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【アジア最前線:タイ #14】延期の末に開幕を迎えたタイリーグ。優勝争いの行方は?

2021.09.08

[写真]=Getty Images

2度の延期の末、タイリーグの新シーズンが開幕

 9月3日、タイリーグの新シーズンがようやく開幕を迎えた。もともとは7月31日に開幕される予定となっていたが、新型コロナウイルスの感染拡大がタイでも深刻な状況となり、8月13日に延期されることが決定。当初はそれ以上の延期はないとの姿勢を見せていたが、一時は1日の新規感染者数が2万人を超えるなど感染拡大が収まる気配がなかったため、開幕は9月までずれ込むこととなってしまった。

 どうにか開幕にはこぎ着けたものの、バンコクなど新型コロナウイルスの重点管理地域での試合は無観客での開催となり、有観客の地域でも25パーセント程度に動員が制限されている状況だ。2020年シーズンとして開幕した昨季は、シーズン途中にコロナ禍による長期中断を余儀なくされたことで、2020ー21シーズンとして開催。今後もそのまま年をまたいでシーズンが開催されていくことになり、開幕した新シーズンは2021ー22シーズンとなる。

 9月3日のリーグ開幕を前に、今月1日には昨シーズンのリーグ覇者とカップ戦覇者がタイトルを争うタイランドチャンピオンズカップが開催された。試合はリーグ王者のBGパトゥム・ユナイテッドが新加入の松村亮の決勝ゴールで、チェンライ・ユナイテッドに1ー0で勝利。BGパトゥム・ユナイテッドが今季最初のタイトルを手にした。AFCチャンピオンズリーグでも決勝トーナメント進出を果たしている昨季王者は、今季も優勝争いの軸となりそうだ。

 だが、連覇を狙う王者に立ちはだかる対抗馬も多い。昨シーズンはBGパトゥム・ユナイテッドが24勝5分け1敗という圧倒的な戦績でリーグ初制覇を果たしたが、今季も同様の展開となるとは限らないだろう。王座奪還を目指すブリーラム・ユナイテッドを筆頭に悲願のリーグ制覇を目指すポートFCやバンコク・ユナイテッド、2年ぶりの優勝を狙うチェンライ・ユナイテッドなど王座を射程圏内に捉えるクラブは少なくない。

ステップアップ移籍の松村亮、2年目の石井正忠監督に注目

 タイリーグといえば多くの日本人選手や指導者が活躍するリーグとしても知られる。コロナ禍の影響で国外からの移籍が限定的になっている面もあるが、それでも今シーズンも1部から3部までで計30名ほどの日本人選手がタイを舞台に戦う。

 1部に所属する日本国籍保持者は、MF松村亮(BGパトゥム・ユナイテッド)、FWエスクデロ競飛王(チェンマイ・ユナイテッド)、MF小野悠斗、MF坂井大将(サムットプラカーン・シティ)、フィリピン人とのハーフでフィリピン代表のDF佐藤大介(スパンブリーFC)の5選手。昨季王者のBGパトゥム・ユナイテッドに加入した松村は、2019年にAC長野パルセイロからタイに渡り、2部で2シーズン計26ゴールを挙げてステップアップ移籍を果たした。

 指揮官に目を向けると1部には石井正忠監督(サムットプラカーン・シティ)と滝雅美監督(プラチュワップFC)、2部にはラヨーンFCの神戸清雄監督とネイビーFCの加藤光男監督がおり、1部と2部で計4名の日本人監督が指揮を執る。滝氏と神戸氏はタイリーグで複数のクラブを率いてきた経歴を持ち、加藤氏も監督就任は初ながらチョンブリーFCやサムットプラカーン・シティなどでコーチを務めた実績がある。

 昨シーズンからサムットプラカーン・シティの監督を務める石井監督も、続投で2シーズン目を迎える。1年目は6位でリーグを終えたが右肩上がりのシーズンで、12月にはリーグ月間最優秀監督に選出されるなどその手腕はタイでも評価された。オフシーズンにはタイ代表のMFピーラドン・チャムラッサミーがブリーラム・ユナイテッドへ移籍するなど痛い主力流出もあったが、目標のACL出場権獲得を狙う2年目の指揮に注目が集まる。

 通常のリーグ運営が行えるようになるまでにはまだ時間がかかりそうだが、タイリーグは日本の季節で言うところの「秋春制」へと本格的に移行した。タイ人選手のJリーグへの移籍に関してなど、日本とタイのシーズン期間がずれることで、今後どのような変化が生じていくのかも注目されるところだ。

文=本多辰成

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