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【高松商】“憧れの学校”でついに選手権へ コロナ禍で繋がりはより強固に<第100回高校選手権>

2021.12.30

4年ぶりとなる選手権に臨む高松商 [写真]=森田将義

 今年の高松商には、県内で評価される選手が多い。筆頭は、高校1年生の時に香川県国体選抜U-16の一員として県勢初となる国体の4強入りに貢献したMF與田拓海(3年)。元々はカマタマーレ讃岐U-15に所属し、U-18への昇格を果たせたが、「選手権に出たかったので高校サッカーを選びました」。主将のDF佐藤海七多(3年)も高松商に憧れていた選手だ。3歳上の優多郎もキャプテンを務め、3年次にはインターハイに出場している。他にも、今年の代には前回選手権出場を果たした4年前のチームに憧れ、門を叩いた選手が多い。先輩たちと同じように選手権の舞台で活躍するのが、今年の代の夢であり、憧れだった。

 だが、現実はそう甘くない。彼らが入学した初年度の2019年度は、まさかの県予選初戦敗退。翌2020年、県ベスト8で涙を飲んだ。「能力的に高い選手ばかりだったので、正直全国でやってみたかったという悔しさは今でも持っている」と振り返るのは、與田だ。悪い流れは自分たちの代になっても断ち切れず、1月に行われた県の新人戦は初戦で敗退。前後に実施した練習試合でも、連敗が続いた。「この数年間なかなか勝てなかったけど、今年の3年生は1年生の時から力があった。でも、今年の新人戦は1回戦負けで、自分たちを過信していた。そうしたメンタル面が変われば、やれば必ずできるとは思っていました」(川原寅之亮監督)。

 転機となったのは、夏休み期間だ。新型コロナウイルスの感染拡大により、県内の高校生は部活動の制限がかかった。例年行っている県外遠征どころか練習試合すらもできず、校内での練習が続いたが、いつも以上にコミュニケーションをとる機会が多くなったのは収穫だったかもしれない。「日常生活の部分で、厳しく言うだけではなく、コミュニケーションをしっかり取ったりした。特に今年はコロナだったので、自然とそういう時間が多かった」と話すのは川原監督。「今年は仲が良いチームで、先輩・後輩など縦の関係も良い。もちろん同学年も仲も良いので、人の繋がりは僕がいた3年間の中では1番強いと思います。全員が一丸となれている」。そう続けるのは與田だ。

 予選でもそうしたチームワークの良さが印象的だった。PK戦での勝利となった準々決勝以降、楽に勝てた試合は一つもない。だが、インターハイ予選以降、練習でこだわってきた球際の強さや、相手への寄せを全員が声を掛け合って徹底し続けた。準決勝、決勝はともにスコアが1-0。守備に回る時間が長く、華麗な勝ち方ではなかったが、力を評価されながら結果とは無縁だったこれまでのひ弱さはない。選手として、高校生として、たくましく成長できたからこそ、彼らが目標としていたステージへとたどり着けた。

 12月には、春休み以来となる県外勢との練習試合を経験。「基本的な止める、蹴るやフィジカル、声掛けの部分が本当にすごくて、僕らとは全く違った。生活面でも荷物を綺麗に置くとか、挨拶をちゃんとするとか差を感じる事ばかりでした」(佐藤)。結果は大敗に終わったが、選手権前に改めて立ち位置を知れたのは大きい。苦しみながら成長してきたこれまで同様、彼らなら全国への糧にできるはずだ。先輩たちの奮闘する姿を見て入学を決めた彼らと同じように、彼らの姿を見て高松商への入学を決める。そんな後輩たちが出てくるような試合を期待したい。

取材・文=森田将義



By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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