、毎試合すごく喜んでくれるんです。過去には皆さんにすごくみじめな思いにさせてしまったこともありました。我々とファンの皆さんは同じ船に乗った仲間ですので、やっぱり優勝してみんなで喜びたいですね」

 Jリーグに参入した1997年以降、リーグ戦では思うように結果を残せず、2度のJ2降格も経験している。結果が残せなかった悔しい思いと、純粋に喜びを分かち合いたいという思いが芝さんの言葉からにじみ出ていた。ファンへの感謝だけでなくタイトルへの意欲が溢れてくる。

「お客さんの応援でチームを勝たせる試合がシーズン中に2試合くらい作れると考えているんです。2試合あると勝ち点6違うわけですよね。6足したらかなり順位を上げられるので、優勝できるだけの戦力を整えれば、総合力でほかのチームに勝てるのではと思っています。優勝という目標をチームだけに課すのではなく、運営サイドでも何らかの形で貢献していきたいです」

どうすればファンを増やせるかを考えた

 芝さんは、2001年にヴィッセル神戸に入社し、事業部門でクラブと地元自治体とを結ぶ懸け橋としてさまざまな活動に携わりクラブと共に歩んできた。クラブを応援してもらう後援会を担当し、多くの人にスタジアムに来てもらえるように独自のアイデアでクラブを引っ張ってきた。

「毎年2回、ホーム開幕戦とホーム最終戦に兵庫県内の全自治体の首長さんにお集まりいただきヴィッセルを応援するセレモニーを開催しています。現在は自治体を通して、その先にいる住民の方にいかにしてスタジアムに来てもらえるかというテーマを掲げて活動しているんです。足しげく各自治体のイベントを回り、観戦企画を持ち込んで採用していただいています。今では地図なしで兵庫県全域を回れるほどになりました。県下全ての自治体が参加するセレモニーは他のチームにはないと思うんです」

 最後に付け加えられた一言に今までの苦労や成果が表れていた。クラブにとって密接な関係にある自治体との交流だけでなく、工夫を凝らしてその先を見据えた活動がクラブに寄与するものは大きい。近年ではホームタウンである神戸市の小学校を選手自身が訪問する活動を続けている。活動の経緯を振り返りながら話は続く。

「いろいろ活動していく中で、すでにヴィッセルが好きな人としか触れ合っていないことに気付いたんです。スタジアムやその周辺でイベントを催した時に、サッカーに興味がない人にも足を運んでもらえるように、まずはこちらから歩み寄る活動を始めたらいいんじゃないかと思いました」

 ファンのために行うイベントが必ずしも描いたイメージどおりにならないこともある。たくさんの活動を積み重ねた結果、見つけた一つの答えだった。

「その中で神戸市にある小学校全部に選手が行ってみたら面白いんじゃないかという話が出まして、試合と連動して勝ったりゴールを決めたりしたら選手が何かを持っていくのはどうかということで企画して、神戸市教育委員会の協力もあって実現に至りました。当初は事前連絡も訪問前日で、当日に選手が訪ねても子供たちがいなくて校長先生にボールを渡して帰るなんてこともありましたね。今では何年も続けていくうちに受け入れ体制も整えていただき、一学年全員が迎えてくれたりすることもありました」

 長い期間クラブの運営に携わってきたからこそ、活動の成果や課題が見えてくる。新しいことに挑戦するだけでなく、継続して続けた活動は街や子供たちに浸透して今につながっている。

全ての活動はファンのために

「ヴィッセルが好きな人を増やしていきたいですね。スタジアムに来ていただければ絶対に満足してもらえる自信はあるんですよ。満足していただける機会をもっと増したいです。そのために全ての活動があると思っています」

 自信があると言い切るのは、今シーズンのチームにそれだけの勢いや確かな成長が感じられたからだ。

「Jリーグのクラブは限られた街にしかありません。その価値に気付いていただき、スタジアムで試合を見ていただければいいなと思います」

 サッカーに関わる者として、クラブに関わる者として、まだサッカーやヴィッセルの魅力を知らない新しいファンのもとにもメッセージが届くように、芝さんの挑戦は続いていく。

インタビュー・文=上村真吾(サッカーキング・アカデミー
写真=義村治子

●サッカーキング・アカデミー「編集・ライター科」の受講生がインタビューと原稿執筆を担当しました。
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