2012.08.21

香川真司、長き道程のスタートで得た信頼と敗戦の中で光った“希望”

  

 “マンチェスター・U”の香川真司が、プレミアリーグでデビューを果たした。今や当たり前のように報じられている所属クラブだが、このイングランドにおいて最も成功を収めたクラブで日本人選手が開幕スタメンを飾るという事実は紛れも無い快挙である。

 

 結果的にエヴァートンに苦汁をなめ、デビュー戦を飾ることはできなかったが、香川が示したパフォーマンスは今後への可能性を大いに感じさせるものだったーー。

 

文=松岡宗一郎(サッカーキング編集部)

[写真]=Getty Images

得意のポジションから決定機を演出

 

 香川は4−2−3−1のトップ下として先発出場すると、チームがエヴァートンに押し込まれた中でも印象的な活躍を披露する。事実、前半にはアタッキングサードで最多となるパス成功数(16本)を誇り、ダニエル・ウェルベックへの絶妙なスルーパスやウェイン・ルーニーへ送ったクロスボールなど数少ない得点機を演出した。

 

 後半にもゴール前の混戦からトム・クレヴァリーに冷静にボールを落とし、この日一番の決定機を作る。結果的に得点は奪えなかったが、ユナイテッドの決定機のほとんどが香川を経由して生まれた事実は、今後へ向けて大きなアピールとなったと推測される。

 

ファーガソンを“動かさなかった”香川のパフォーマンス

 

 実際、アレックス・ファーガソン監督の意図は明確だった。エヴァートン戦を迎えるにあたる英国メディアの予想は、ロビン・ファン・ペルシーの加入も影響して香川がサイドに回るというものが大半を占めた。

 

 しかし、蓋を開けてみれば香川はプレシーズンと同じようにトップ下で起用され、すでにプレミアリーグで実績のある、本来はストライカーのウェルベックがサイドへ回ることに。途中出場でファン・ペルシーがピッチへ現れてからも、香川がトップ下から動かされることはなかった。

 

 ファーガソン監督が、「トレブルを達成した1998−99シーズンに匹敵する攻撃陣」と評価するほどタレントが揃ったユナイテッドに、攻撃の選択肢は数多く存在したはずだ。香川に代えてアシュリー・ヤングを投入し、昨シーズンのようにサイドを基調とした攻撃に切り替えたり、ファン・ペルシーとルーニーの2トップというシステム変更も可能性としてはあった。

 

 だが、その中でトップ下として使われ続けた香川は、すでにファーガソン監督から一定の信頼を勝ち得ていると言える。言い換えれば、ユナイテッドにおいてはまだまだ新参者の香川が“ファーガソンを動かさない”ほどのパフォーマンスを披露していた、ということだ。

 

イギリスメディアも香川を高く評価

 

 実際、日本人の、日本人選手へ対する特別な感情という要素を抜きにしても、香川のプレーぶりは光っていた。

 

『デイリーメール』は香川について、「ボールを持った際には美しいプレーを披露し、ボールを得るために常に自発的に動く熱心さを見せていた。香川のパフォーマンスは、ユナイテッドにとって最も希望を与えるもののひとつだった」と評価。採点においても好セーブを連発したダビド・デ・ヘアに次ぐチーム2番目の評価を下した。

 

『スカイスポーツ』も同様にデ・ヘアに次ぐ評価をつけ、「印象的なデビュー。決してとまることなく、ボールを求め続けた」と、プレーぶりをたたえている。

 

 もちろん、“デビュー戦にしては”という枕詞が評価に影響していることは想像に難くないが、少なくとも敗戦を喫したユナイテッドにおける数少ない“希望”が香川真司のプレーぶりだったのだ。

 

 新たな土地、リーグでプレーし、課題も多く見つかったはず。実際、ユナイテッドにおいてはドルトムント時代以上に守備面での貢献が求められる。フィジカル面でも(ファールを取ってもらえていたとはいえ)、屈強な相手選手に吹き飛ばされるシーンも目立った。ブンデスよりも遥かに速いプレミアのプレースピードも、今後香川を悩ませる要素のひとつだ。

 

 とはいえ、今は『マンチェスター・Uで開幕スタメンを果たし、一定の評価を得た』という事実を受け止めて良いのではないだろうか。シーズンはまだまだ長く、険しい道程が待ち受けている。

 

 そのスタートで、今後への希望を示すプレーを見せたことだけでも、この上なく価値のあることだった。今、香川は日本人が誰も歩んだことのない領域を、進もうとしているのだから。

 

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