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日本代表、挑戦による大敗に悲観視は不要…将来への収穫を評価/ブラジル戦

2012.10.17

文=小谷絋友
写真=Getty Images

 

 就任以来最悪となる4失点を喫しての大敗後、日本代表のアルベルト・ザッケローニ監督は、素直にチームの現状を認めた。

 

「2年後のワールドカップ優勝を大々的に宣言できるかと言えば、そうではないと思うし、2年後にトップレベルに食い込んでいるかと聞かれれば、そう言い切れないところはある」

 

 日本代表は16日に行われたブラジル代表との親善試合で、0-4と敗れた。12日にフランス相手に初勝利を挙げていただけに落胆や夢から覚まされたと思われがちだが、結果だけにとらわれると、実情を見落とすことになる。

 

 今回、日本はザッケローニ監督が「別次元のチーム」や「スペインと同様に世界(のトップ)を走っているチーム」と称したブラジルに打ち合いを挑んでいる。フランス戦とは異なり、序盤から日本のリズムでパスを繋げることができ、シュートチャンスも作り出した。12分にパウリーニョの素晴らしいミドルシュートで先制を許した後も、守備に軸足を置くことなく攻めの姿勢を崩すことはなかった。反面、カウンターから度々ピンチを招き、結果的に2006年のワールドカップで同じブラジルに1-4で敗れて以来の大敗を喫している。

 

 ワールドカップ本番と親善試合なだけに一概に比較はできない。しかし、当時からの進歩は見られた。

 

 序盤から防戦一方の中で、玉田圭司が先制点を挙げた6年前とは異なり、今回はゴールネットこそ揺らすことはできなかったが、試合を通じてゴールチャンスを作り出している。ザッケローニ監督が語った「ゲームの流れ次第では1-4にも2-4になったかもしれないし、0-8になった可能性もある」という言葉の裏には、打ち合いを挑んだからこそ大量失点を喫したが、得点の可能性も十分にあったという意味が隠されているだろう。

 

 実際、日本には接戦に持ち込もうと思えば、持ち込むだけの実力はある。2010年のワールドカップのように守備に重点を置けば強豪相手でも僅差に持ち込めることは実証され、フランス戦でも序盤から一方的な攻勢をかけられながらも、曲がりなりにも凌ぎ切った。おそらく、今回のブラジル戦でも守備偏重の戦術を採れば僅差に終わることは可能だっただろうし、引き分けや勝率は高まっていた可能性もある。

 

 しかし、それでは強豪国と対戦する意味はないのではないか。

 

 ワールドカップ本大会でオランダ相手にも守備力は通用することが実証され、日本はイタリア的な守備重視のサッカーを目指しているわけでもない。親善試合で結果だけを求めて守備を固める理由は見当たらない。相手が試合開始からアクセルを踏み込んできたアウェーでのフランス戦では結果的に守りに重点を置くことになったが、勝利後にも選手たちが口々に反省点を語っていたことからも、あくまでも自ら望んだサッカーでなかったことは明らかだ。

 

 日本が意図的にフランス戦の様なサッカーを展開すれば、世界中どこの国とも接戦に持ち込む実力はあるだろうし、おそらく現時点では最も勝利に近い戦い方にはなるだろう。しかし、2年後のワールドカップで、ザッケローニ監督が「到達できるという大きな自信も持っている」という結果を得るため、あるいは将来的にワールドカップの優勝を目指すのであれば、弱者が勝ち残るための戦術ではいずれ頭打ちになることは目に見えている。

 

 そして今回、守るのではなくブラジルと同じ土俵に立つことで明らかになった収穫も数多い。ブラジルがある程度ボールを持たせてきた事実はあるものの、日本の攻撃が世界トップクラスにも手応えを得られるところまで到達していることや、これまではヨコの関係にとどまり懸念材料となっていた本田圭佑と香川真司の連係も、タテの関係になったことで新たな可能性を十分に感じさせた。前田遼一らの負傷離脱によって実現した新たな選手の配置によって、今後は硬直化が指摘され始めていた選手起用も、再び競争原理が働くことになるだろう。

 

 これまでは主にワールドカップ前年に行われていた欧州遠征が、今回は2年前に行われたことも興味深い。ワールドカップの出場権が確保できていない状態で論じるのは早計かも知れないが、浮き彫りになった課題を修正や向上させる時間は、過去の代表よりも確保できることは確かであろう。

 

 フランス戦での初勝利とブラジル相手の大敗。日本代表を取り巻く状況は乱高下した感もあるが、目先の結果だけでなく将来を見通せば、非常に意義のある遠征だったことに間違いない。

 

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