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成功を信じるスボティッチ「今のドルトムントは欧州制覇も狙える」

2013.01.22

ワールドサッカーキング 0207号 掲載]

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ドルトムントでの活躍により、ビッグクラブから注目されるネヴェン・スボティッチは、2013年、クラブとの契約を2016年まで延長する決断を下した。予想外の“英断”の背景には、恩師のユルゲン・クロップや慣れ親しんだ仲間と成功を成し遂げるという確信があった。

 

インタビュー=フェリックス・マイニングハウス
写真=ゲッティ イメージズ

 

バルセロナに負けない魅力がある

 

まずはドルトムントとの契約を2016年まで延長した理由を教えてくれるかな?

 

スボティッチ(以下S)―このチームなら、もっと大きな成功を手にすることができると思ったことが一番の理由だね。(ユルゲン)クロップ監督や主力選手もクラブと長期契約を結んでいたし、彼らとともに歩んでいきたいという気持ちが湧いてきたんだ。

 

ヌリ・シャヒンと香川真司は同じ状況で君とは違う決断を下したけど、ステップアップのチャンスを逃すかもしれないということは考えなかった?

 

S―自分の決断に後悔は一切ない。確かに契約延長にサインしなければ、ビッグクラブに移籍できたかもしれない。でも、ビッグクラブに移籍することが必ずしもステップアップになるとは思っていないんだ。今のドルトムントはチャンピオンズリーグ(以下CL)のタイトルだって狙えるしね。

 

クロップ監督も「ドルトムントよりも魅力的なチームはバルセロナくらいだ」と言っていたけど君はどう思う?

 

S―僕も同じ意見だね。バルサは別格の存在だと認めるけど、僕らも負けないくらい魅力的なサッカーをしていると自負している。僕たちのピークはまだこれからだし、チームスピリットはバルサにも負けていないよ。

 

CLのグループリーグではレアル・マドリーから勝利を挙げるなど、素晴らしいパフォーマンスを披露した。あの、ジョゼ・モウリーニョが「相手が強かった」と完敗を認めたほどだ。

 

S―歴史的な勝利だったね。個人的にもビッグクラブを倒すという夢を実現することができた。あの勝利で僕たちは自分たちのやり方に確信が持てたし、このチームで何か大きなことを成し遂げることができるという自信を得ることができたんだ。

 

CLの決勝トーナメント一回戦はシャフタールと対戦することになった。君たちが有利だと予想する声が多いけど。

 

S―僕はむしろやりにくい相手だと考えている。2月にウクライナで試合をすることは僕たちにとって“未知の領域”なんだ。難しい試合になることは間違いないだろう。

 

昨シーズンのCLでは全く結果を残せなかったけど、今シーズンは見違えるような戦いぶりを見せた。昨シーズンとは何が違っていたのだろう?

 

S―今シーズンは我慢強くプレーできたことが大きかったね。昨シーズンはゴールを奪えない焦りから集中力を欠き、相手にワンチャンスをモノにされてしまったんだ。あんな試合展開は二度と起こらないと信じたいね。

 

CLでは盤石の戦いぶりを見せたけど、ブンデスリーガではバイエルンに独走を許すなど、なかなか調子が上がらなかった。メディアは香川の退団が影響したと指摘しているようだけど。

 

S―シンジは独特のクオリティーを持った代えの利かない存在だった。だから、僕たちは全く違うチームを作らなければならなかったんだ。

 

新加入のマルコ・ロイスについてはどのように評価している?

 

S―今でも十分チームに貢献しているけど、マルコの実力を考えたらもっとやれると思うな。

 

一方、香川はマンチェスター・ユナイテッドで難しい状況に置かれているよね。

 

S―今は実力を発揮できていないけど、全く心配していない。数カ月後、遅くとも1年後にはチームの主力になっているはずさ。

 

今のキャリアがあるのはクロップのおかげ

ここからは君自身の話を聞かせてほしい。幼少期に様々な国で暮らしたことは、君のキャリアにどんな影響を与えた?

