日本代表の上田綺世 [写真]=Getty Images
5度目のアジア制覇を目指す日本代表にとって、31日に行われるバーレーン戦からスタートする決勝トーナメントからが本当の勝負。ここからファイナルまで11日間で4試合。超過密日程を26人の総合力で勝ち切っていくことになる。
ここからは一発勝負。延長戦やPK戦含め、何が起きるか予想もつかない戦いになる。日本としてはグループステージ3試合で5失点という守備をまずは改善し、手堅い守りを取り戻すことが先決だろう。
その上で、やはり早い時間帯に先制点を奪いたいところ。その得点源として大きな期待がかかるのが、ここまで3ゴールを挙げているFW上田綺世だ。
「僕はこの大会で何点取ろうとか、そういうのはないので」と大会開幕直前に謙虚な物言いを見せていた上田。その傍らで、「FWは点を取る職業。GKがシュートを止めるのと同じだと思っている。FWが点を取ったら、もちろんチームが盛り上がるし、それがFWの良さでもあるし、求められること。必要なことだとも思うので、常に意識していきたい」とストライカーとしてのプライドも口にしていた。
グループステージでピッチに立った場面では、その矜持をプレーで体現。ベトナム戦でダメ押しとなる4点目を叩き出し、日本の命運を左右したインドネシア戦では開始早々のPKと後半早い時間の2点目で勝利を引き寄せる大仕事を披露。ハットトリックかと思われた3点目はオウンゴールと判断されて「ちょっと厳しいですよね」と本人も苦笑いしたが、ここまで“ほぼ4ゴール”。目覚ましい数字を残し、先々の重要局面に弾みをつけた。
「うまくいかないこともありましたけど、3試合目にある程度、改善できて、いい流れで決勝トーナメントを迎えられている。個人的にも(コンディションと連携が)合ってきていますし、成長できたと思います」と上田自身も手応えを口にした。
インドネシア戦からバーレーン戦まで中6日。日本代表も25日と28日にオフを挟むという変則的な活動だったが、フェイエノールトで試合3日前のオフを日常的にこなしている彼にしてみれば“通常運転”だ。堂安律を筆頭にヘアスタイルをチェンジして気合を入れる選手も何人かいたが、上田はここまでの流れを維持して決戦に挑むという。
バーレーンは4-2-3-1か4-3-3をベース。引いて守ってカウンターという典型的な中東スタイルのサッカーを得意としている。「しっかり守ってくるというのが感想の一つですね。あとは、対人にはガッツリ、ハーフスペースとかでボールを受ける時に来ているなという印象です。でも、韓国戦みたいに(日本が)ボールを持てるところがあると思うし、サイドで数的優位を作って攻撃を仕掛けられればいいのかなと。奪われた瞬間に前で奪って、二次攻撃を仕掛けることができれば、それもチャンスになると思います」と南野拓実も語っていた。
そういう形を想定し、上田が先発した場合をイメージすると、相手CB陣らに激しいマークを受けるだろう。そこでしっかりと体を張って味方を押し上げられる時間を作ることは大きな仕事の一つになりそうだ。
そのうえで、南野が言うように、サイドから仕掛けて中央に飛び込んだり、即時奪回からスピーディーな攻めでゴールに突き進めれば、上田がさらにゴール数を上積みできる可能性は少なくない。
1月29日時点で最多ゴール数は日本から2得点を奪ったイラクのアイマン・フサインの6点。上田にはここから一気にギアを上げ、抜き去ってほしい。
過去のアジアカップを見ると、日本人で得点王に輝いたのは、2007年大会で4ゴールをマークした高原直泰の1人だけ。その高原は2000年大会でも5ゴールを挙げており、日本人屈指の実績を誇っている。彼と並ぶ5点という数字を記録しているのは、同じ2000年大会の西澤明訓と2019年大会の大迫勇也で、上田が彼らの領域を超えていけば、森保ジャパンには確固たる得点源が生まれる。それは2026年のワールドカップに向けても朗報だ。そうなるように、彼にはギラギラ感を前面に押し出して、ゴールに突き進んでほしい。
「どちらにしろ、得点やチャンスメイクというところが一番価値はあるし、求められていると思うので、そこは常に意識したいです。FIFAワールドカップカタール2022の1年前に比べたら、ほぼワンシーズンをまたそこからやっていますし、環境も変わって、個人的にサッカー観もそうだし、成長できている実感はあります」
静かな語り口の中にも自信をのぞかせる上田。そういったマインドの変化は非常に頼もしい。彼が絶対的エースに上り詰める日が今大会期間中に訪れれば理想的。まずはバーレーンを撃破する豪快な一撃をお見舞いしてほしい。
取材・文=元川悦子
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By 元川悦子