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Jリーグ 国際部 リーダーが語る「サッカー界での歩みとアジア戦略発足の経緯」/後編

2016.03.22

Jリーグを世界に売り込む、国際部リーダーの山下修作さん。どのようにしてサッカー業界に入ったのか、そしてJリーグのアジア戦略が始まった経緯、またどのような取り組みを行ってきたのか、お話を伺った。

インタビュー・文=サッカーキング編集部
写真=小林浩一

――リクルートを退社されてSEA Globalに転職されました。そうなると、お金の面でも大きな変化があったと思いますが。それでもこの会社に行きたいと思えた理由はどういったものでしたか?

山下修作 給料はだいぶ減りましたね。ただ自分の中で、お金はあまり基準軸ではありませんでした。もともとリクルートにずっといたかったわけではありませんでしたし、何年間かで自分のやりたいことを見つけて、そこからスタートと考えていたので、ようやくやりたいことが見つかったと思っていました。そのキッカケになりそうな会社に入れるのであれば、条件は関係ありませんでした。しかも、自分が仕事も持ってこられるような状態でもなかったので、無給でも行くぐらいのつもりでしたね。

――そしてJ’s GOALの編集長に就任されました。

山下修作 そうですね。Jリーグ公式サイトとJ’s GOALの運営を中心に行い、他にはJリーグ映像の一般的な業務をしていました。J’s GOALの編集長というのは、結局誰が責任をもって運営しているのかとなった時に問われる立場ということだったので、具体的に編集長として特別に何かをするという役割はありませんでした。J’s GOALはファン・サポーターのためのサイトなので、ファン・サポーターの方たちと関わる編集の人たちとで一緒に作り上げていました。

――J’s GOAL時代に一番印象に残っている仕事はなんですか?

山下修作 自分でカメラを担いで、写真を撮ったりサポーターに話を聞いたりすることがすごく良い経験になりました。サポーターに取材するときに必ず「初めて試合を見に行ったきっかけ」を聞いていました。様々な方の初めて物語を聞けて、いろんな入り方があるんだなと。今でこそこんなにゴール裏で熱く応援するコアな人も、最初は何も知らずに誘われて来ていたことなどを知れたことが良い経験になりました。メディアのカメラマンの人たちは、やはりゴールシーンや試合を撮らなければいけない。そういった写真はメディアにたくさん載るでしょうから、J’s GOALはあえてファン・サポーターの方々の様子をひたすら見続けて撮ろうと。泣いていたり喜んでいたりする瞬間の表情を載せていたところがJ’s GOALらしさだったかなと思います。

――そしてその後、Jリーグのアジア戦略に関わっていくわけですが、まずアジア戦略室発足の経緯から教えてください。

山下修作 リーマンショック後日本の経済が伸びていない中で、Jリーグはどうしていこうかと考えたときに、当時の僕はJリーグやアジアのことを考える立場ではありませんでしたが、日本だけをマーケットにしているだけでなく、アジアの国々と盛り上がれないかなと思い始めました。そこで実際にアジアを調査してみようとなったのが、2011年の4月くらいでしたね。

――最初は何から始めましたか?

山下修作 ASEANのサッカーリーグを誰も見たことがなかったので、まず見に行こうと。実際に見に行ってそのレポートを書いたりしました。そしてASEANのサッカー関係者に会いに行って、Jリーグがどう見られているか人気の度合いをひたすらヒアリングして回ることをしましたね。

――アジア戦略を進めている時にはどういう経験をされましたか?

山下修作 ヒアリングを行っている際、僕みたいなペーペーが行っても、出迎えてくれるのは外務大臣だったり、偉い方だったりが多くてなぜだろうと思いました。その方たちは、「実はサッカークラブ持っているんだよね」と話をされて、こうしたやりとりがASEANの各国で続きました。「日本サッカーは昔弱かったのに、Jリーグができて強くなってすごいよね、なにが理由なの?」ということをオーナーたちから言われ、このJリーグのノウハウは売れるなと感じました。

――でも結果としてはそのノウハウを売るのではなく、提携を進めていく形になりましたよね。

山下修作 Jリーグのノウハウを売るだけではお金だけの関係になってしまうと考えました。ノウハウを無償で教える代わりに、その人たちのネットワークをJリーグにつないでもらったほうが、日本の地域や企業、全体の大きな利益になるのではないかと考えました。そのやり方をJリーグのアジア戦略の基本とし、日本とアジアの発展に寄与しようということになりました。

――コンサドーレ札幌にレ・コン・ビン選手が移籍したきっかけは?