 

S―難しい質問だね(笑)。振り返って言えることは、ドイツでもアメリカでもサッカーへの情熱は失わなかったということかな。家族にとって困難な時期もあったけど、ボールを蹴り続けたからこそ今の自分があるんだ。

 

君のお父さんはサッカー選手だったらしいね。サッカーを始めたのは父親の影響なの?

 

S―父はユーゴスラヴィアのリーグでDFとしてプレーしていたんだ。両親に聞くと、僕はよちよち歩きの頃からもうボールを蹴っていたらしい。

 

ドイツで過ごした少年時代はどんなサッカーライフを送っていた?

 

S―僕はシュトゥットガルトの近くのフォルツハイムという地域で育ったから、幼い頃の憧れの選手はクラシミール・バラコフだった。当時はエウベル、(フレディ)ボビッチ、バラコフの「マジック・トライアングル」の全盛期で、中でも、僕はバラコフのテクニックに夢中だったんだ。7、8歳の時、スタジアムでCKを蹴るバラコフを間近で見ることができたんだけど、あの時の記憶は今でも鮮明に残っているよ。

 

11歳の時にアメリカに移住したと聞いているけど、生活環境の変化に苦労したりしなかった?

 

S―英語はテレビを見ているうちに覚えたからあまり苦労しなかったな。一番ショックだったのは、学校でサッカーをしている人が誰もいなかったことだね。だから、父親と2人で近所のテニスコートでいつもボールを蹴っていた。周りから見たら、かなり“奇妙”な光景だったと思うよ(笑)。

 

君のアメリカ時代のキャリアはあまり知られていないよね。改めて聞かせてくれるかな。

 

S―最初は父親のいとこがいるソルトレークシティーに住んでいたんだけど、1年半後にフロリダに引っ越すことになった。そこで「IMGアカデミー」のサッカープログラムに参加するチャンスを得たんだ。「IMGアカデミー」はアメリカのユース代表のサポート機関として活動していて、そこでの活躍が認めれられて、U-17アメリカ代表に呼ばれ、奨学金をもらって大学でもサッカーを続けることができた。

 

大学卒業後はMLSのクラブに入団するつもりだったの?

 

S―いや。僕はドイツで育ったからプロになるならドイツのクラブに入りたいと思っていた。

 

マインツに入団した経緯は?

 

S―18歳の時に、当時マインツでプレーしていたアメリカ代表のコナー・ケイシーのツテを頼ってトライアルを受けさせてもらえることになったんだ。そして合格したというわけさ。

 

マインツに入団した時、5年後にブンデスリーガを制するなんて思ってもみなかったんじゃない?

 

S―ドイツでこれほど早く成功を手にすることができるなんて想像すらしていなかったよ。クロップに出会わなかったら全く違ったキャリアになっていただろうね。今のキャリアがあるのはクロップのおかげだよ。

 

ドルトムントの選手の中で君が一番クロップと付き合いが長いよね。知られざるクロップの素顔を教えてくれるかな?

 

S―ピッチの外では優しいけど、練習や試合ではものすごく怖い。彼は体が大きくて声も人一倍大きいから、怒った時の剣幕はハンパじゃないよ。僕たちは監督に怒鳴られたくないから努力するし、団結するんだ(笑)。

 

これまでのキャリアの中で一番の成功は?

 

S―ドルトムントでリーグ優勝を果たしたことだね。

 

一昨シーズンと昨シーズンのどちらのタイトルが、より大きな意味を持っている?

 

S―一回目の優勝の時は、そわそわして体中がむずむずするような感覚を味わった。チームの中に優勝経験者が誰もいなかったから、みんな浮き足立っていたよ。でも今振り返ってみると、より大きな感動を味わったのは昨シーズンかもしれない。連覇を達成できたことは、チームにとって重要な意味を持っていたからね。昨シーズンは驚異的な結果を残せたシーズンとして、間違いなくクラブの歴史に残るだろうね。今でも本当に信じられないよ。

 

じゃあ逆に、キャリアで一番の失敗は?

