広島の10番を背負う瀧澤千聖 [写真]=WE LEAGUE
約1年ぶりに1番、10番、11番がピッチにそろった。サンフレッチェ広島レジーナは18日、WEリーグ第4節でエディオンピースウイング広島(Eピース)に日テレ・東京ヴェルディベレーザを迎えて対戦。大怪我から復活した背番号10のMF瀧澤千聖がEピース初得点を含む2ゴールを挙げたが、試合は2-3で競り負けた。
広島は1番のGK木稲瑠那、10番の瀧澤、11番の中嶋淑乃の3選手がそろってスタメンに入った。キックオフ直前には3人が集まって声をかけ合ってからチームの円陣に向かう。広島サポーターにはお馴染みの光景が戻ってきた。
「もともと仲良い3人組なので、試合前に気合を入れるために集まってやっています」と木稲が3人のルーティンを説明。具体的に何をしているかは「秘密です」と中嶋は笑う。
3人が同時にピッチに立ったのは昨年9月6日のRB大宮アルディージャWOMEN戦以来だった。この試合で瀧澤は右ひざ前十字じん帯損傷と外側半月板損傷の大怪我を負って長期離脱。約1年間のリハビリを乗り越えて、9月12日のアルビレックス新潟レディース戦に途中出場して復帰を果たしていた。
その後も瀧澤はコンスタントに試合に出続け、9月23日のセレッソ大阪ヤンマーレディース戦ではスタメンに復帰して木稲と同じピッチに立ち、9月27日のINAC神戸レオネッサ戦では復帰後初ゴールを決めた。その間、中嶋はアジア競技大会に臨むなでしこジャパンに招集され、9月10日から10月2日までチームを離脱。金メダルを獲得した大会を終えて、10月11日の東京NB戦からチームに合流していた。木稲も足の怪我で直近2試合を欠場していたが、今節復帰したことで、ついに仲良し3人がそろってスタメンに名を連ねた。
瀧澤は、「1年ぶりに一緒にピッチに立てましたし、今日の朝の段階から2人とも『やっと3人そろったね』って言っていたので、そういうのもうれしかったです」と笑顔。木稲は、「シノが代表に行っていた時に1回、チセが(ルーティンを)忘れて走っていっちゃったんですよ。だから今日は2人に『今日3人だからあるよ』って伝えて、1年ぶりにやっとできた感じです」と明かし、中嶋も「やっとそろったのでうれしいです」と共闘を喜んだ。
試合は広島が先に失点。14分、右サイドの瀧澤が中央にパスを送ると、味方に合わずに中途半端なボールを相手にカットされ、最後はFW小林里歌子にペナルティエリア前から鮮やかなループシュートを沈められた。先制を許しはしたが、「自分のせいで失点してしまったので、チャンスがあればもうなにがなんでも点を取りに行こうと思っていました」と燃えていた10番が躍動した。
45分、左サイドで広島が攻撃に転じると、中嶋がボールを持った瞬間に逆サイドの瀧澤が狙っていた前線のスペースへと走り出した。瀧澤のパスを呼ぶ声が聞こえていた中嶋は、「ボールを持って顔を上げたときに、チセがいい動き出しをしているのが見えたので出しました」と相手の裏へ絶妙なスルーパスを送った。
「ここに出してって思ったところに、いい回転といいスピードで出してくれました」。最高のパスを受けた瀧澤はペナルティエリア内に入り、切り返しで1人かわして左足シュート。東京NBの強いプレッシャーを受けていた中で、広島の10番と11番のコンビが一瞬の隙を突いて鮮やかな同点ゴールを決めた。
瀧澤は、「久しぶりに中嶋選手とプレーしたけど、パスもめちゃめちゃ良かったですし、『ありがとう』って感じでしたし、『わかってる』って思いました」と以心伝心を喜び、「ゴール前も思った以上に見えていて冷静に判断できました。練習でもやっていたシュートだったので、試合でできてよかったですし、自分のコンディション的にもああいうプレーが自然にできるようになってきたのはすごくよかったです」と振り返った。
強豪相手の貴重な同点弾は、瀧澤にとってEピース初得点となった。「めちゃめちゃうれしかったですし、サポーターのみなさんが喜んでくれるのがすごくうれしかったです」と紫のサポーターの前で気持ちが入ったガッツポーズを見せ、「ゴール裏に対してアクションをするとやっぱり喜んでくれますし、自分たちもファンのみなさんの喜ぶ表情を見るためにやっているので、一緒に共感したい思いでした」と話した。
さらに55分には、MF小川愛のスルーパスで左サイドを抜け出した中嶋がクロスを上げると、ファーのFW上野真実がこぼれ球に反応。ポストに弾かれたボールを瀧澤が押し込み、2点目を挙げてチームを逆転へと導いた。「クロスに対して何人も入っていくのは練習でもやっていましたし、逆サイドの選手はクロスに対してファーサイドをしっかり詰めて、こぼれ球にもいけるようにって言われていたので、それをやりきりました」と胸を張った。
大怪我からの完全復活を示す2得点となった。70分までプレーした25歳のアタッカーは、「自分の思っているプレーに自分の体が合ってくるようになってきましたし、自分が思った以上に動けて、みんなとも噛み合ってきました」と調子も上がっていて、「だんだん足を気にする時間よりも、勝ちたいと思う時間が増えてきました」と自身の復調よりも勝利に目を向ける段階に入った。
そんな背番号10の活躍に中嶋は、「チセが復帰して久しぶりに一緒にプレーできてうれしかったし、これからもたくさん点をとってくれると思います」とさらなる期待を込める。木稲は、「本当にさすがの一言ですし、チセの得点はとてもうれしかったです」と喜びつつも、「それだけに勝ち切ってあげたかったです」と相手の反撃を抑えきれなかった悔しさを滲ませた。
広島は瀧澤の2得点で一時逆転してさらに勢いづいたが、チャンスで得点を決めきれず。逆にMF北村菜々美とFW樋渡百花の投入でより前に出てきた東京NBの圧力に屈し75分と89分に失点。背番号10の活躍を生かしきれずに2-3で競り負けた。
木稲は、「2-1で終わっていれば、もしくは自分たちが点を取って3-1で終わっていれば、(瀧澤が)ヒーローだったと思います。彼女をヒーローにするのも自分の役割だったので、そこは課題だと思います」と悔やみ、瀧澤は、「2人(中嶋と木稲)が今まで頑張ってくれていたのを見てきたので、今度は自分が助けられるように頑張りたいです」とさらなる活躍を誓った。
広島は東京NBに敗れて今季リーグ戦2勝2敗となった。まだシーズン序盤だが、チームでは右肩の手術を受けたFW神谷千菜をはじめ怪我人が増えてきた。そんな難しい状況でも「自分が先導してやっていきたい」と張り切る瀧澤。次節は25日に古巣のAC長野パルセイロ・レディースをホームに迎えての一戦。「まだ古巣相手にゴールを決めていないので頑張ります」と前を向いた。
取材・文=湊昂大
By 湊昂大