広島FW神千菜 [写真]=WE LEAGUE
ホーム開幕戦の開始10分、背番号17が右サイドでボールを受けて前を向く。相手DFもついていたが、ボールを取られる感覚はない。ペナルティエリア右の難しい位置だが、自ら積極的にシュートを打ち切った。ストライカー・神谷千菜の得点への強い意欲が光った。
「なかなかゴールに向かうことができていなかったので、自分の中で1回リズムを作るという意味でも、足を振りたいと思って強引に振りに行きました。監督からも『ゴール前はもう自分でやっていい』と言われていますし、もう周りじゃなくて自分が点を取るという意識でやっています」
今年1月にサンフレッチェ広島レジーナに加入した神谷は、空中戦の強さや抜群のシュート能力を誇る点取り屋であり、攻守に体を張れる前線の起点としても欠かせない存在だ。献身性に溢れる25歳はチームの勝利を何より考えているが、ただ新シーズンはストライカーとしての覚悟が違う。
8月29日、広島はWEリーグ第2節でRB大宮アルディージャWOMENをホームのエディオンピースウイング広島に迎えて2-0で勝利。フル出場した神谷は1ゴール1アシストの活躍で今季初白星に大きく貢献した。
40分、神谷が相手DFのバックパスに反応してGKへとプレッシャーをかけに行った。一度スピードを落としつつ、GKがトラップした瞬間に詰め寄って泥臭くボールをカット。このセカンドボールを中嶋淑乃が左足ダイレクトで無人のゴールに流し込んだ。
先制点をお膳立てした神谷は、「自分は足が速くないので最初はゆっくり行って、どこかでギュッと(スピードを)上げようとは思っていました。相手のGKがちょんってボールを出した時に行こうとは思っていたので、そのタイミングでうまくボールに触れられて、それが結果的に淑乃さんのゴールにつながってよかったです」と狙いどおりのプレーに胸を張った。
広島は先制後も試合を優位に進めたが、前節と同じようにチャンスを決めきれないシーンが続いた。それでも、80分に右CKでMF小川愛がピンポイントのクロスを送ると、神谷が打点の高い豪快なヘディングシュートを叩き込んで追加点を奪った。
「相手のマークが変わって曖昧になっていた感じもあったので、あとは自分の強みの高さのところで、いいボールが来たら勝負しようと思っていました。その中で愛さんがめちゃくちゃいいボールをくれたので、もう触るだけでした」
8,080人が入ったホーム開幕戦で今季初得点を決めた神谷は、ゴール裏に駆け寄って気持ちのこもったガッツポーズでサポーターと喜びを分かち合った。「やっぱりレジーナのファン・サポーターのみなさんのすごさは感じましたし、その中で得点できたのはめちゃくちゃ気持ち良かったです。後半はゴール裏にサポーターの方々がいたので、ちょっと調子に乗っちゃいました」と笑顔を見せた。
勝利を決定づける追加点だった。広島は前節の開幕戦でも先制したが、再三のチャンスを決めきれないまま逆転負け。勝ち切るためには複数得点という課題が明確だった。神谷も開幕戦後、「もっと自分が成長してチームを勝たせられる点を取れるようにならないといけない。今まではあまりそういうことを考えるタイプじゃなかったけど、今年は自分が点を取ることにもフォーカスしてやっていきたいです」と悔しさとともにストライカーの自覚を口にしていた。
そもそも半年前の昨シーズン途中で加入した直後は、「フォワードであるからには得点にはこだわりたいけど、自分が決めなくても味方の選手が決められるような動きとか、周りも生かしつつできればいいかなと思います」とあくまで自分の得点よりもチームを優先するような発言をしていた。
それが今季は「得点力不足」というチームの課題に対して、ストライカーとしての責任感とプライドに火をつけている。
「自分がこのチームに来たのは得点力を上げることを求められているから。今シーズンは最初からこのチームの一員として戦えるし、優勝できるチームだと思うので、そういうのを踏まえて、自分が点を取らないといけないという気持ちになっています」
チームが掲げる悲願のWEリーグ初優勝という目標に向けて、神谷の躍動は欠かせない。「フォワードとして得点にこだわりながら優勝に導ける存在になりたいです」。覚悟を決めたストライカーがゴール量産への口火を切った。
取材・文=湊昂大
By 湊昂大