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柳瀬楓菜、なでしこジャパン初参加で得た経験を広島に還元へ「『やっぱり頼りになるな』って思ってもらえるぐらい大きな存在になりたい」

2026.10.27
柳瀬楓菜、なでしこジャパン初参加で得た経験を広島に還元へ「『やっぱり頼りになるな』って思ってもらえるぐらい大きな存在になりたい」

広島MF柳瀬楓菜[写真]=WE LEAGUE

 日本代表から帰ってきた23番が本来の輝きを取り戻してきた。サンフレッチェ広島レジーナのMF柳瀬楓菜は25日にホームで行われたWEリーグ第6節のAC長野パルセイロ・レディース戦に先発出場し、後半アディショナルタイムの91分までプレー。代表活動から復帰後の2試合は調子を落としていたが、持ち前のパフォーマンスを発揮して1-0の勝利に貢献した。

 24歳の柳瀬は昨シーズンに飛躍を遂げ、アジア競技大会でなでしこジャパン初招集をつかんだ。2025/26シーズンは豊富な運動量や球際の強さを生かした圧倒的なパフォーマンスに加えて、ゴールに絡む姿勢も増してWEリーグ公式戦で自己最多の計6ゴールを記録。「WEリーグ 優秀選手賞」にも初選出を果たした。

 初めて代表活動に参加した柳瀬は、アジア競技大会で4試合に出場。タイ代表との初戦に先発出場して日本代表デビューを飾り、朝鮮民主主義人民共和国代表との決勝ではスタメンでピッチに立ち、金メダルの獲得に貢献した。約3週間の活動を終えて「すごい濃い時間でした」と15日の練習後に振り返った。

「日の丸を背負ってピッチに立つ経験は簡単にはできることじゃないので、そのときにいろんな感情が湧いたし、自分自身の弱さや課題も明確になったと思います」

 今回のアジア競技大会に臨んだなでしこジャパンは海外組の主力が不在で、ほぼWEリーグ組で構成されたチームで戦ったが、柳瀬は「もっと上に行くには今の自分じゃ物足りない」と改めて自分の力不足を痛感していた。

「いろんな選手が集まる中にポンって入った時に、自分の強みってなんだろうっていうところから考えていました。レジーナにいたら周りの選手が助けてくれたり、自分が持ってない良さを周りの選手が出したりして、個よりはチームとしてやってきたので、そういった環境から出て、(代表に)ポンって入った時に自分自身が1人で何ができるのかっていうのは難しい課題でした」

 日の丸を背負ったことで向き合うのは、「個でどれだけ違いを見せられるか」という課題。そこに対して強い向上心を胸に抱いて広島に帰ってきた。

 柳瀬と仲がいいDF藤生菜摘は15日の練習後、「人間的には何も変わってないです」と笑いつつ、日本代表として戦った仲間の頼もしさを口にしていた。

「サッカーではやっぱり一回り大きくなったというか、背中も大きくなったと思います。自主練のパターンも増えていて、『見て見て』っていう感じで言ってきて楽しそうです。本人は『3週間もいて変わんなかったらやばいだろ』って言ってました(笑)」(藤生)

 広島は11日に行われたWEリーグクラシエカップ第6節の日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦から代表組が復帰。だが、試合は1-3で敗れ、先発で71分までプレーした柳瀬も自分の持ち味を発揮しきれず悔しさを滲ませていた。

「やっぱり戦うところや走り負けないところは自分自身が特に足りなかったと思いました。代表帰りでコンディションとかいろいろあった中でもピッチに立たせてもらったのに、自分はすごい不甲斐ないプレーだったので、そこはしっかり反省しないといけない」

 18日に行われた前節の東京NB戦も一時逆転と奮闘したが、2-3で競り負けた。チーム合流後に2連敗を味わった柳瀬は、「体というより精神的なきつさは残っています」とアジア競技大会からの疲労感も口にはしていたが、「でも、それを言い訳にしたくないので頑張ります」と気合を入れ直していた。

 それから1週間後、再びホームで迎えた今節の長野戦では本来の輝きが戻ってきた。「自分でも頭を整理して試合に臨めました」という背番号23のボランチは、ボール回収や球際のバトルで“らしさ”を発揮した。

「今までチームとしてもやってきた球際やセカンドボールに行くところは意識して入りましたし、ボールに関わり続けるからこそ自分の良さが出ると思っているので、ボールを受けに行ったり、パスを出した後の動きだったり、そういう部分はより意識して今日の試合は臨みました」

 積極的にボールに絡んで攻撃を活性化し、ペナルティエリア内に入れば思いきりよく足を振り抜いて得点への意欲も示した。中盤では果敢に相手をかわして自ら持ち運ぶ推進力も光った。

「今日の相手がマンツーマンで来ていたので、自分が相手を1人外せれば必然的に数的有利になるのはやりながら感じていました。相手が来る前に周りを見て、あまりプレッシャーがなかったらターンして持ち運ぶことは意識していました」

 前半の24分には左サイドでボールを持つと、右サイドでフリーのMF瀧澤千聖に大胆かつ正確なサイドチェンジも披露。最近上がってきた展開力も、代表から帰ってきて磨きがかかっている。藤生が15日の練習後に「逆サイドに展開するロングボールは質が上がったというか、そんなに飛ぶようになったんだって感じました」と代表帰りのチームメイトの成長に感心していたとおりだ。

 日の丸を背負って高めた「個で違いを見せる」という意識も表現した柳瀬は、「ピッチで違いを見せることが求められているので、今日は前節よりチームの助けになれたと思います」と復調を印象づけ、代表帰り3試合目で白星をサポーターに届けた。

「ベレーザとの2連戦で個人的にはすごく学ぶことがありました。質の部分は圧倒的な差があるなと思ったので、それがあったからこその今日の勝ちだと思っています。ただ、もっと点が取れた試合だったので、見に来てくれる人たちのためにも、もっともっとゴールは奪いたいです」

 本来のパフォーマンスは戻ってきたが、広島の23番が示してきた基準はもっと高いところにある。赤井秀一監督も試合後の会見で、「まだまだ物足りないです」と期待を込めた笑みを見せてから語った。

「彼女なりにいろんなことを経験してきて、考えすぎているのかなっていう感じもしますけど、今日のパフォーマンスで言うと、だいぶ代表に行く前に戻ってきたと思います。彼女の持ち味ある機動力や攻撃に厚みを持って出ていく部分、球際の強さは、帰ってきてから少し影を潜めていたので、彼女自身も自分で感じるものがあって、もがいている部分もあったと思うけど、今日はだいぶ良くなったと思います」(赤井監督)

 柳瀬自身も日本代表を経験して帰ってきて、「少しでも成長した姿を見せたいし、『やっぱり頼りになるな』って思ってもらえるぐらい大きな存在になりたいです」と力強く語っていた。その視線は上を向いている。

「日頃の練習からそういった姿を見せないといけないし、代表で学んだ強度のところはチームに還元していきたいです。このチームでタイトルを取りたいので、そういう足りない部分を自分自身が練習や試合でしっかり表現して、チーム全体の基準を上げていきたいです」

 アジアとの戦いを経験した頼もしい柳瀬がピッチに帰ってきた。ますます大きくなるその存在が広島を前進させる。

取材・文=湊昂大

By 湊昂大

Kota Minato イギリス大学留学後、『サッカーキング』での勤務を経てドイツに移住して取材活動を行う。2021年に帰国し、地元の広島でスポーツの取材を中心に活動中。

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