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【高知】監督と選手がともに敗戦から多くを学び、成長した“新生・高知” 目指すは最高成績ベスト8超え<第100回高校選手権>

2021.12.28

選手権予選やプリンスリーグでの敗戦から学び、成長を遂げてきた高知  [写真]=森田将義

 偉大な監督の後を引き継ぐのは難しい。前任の功績が大きければ大きいほど、後任にはプレッシャーがのしかかる。高知県勢として最多となる17度の選手権出場回数を誇る高知を育ててきたのは、現在ブータンUー18で指揮を執る高橋秀治前監督だ。同校OBで、現役時代は主将として選手権ベスト8入りに貢献。2001年に監督に就任してからは、インターハイなど全国大会で7度のベスト16進出に導いた。

 2019年度限りで高橋秀治前監督が退くと、教え子である大坪裕展監督にバトンが渡された。就任時34歳という年齢は監督として若い部類で、前年までは県内の社会人チームのGKとして現役を続けていた。選手それぞれが考えて判断しながら、全員攻撃全員守備を徹底してきた高橋監督時代から、チームの方針は変わらない。1年目は自身が教わった高橋前監督の指導を尊重し、選手への指導を行ってきた。迎えた2年目はスタイルを残しつつも、少しずつ自分らしさを出そうと心がけたという。「選手とより近いところで、積極的に話をしていきながら、個々に合わせた形での声かけなどを意識した。自分らしさを出しながら関わっていくことを、今年は去年以上に意識してやってきました」

 サッカーのスタイルにも微調整を加えた。前任時代からの「選手が考えて判断するサッカー」は継続しつつも、“直感”というワードを選手に意識させた。「相手からボールを奪ってすぐを狙ったり、トラップした時に狙えるところは鋭いパスを入れていく。相手にカットされてもカウンターにはならないので、行けるところは積極的に狙っている」と説明するのは、MF笹岡翼(3年)だ。一瞬の隙を逃さないよう、これまでよりも早い判断を求めるのが狙いだ。

 選手権予選では、そうした高知らしさを感じる一方、粘り強い戦いぶりも印象的だった。決勝では先制点を奪いながら前半のうちに逆転を許したが、後半の2ゴールで再びリードを奪い、3ー2で勝利を遂げた。実は昨年の準決勝は同じ展開を強いられ、延長戦の末に負けている。だが、今年は違った。「今回はピッチの中の選手たちが全く死んでいなかった。むしろ『全然いけるぞ』といった雰囲気があった。仲間を信じながらやっているところを見て、チャンスはあるだろうと思えた」(大坪監督)

「劇的な負けを経験してきたのは、自分たちにとって大きい」と話すのは、MF松井匠(3年)だ。今年はプリンスリーグでも逆転負けが多かった。夏のインターハイ予選も準決勝で高知西に負けている。そうした敗戦から学習し、選手たちは成長していった。「昨年は残り1分で同点にされた。プリンスでも同じように残り1分で決められた。やられた形だけど、少ない時間でも点は入るというのが自分たちの中にはある」。松井の言葉どおり、選手たちは敗戦から学習し、強くなっていった。

「今回は100回大会なので、当然思い入れもありました。前任の高橋監督から引き継いで2年目でもあったので、本当にホッとしました」。選手権出場を決めた直後に安堵の表情を浮かべた大坪監督も、敗戦から多くを学び、成長していったに間違いない。“新生・高知”として挑む今年の選手権は、チームの最高成績であるベスト8超えが目標だ。

取材・文=森田将義



By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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