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「立ち位置は考えていない」「いつ弾かれてもおかしくない」…王者を零封して挑む“激戦区”のレギュラー争い

2019.03.19

[写真]=Getty Images

 アデミウソンが中央からドリブルで持ち上がり、左の倉田秋へと展開。その背後を藤春廣輝が駆け上がってグラウンダーのマイナスクロスを送った瞬間、ファーサイドで待ち構えていた三浦弦太は「上のボールが来るかと思った」と面食らいつつも、冷静に右足を振り抜いた。

 この日の三浦は、13日のYBCルヴァンカップ(松本山雅戦)に続いて右SBで起用された。開幕から失点を重ねて思うように勝ち切れず、この日も川崎フロンターレに一方的に押し込まれた。それでも、ガンバ大阪は三浦の決勝弾によって1-0で勝利。今季J1初のクリーンシートで勝利を手にした。

「普段、あんなシーンはなかなかないんで、緊張がありましたけど、とにかく入ってよかった。チームとして失点が続いていて、DFとしてはそこがずっと気になっていたんで、どうにか体を張ってゼロで抑える意識は強かった。攻撃的なフロンターレを零封できたのはすごい自信につながる。このいい流れを続けて行けたらいいと思います」(三浦)

三浦弦太は川崎戦で決勝ゴールを挙げ、チームの無失点勝利に貢献した [写真]=Getty Images

 無失点に強いこだわりを持っていたのは、ゴールマウスを死守する東口順昭も同じだった。

「今シーズン始まってからクリーンシートっていうのがなかなかなかったんで、今は安心感の方が強いですね。相手のボールにプレッシャーがかかっているので、気持ちよくシュートを振らせていないし、今日は連携して守れていた。もっともっと改善点はありますけど、まあいい試合やったんじゃないかなと思います」

 第4節を消化し、9位と上位浮上への兆しが見えてきた。そして、2人はガンバでの戦いを一時中断し、日本代表に合流。コロンビア、ボリビアとの2連戦に挑む。1~2月に開催された「AFCアジアカップUAE2019」では、三浦が1試合出場、東口は出番なしに終わった。両選手のポジションは多くの候補がひしめく激戦区だが、6月に開催されるコパ・アメリア、さらに秋から始まる2022年カタール・ワールドカップアジア予選を見据え、今回は是が非でもアピールをしたいところだろう。

激戦区でのポジション争いにも「自分の良さを出す」

[写真]=Getty Images


 今回は三浦とともに昌子源(トゥールーズ)、アジアカップで定位置を確保した20歳の冨安健洋(シント・トロイデン)、急成長中の畠中慎之輔(横浜F・マリノス)の4人がCBとして招集された。いずれも20代の若い面々が揃ったが、吉田麻也(サウサンプトン)や槙野智章(浦和レッズ)といった経験豊富なベテランも後に控えている。そんな状況でも、三浦が考えていることは「自分の良さを出すこと」だ。

「自分としては立ち位置が上だ下だというのは考えていないですし、練習や毎回の試合でいい形のパフォーマンスを出せるかどうかだと思う。限られたチャンスの中で自分の良さを出すことにこだわり、チームを勝たせられるようにしていきたい」

 加えて、右SBとして得た経験も活かしたいと言う。CBがどういうパスを出せばSBが効果的に動けるか、逆にSBのポジショニングによってCBはどうカバーリングにするべきか。最終ラインの異なる2つのポジションを担うことで、初めて理解できる部分がある。

「相手との1対1の対応も違うし、サイドに入った僕自身がつり出された時の対応の仕方はいい勉強になったと思います。今日のゴール、攻撃参加も含めてCBにはないところなんで、それも楽しみながら生かしていけたらいいですね」

「本当に悔しかった」アジアカップを乗り越えて

[写真]=Getty Images


 一方の東口はこの3月シリーズを“背水の陣”と捉えている。というのも、正守護神として戦うつもりだったアジアカップで権田修一(ポルティモネンセ)にレギュラーを奪われた挙句、腰を痛めるアクシデントに見舞われ、一度もピッチに立てないまま帰国を余儀なくされたからだ。

 当の本人も、「僕の年齢(32歳)ではいつ弾かれてもおかしくないんで、思い切ってやるしかないない。アジアカップは本当に悔しかったですけど、またこうやってチャンスが巡ってきたので、この川崎戦の勝利を生かしてやっていきたいと思ってます」とチームの勢いを力に変えようと意気込んでいる。

 新天地に移籍したばかりの権田は招集を見送られた。その傍らでロシア組の若手・中村航輔(柏レイソル)が代表に復帰し、シュミット・ダニエル(ベガルタ仙台)と三つ巴の戦いで1つの出場枠を争う。

「たぶん2人しか試合には出られないと思う」と東口が言うように、3人に出場機会が与えられるとは考えにくい。もちろん、代表でのパフォーマンスが全てではないが、今後の正守護神争いに生き残るためにも、豊富な経験を生かして存在感を示したい。

 ガンバ大阪というクラブからは宮本恒靖監督、遠藤保仁、今野泰幸といった先輩たちに象徴される通り、常に代表の主力が送り出されてきた。その良き伝統と歴史を引き継ぐべく、彼ら2人には今一度、奮起を求めたい。

文=元川悦子

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By 元川悦子

94年からサッカーを取材し続けるアグレッシブなサッカーライター。W杯は94年アメリカ大会から毎大会取材しており、普段はJリーグ、日本代表などを精力的に取材。

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