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【中津東】予選では中学の友人と対決…守護神は想いを背に開幕戦へ<第100回高校選手権>

2021.12.26

県予選準決勝で対戦した中津東GK石川(左)と大分GK塩治(右) [写真]=松尾祐希

 選手権に出場できるのは48チーム。東京都以外の道府県は1チームしか出場できず、ほとんどのチームは秋に高校サッカーを終えなければならない。特に都道府県予選では対戦相手に昔からの顔馴染みがいる場合が多く、試合後に想いを託されるケースも少なくない。

 7年ぶりに出場する中津東にも旧友の思いを背負って、ピッチに立つ選手がいる。それがGK石川由覇(3年)だ。幼稚園の時、大分トリニータに所属していた西川周作(現:浦和レッズ)のプレーに憧れた石川は、小学5年生の時にフィールドプレーヤーからGKに転向。サッカーを始めた時から希望していたポジションをようやく与えられ、以降も懸命にプレーして技術を伸ばしてきた。中学ではさらなる成長を期して大分県サッカー協会が主催していた“GKプロジェクト”に参加。希望すれば誰でもトレーニングができるスクールに通い、より高みを目指して鍛錬した。

 卒業後は地元の中津東に進学。2014年度大会を最後に選手権出場から遠ざかっていたチームではあったが、石川がレギュラーに定着した今年はインターハイ予選でベスト4に進出を果たした。

 迎えた高校最後の選手権。順当に勝ち上がり、準決勝ではインターハイで全国大会に出場した大分と対戦した。その試合で石川は1失点こそ喫したが、好セーブを連発。1-1で迎えた延長前半には絶体絶命の大ピンチを救うシュートストップを見せるなど、最後まで集中力を切らさなかった。しかし、石川の見せ場はこれだけで終わらない。「あまり得意ではない。練習でも止められていなかった」という苦手だったPK戦で、勝利の立役者になる。3本目の相手GK塩治晴士のキックを冷静に読んで、シュートを弾き出したのだ。チームもこのセーブで得たアドバンテージを最後まで守り、最大のライバルを撃破して決勝進出を決めた。

 試合後、石川は塩治に歩み寄った。実はこの二人、中学時代からの友人。塩治が3本目を蹴る際に言葉を交わしたのも、昔からの関係性があったからだ。決着が付いた瞬間、石川は塩治からエールを送られ、「お前のおかげで成長できた」という言葉をかけられた。返した言葉は「ありがとう」。なぜ、石川は短い言葉に留めたのか。その理由をこう話す。

「勝った側なので口数多く話すのは違うと思ったので短い言葉にしました。なので、あとは結果でその想いに応えたい」

 見事に翌週の決勝で勝利を手にし、石川は有言実行で旧友の想いに応えた。ただ、まだ終わりではない。最高の舞台で結果を残すことが、石川に与えられた使命だ。しかも、中津東の初陣は28日の開幕戦となった。節目の100回大会であり、今回から再び会場となった国立でのオープニングマッチ。誰からも注目されるのは間違いない。特別な一戦でも仲間の想い、最高のパフォーマンスで勝利に導いてみせる。

取材・文=松尾祐希



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