山下修作 アジアの国の人にJリーグを見てもらうためには自分の国の人気選手がいたほうが見てもらいやすい。そう考えて、何人か目をつけていた中にレ・コン・ビン選手がいました。コンサドーレ側も、北海道にベトナムからの観光客や企業が来てほしいと考えていたので、知り合いを通じて話を進めました。コンサドーレも、レ・コン・ビン選手に会いに行くまでは、彼の人気具合は知りませんでしたが、現地でのとてつもない人気を実際に見て、すごいポテンシャルをもった選手というのを感じていたと思います。

――今アジアでは、中国が爆買いを続けています。それによるJリーグへの影響など、どのようにお考えでしょうか?

山下修作 今は中国から週に2回くらいは人が来たり、こちらが中国に行ったりしているような状態です。接点のある人同士で何らかの打ち合わせを頻繁にしています。日本のサッカーは育成の部分と、リーグのガバナンスの部分に長けていることは中国もわかっています。それを自分たちの国にも取り入れたい、学びたいという気持ちがあるようです。選手を「爆買い」している一方で、実直にサッカーを強化していこうという姿勢があります。根の部分では習近平による国家施策としてサッカーを強くしていこうという姿勢が大きいですよね。中国国内の企業が政府との関係を良くして、本業を潤わせるためには、政府の方針に従うことが最善だと考えているので、サッカーに力を入れているところをアピールしていますよね。逆に言うと、政権が変わればまったく変わる可能性もあります。僕らとしては、もちろん中国はライバルですし強敵ですけれども、同じアジアの一員としてはアジアサッカーが盛り上がっていくことが大切なので、そこは協力関係を築いていきます。

――Jリーグが爆買いをすることはありえますか?

山下修作 Jリーグも大きな発展に向けてゆくゆくは爆買いができるように頑張りたいです。Jリーグが潤って、各クラブにお金がもっと入って、優秀な選手やスタッフにそのお金を還元できるような環境にできるようにしたいです。そのためには日本だけをマーケットにしていると天井が見えてしまうので、みんなでアジアや世界に出ていきましょうと。興味があるクラブには、僕たちがどんどん協力していきたいなと思っています。

――最後に、「社内で新規事業を立ち上げたい方へ」というテーマで、組織の中でやりたいことを実現するために必要なことを教えてください。

山下修作 シンプルに漢字2文字です。「情熱」ですね。どうしてもこれがやりたいとか、そういうものが人に伝わらなければ相手も応援しようとは思えませんよね。どれだけ知識や経験があったとしても、情熱がないと人と一緒に何かを作ったり、協力を得たりはできないと思います。

――気持ちの部分以外で、なにかテクニカルな部分でコツはありますか?

山下修作 それでもやはり、情熱に勝るものはないと思います。新規事業は0から1にすることで、とてもパワーがいります。たとえば、「お前これやっとけ」と言われて新規事業をやるより、「俺はこれがやりたい」と思って新規事業に取り組むのとでは全然結果が違うと思います。テクニカルなことより、自分がこういうことをやりたいと、どれだけ情熱を傾けられるかが大切だと思います。

――そういう意味では、サッカー界に入りたいという点では情熱が大事ですよね。

山下修作 もし採用で迷ったとしたら、頭の良い人より、踏ん張れたり情熱がある人を選ぶかなと思います。

Jリーグ 国際部 リーダーが語る「サッカー界に行こうと思ったキッカケ」/前編

公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)
国際部 リーダー
山下 修作(やました しゅうさく)

北海道大学大学院修了。
株式会社リクルートで営業、編集、企画、新規事業立ち上げ、WEBメディアのリニューアル、プロモーション、マーケティング等に携わる。
2005年からJリーグ公認サイト「J’s GOAL」の運営やJリーグのWebプロモーション事業に従事。
2012年より、Jリーグアジア戦略室室長としてアジアを中心とした国際戦略を展開。
2015年4月に新設された国際部でリーダーとして活躍中。

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