 

S―サッカーとは関係ないけど、若気の至りで髪型をコーンロウにしたことかな(笑)。当時は恥ずかしい気持ちなんて全くなかったけど、なんであんなクレイジーな髪型にしたのか理解できないよ。いまだにチームメートにそのことをいじられるし、早く記憶から消し去りたいね(笑)。

 

君のプレースタイルを形成する上で最も影響を受けたのは誰?

 

S―間違いなく父親だね。父は闘志をむき出しにして戦う熱血タイプのDFだった。子供の頃から父がプレーする姿を見て、いつか僕もこんな選手になりたいと思っていたんだ。

 

センターバックでコンビを組んでいるマッツ・フンメルスは君にとってライバルと言えるのかな?

 

S―ライバルだと思ったことは一度もないよ。同い年の僕らは19歳からコンビを組んでいるから、お互いのことを完璧に理解している良き相棒という感じだね。

 

君は普段はとてもフレンドリーな性格だけど、ピッチでは感情をあらわにすることが多いよね。昨シーズンのバイエルン戦(第30節)ではPKを外したアルイェン・ロッベンに詰め寄るシーンも見られたけど。

 

S―勝利への執念があまりに強いと、時に感情をコントロールできなくなることがあるんだ。あの時は、そもそもPKの判定に納得がいってなかった。でも、彼に対して手は上げていない。それははっきりと誓うよ。

 

君は昨シーズン、顔面骨折という大ケガを負っている。激しいプレースタイルにはケガというリスクもつきまとうけど。

 

S―ドイツの屈強なFWとわたり合うためには、多少のケガはつきものだよ。

 

1月のトレーニングキャンプでは初日に負傷してしまったけど、大丈夫なの?

 

S―ふくらはぎの筋肉を痛めたんだけど、そこまで深刻ではないと思うよ。(編集部注:精密検査の結果、全治6週間と診断された)

 

イングランドでプレーすることが夢

君はプレミアリーグでプレーしたいと公言しているけど、どんなところに魅力を感じている?

 

S―ダイレクトな試合展開と、激しいけどクリーンなプレーが気に入っている。

 

ネマニャ・ヴィディッチやブラニスラフ・イヴァノヴィッチなど、イングランドでは多くのセルビア人DFがプレーしている。彼らとともにプレーする日はいつ頃になるのかな?

 

S―ドルトムントでの日々は本当に充実してるし、このクラブで達成したい目標がまだまだたくさんある。移籍のことは正直何も考えてないよ。でも、だからといって生涯契約を結んだわけじゃない。イングランドでプレーすることは幼い頃からの夢だったし、大人になった今でも目標にしていることだからね。

 

セルビアと言えば、セルビア代表はワールドカップ予選で苦戦を強いられているよね。

 

S―今まで代表を支えていたデキ(デヤン・スタンコヴィッチの愛称)とヴィダ(ヴィディッチの愛称)が代表を引退したことで、チームは世代交代の最中にあるんだ。

 

代表では控えに回ることが多い。クラブで成功を収めている君にとっては歯がゆい状況だね。

 

S―先発メンバーを決めるのは監督だから、その判断には従うつもりだ。今は(シニシャ)ミハイロヴィッチ監督の信頼を得られていないけど、ドルトムントでの経験を代表に生かせる時が必ず来ると思っている。

 

3月にはライバルのクロアチアとの直接対決が控えている。セルビアにとって、まさに生き残りを懸けた試合になるね。

 

S―僕たちにとって最も重要な意味を持つ試合だ。きっとダービー戦のような雰囲気になるはずだから、僕たちは覚悟を決めて挑まなければならない。

 

最後に後半戦に向けての意気込みを聞かせてくれるかな。

 

S―契約延長を果たし、プレーに集中できる環境が整ったから、早くケガを治してトレーニングに復帰したい。クロップ監督の下、チームは団結している。この良い流れをキープしたいね。

 

 

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