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【佐賀東】チームの軸は新潟内定MF吉田陣平 高校選抜入りの“主役候補”が前回王者打倒に挑む<第100回高校選手権>

2021.12.30

高校1年時にはフランスへの短期留学を志願したMF吉田陣平 [写真]=森田将義

「小さいころからずっと試合を観に行っていたので、ビッグスワンでプレーしたい気持ちは強い。小学生のころからはレオ・シルバが好きだった。守備もすごいけど、攻撃もめちゃくちゃうまくて憧れていた」。佐賀東の3年生MF吉田陣平は、来季からの加入が内定しているアルビレックス新潟についてそう話す。

 吉田は中学卒業までは新潟市に在住。小学3年生のころには、憧れだった新潟のアカデミーのセレクションを受けて、ユニフォームをまとった経験もある。だが、「毎日練習をずっとやりたいタイプだった」と話すほどのサッカー小僧だった彼にとって当時、練習回数が少なかった新潟U-12は物足りず、1年ほど在籍してからは同じ新潟にある街クラブ「F.THREE(エフスリー)」へと移籍した。高校に入学するタイミングで、複数の選手権優勝校やJクラブのアカデミーからの誘いを受けた彼が選択したのは、小学生時代にサッカースクールで指導を受けたコーチがいた佐賀東だった。

 縁もゆかりもない九州の地で、サッカー小僧として磨いた足元の技術が開花していく。元々、巧みな足元の技術を活かしたドリブルやボールキープには定評があったが、中学までは「安パイなプレーが多かった」と自己分析する通り、試合になると3列目からの散らしがプレーのメインに。だが、佐賀東に入ってからは意識が変わった。「これまでは獲られないように意識してきたけど、それでは怖い選手になれない」と積極的にドリブルを仕掛け、ゴールに向かっていくプレーが増えた。積極的にボールを前に運んで、スルーパスやシュートで終わるプレーは今では十八番になっている。

 攻撃では他との違いを見せる一方で、課題も明確。杠美津司ヘッドコーチが「入ってきたばかりのころは自分が好きなプレーしかしていなかった」と振り返る通り、守備意識が希薄だった。2年生になってからはFWを含め攻撃的なポジションでの起用を模索しながら、最終的にボランチへと落ち着いたのは彼の守備意識向上を狙う側面もあったはずだ。しかし、実際のプレーを見ていると、どこか仕方なく守備をしている感じがしたのも事実だ。

 変化が見られたのは、今年に入り高校選抜のメンバー入りを果たしてからだ。同じボランチとして、年代トップクラスの評価を受ける青森山田のMF松木玖生やMF宇野禅斗とプレー。「これまでスライディングとか泥臭いプレーはあまりしてこなかったけど、青森山田の選手は当たり前のようにしていて、上に行くにはこういうプレーをしなければいけないと勉強になった。守備でボールをカットし、点が決まったときは結構気持ち良い。守備でボールを獲ったら、チームに貢献しているとも思える。そういうのが清々しい」。

 肩書が人を作るとの言葉もあるが、彼の場合は高校選抜への選出はメンタル面の成長も促した。「高校選抜に入ってから、周りから“高校選抜の選手”として見られる。だから、そういう責任もあり、自分がやらなくちゃという気持ちが芽生えた」。

 インターハイは流通経済大柏に敗れ初戦敗退となったが、終了間際に意地の1ゴールをアシストし、才能の片鱗を感じさせた。主役候補の一員として挑む選手権では、これまでに経験がないほど注目されるだろう。ただ、3年間で着実にサッカー選手として成長していった姿を見ていると、その活躍に太鼓判を押せる。初戦となる2回戦で対戦するのは前年王者の山梨学院だが、彼が持ち味を発揮できれば、白星を奪ったとしても不思議ではない。

取材・文=森田将義



By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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