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【アジア最前線:中国 #14】山東泰山の優勝で幕を閉じたCSL。異例ずくめのシーズンを振り返る

2022.01.11

[写真]=Getty Images

後続に差をつけて早々に山東泰山が戴冠

 2021年シーズンの中国スーパーリーグ(CSL)が1月4日に幕を閉じ、山東泰山が11年ぶりの優勝を飾った。

 まさに、異例ずくめのシーズンだった。新型コロナウイルスの影響による観客制限やスケジュール変更にとどまらず、中国代表のワールドカップ予選のために、約4カ月間にわたってリーグが中断。12月中旬に再開したものの、残り8節を年内に消化することはできず、CSL史上初めて、年をまたいで決着がつけられることとなった。

 スケジュールも変則的なものとなり、8月までにファーストステージが行われた。グループAで首位に立ったのは山東。過去に3度リーグを制しているクラブは昨季、ベスト8で敗れており(2020シーズンは決勝トーナメントを開催)、雪辱を誓った今季、後続に勝ち点3差をつけて、首位でシーズンを折り返した。

 前半戦の上位8チームによって争われたチャンピオンシップステージが始まると、山東は河北FCに5ー0と圧勝する最高のスタートを切る。翌節は昨季の8強で敗れた北京国安と対戦し、後半に先制されながらもソン・ジュンホのゴールで追いつき、最後は後半アディショナルタイムにモイゼスのアシストからジャジソンが決めて、2ー1の逆転勝利を収めた。

 第3節は山東を追う2位の上海上港との直接対決となり、ここでもジャジソンとソン・ジュンホが得点して2ー0とライバルに勝利。この時点で、山東は後続に勝ち点8差をつけ、リーグ優勝は時間の問題に。そして続く長春亜泰戦を2ー1、河北戦を2ー0でモノにして5連勝を飾ると、3節を残して、早々にリーグ優勝を決めたのだった。

広州FCにとっては苦難続きのシーズンに

 2011年から2019年までの9シーズンで8度の優勝を誇った広州FCにとっては、非常に困難なシーズンだった。ファーストステージこそ、グループAで山東に続く2位で終えたものの、チャンピオンシップステージを迎える頃には、親会社の恒大グループの経営悪化が明るみに。チームの運営費が滞るようになり、選手たちは練習着を自宅に持ち帰って自ら洗濯する必要に迫られていたという。また、ファビオ・カンナバーロ監督と4人の帰化選手たちは、給料の未払いを懸念してチームを去った。後任には、中国サッカー界の生けるレジェンド、チャン・チーがプレイング・マネジャーに。41歳の暫定監督は自らも2試合に出場しながら指揮を執り、選手たちは無給で試合に出場した。

 全員が中国人選手で構成されるようになった広州は、大崩れも予想されたが、しぶとく戦い抜き、チャンピオンシップステージを4勝2分け2敗で終えて3位に。苦境のなか、AFCチャンピオンズリーグの出場権を獲得したことは称えられるべきだが、来季、実際にアジア王者を目指せるか(そしてクラブが存続できるか)は、不透明なままだ。

 広州の王朝が崩れた今、上海には王座奪還が求められていた。2018年のリーグ王者には、“CSLに残る最後のビッグネーム”であるオスカルや、オーストラリアからようやく戻ってきたアーロン・ムーイが名を連ねていたが、山東との直接対決での敗北が分水嶺となった。

 スラベン・ビリッチ監督が率いる北京では、中断中に昨季のリーグ得点王セドリック・バカンブがチームを去り、最後までその穴を埋め切れなかった。チャンピオンシップステージの第3節では、広州シティに0ー5の大敗を喫し、クラブワースト記録を更新。最終的に2勝3分け3敗の5位となり、ビリッチ監督の未来も危ぶまれている。もっとも、このクロアチア人指揮官には、トルコ方面から高待遇のオファーも届いているようだが。

 対照的に、昇格組の長春はフレッシュな驚きを提供した。現在35歳のブラジル人ストライカー、ジュニオール・ネグラオンが計14ゴールで得点王に輝き、安定した経営基盤と運営体制によって、ポジティブなシーズンを送った。2007年のCSL王者は来季、3度目のACLグループステージを目指し、プレーオフに挑む。それを達成すれば、次は初の決勝トーナメントに照準を合わせることになる。

 紆余曲折を経て、CSLの2021シーズンが終わった。今はこの苦しいシーズンを戦い抜いた選手や指導者たちを称えたい。

文=Ming Zhao(趙明)
翻訳=井川洋一

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