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【大津】経験不足のスタートから“穴がない”チームへ進化 勝負弱さ振り払い日本一へ<第100回高校選手権>

2021.12.23

3年ぶり18回目の選手権出場となる熊本県代表の大津 [写真]=森田将義

 ワールドカップ戦士である巻誠一郎氏を筆頭に、川崎フロンターレの守備の要であるDF谷口彰悟、フランスで活躍するDF植田直通と大津高を巣立ったOBの名前を挙げればキリがない。これまで50人以上のJリーガーを輩出してきた高校サッカー屈指の名門校だが、日本一のタイトルとは縁がない。

 原因の一つとして挙げられるのが、選手が揃う代での勝負弱さだ。2009年の代は谷口を筆頭に後にプロへと進んだ選手が、6名もいた魅力的なチームだったが、熊本県予選決勝で敗れ全国行きを逃している。高卒でJリーガーとなったのはFW宮原愛輝(ロアッソ熊本)のみだが、各ポジションにタレントがいた昨年度もそうだった。全国に行けば優勝を狙えるとの声も多かったが、守備を固める相手に苦しみ、県予選で姿を消した。植田とFW豊川雄太(セレッソ大阪)の二枚看板がいた2012年、DF野田裕喜(モンテディオ山形)、MF河原創(ロアッソ熊本)、FW一美和成(徳島ヴォルティス)と縦にラインに役者が揃った2015年も、全国には駒を進めたがいずれも初戦で敗れている。

 今年の代は、そうした強い代ではない。実力派揃いだった先輩たちの陰に隠れ、下級生の頃からポジションを掴んでいたのはGK佐藤瑠星(3年)と主将のMF森田大智(3年)のみ。2人以外は自分たちの代になってからレギュラーに抜擢された選手だ。経験不足、チームとしての完成度の低さもあったせいか、2月に行われた九州新人大会では攻守ともにチグハグな場面が目についた。この大会で大津は2014年から7年連続で決勝まで進んできたが、今年の代はグループリーグで敗れた。「新チームが始まった時は守れないし、攻められないしという状態だった」と振り返るのは、守備の要であるDF川副泰樹(3年)だ。

 4月から始まった高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグWESTで生き残るため、徹底してこだわったのはチーム一丸となっての守備だ。5バックで強固な守備ブロックを作り、前半を0-0で終えるのがチームの狙い。後半に入ってからは森田を中心に攻撃のギアを上げて少ないチャンスを物にし、勝ち点を積み上げる。今年の代は飛び抜けた選手はいないが、真面目にコツコツ頑張れる選手が多く、与えられたミッションは忠実に徹底できる。今年の代はこれまでとは違い、DF日髙華杜(3年)のロングスローを、191センチのFW小林俊瑛(2年)が競り合う飛び道具を備えるのも強みだ。派手さはないが、その戦いぶりには攻守両面に穴がない。堅実な戦いでプレミアリーグの前期を4勝2分1敗で終え、残留が目標だったチームは優勝争いを繰り広げた。

 インターハイは静岡学園に敗れ、ベスト8に終わったが、経験値を高めた選手たちの成長は著しい。10月以降のプレミアリーグではサンフレッチェ広島ユース、名古屋グランパスU-18といった強豪も撃破。チームとしての成長ぶりは、平岡和徳総監督が「選手は自信を掴んできている。佐藤、川副と寺岡(潤一郎)、ボランチの薬師田(澪)、前の森田。この辺の屋台骨がだいぶ、たくましくなってきた」と自信を覗かせるほどだ。

「大津高は全国制覇をしたことがないので、達成したい」

 常日頃から森田が口にしてきた通り、選手権での目標は日本一しかない。低調なスタートを切った今年の代は、チームが掲げる「進化するブルー軍団」とのキャッチコピー通り進化を続け、大津の負の伝統である勝負弱さを振り払いつつある。成長の跡をきっちり示すことができれば、今回の選手権で新たな歴史を刻んだとしても不思議ではない。

取材・文=森田将義



By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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