
2月25日(木)に東京都八丁堀のFootball★Plazaで、サッカーキング・アカデミー アーセナルサッカースクール市川 特別セミナー「日本サッカーが世界に追いつくために必要なこと」が開催され、ビジネスマンや学生など約20人が参加した。
講師を務めたのは、アーセナルサッカースクール市川 代表 幸野健一氏。10歳よりサッカーを始め、17歳のときにイングランドへサッカー留学。以後、東京都リーグなどで40年以上にわたり年間50試合、通算2,000試合以上プレーし続けている。これまで2002年ワールドカップ招致活動など、サッカービジネスに携わり、2013年からは育成を中心にサッカーに関わる課題解決を図るサッカー・コンサルタントとして活動中。2014年4月「アーセナルサッカースクール市川」を開校させ、代表に就任。息子の志有人はJFAアカデミー福島1期生で、現在はFC東京に所属している。

そんな幸野氏が考える「生涯スポーツ立国論」、そして代表を務めるアーセナルサッカースクール市川設立の経緯を中心に講義を行った。
幸野氏がこれまでさまざまな海外クラブやスポーツに取り組む環境を見て、たどり着いたのが「生涯スポーツ立国論」である。日本には学校教育の体育や部活動など、誰もがスポーツに触れる環境は整っている。しかしそのような状況下でも、生涯を通じてスポーツに取り組み続ける人は少ない。大半は、部活や学校の区切りでスポーツから離れてしまっているからだ。「スポーツに引退があるのは日本だけです。これを海外の人に説明するのはとても難しく、理解されません」。学校や教育の一環としてスポーツに一時的に取り組むのではなく、アマチュアとしてスポーツに関わり続けることが人間性を磨き、健康的な生活を過ごす上でも必要であると話す。幸野氏は、スポーツを趣味ではなく生活の一部として捉えている。
それはサッカーにおいても同様だ。2015年のFIFA発表によると、日本のサッカー競技者人口比率は約4%だ。2014年ブラジルワールドカップを制したドイツでは約20%と高い数値が出ている。「トップ層を伸ばすプルアップも大事だが、アマチュアや競技人口を増やすボトムアップが必要だと考えています」と幸野氏は語る。誰もが、サッカーそしてスポーツに取り組む環境を整備し、プレーヤーの増加を図ることが今後の日本に必要となってきている。

次に幸野氏は、千葉県市川市にアーセナルサッカースクールを設立した経緯について説明した。市川市が保有していた未利用の土地を有償提供されたことで、ファンドという形で資金を募り、北市川フットボールフィールドを建設。一般社団法人・市川スポーツクラブを立ち上げてスクールの管理・運営を行い、幸野氏が代表を務めるアーセナルサッカースクールが業務委託としてそれを担った。さらに当時、アーセナルが日本進出を計っていたため、幸野氏のビジネス計画と合致したという経緯がある。
これらに携わる、市川市、住民、アーセナルサッカースクールのすべてが恩恵を得る仕組みを導入した。これまで学校や公共組織にスポーツ施設の設立を頼ってきた中、民間企業や組織がそれを担うのは無駄が多いと判断されてきた。特にサッカーグラウンドは面積も広く、コストに合わず採算が取れない。幸野氏がPFI(Private Finance Initiative)を用いて設立したサッカーグラウンドは、今後のスポーツ施設建設に影響をもたらし、スポーツをより身近に取り組む環境整備を推進していくだろう。
「スポーツに誰もが取り組める社会になれば、必ず幸せになれると思っています。僕自身が長年スポーツに関わり続けていることで幸せに感じていて、毎日が楽しくて仕方ありません。これを少しでも社会に還元していければと思っています」幸野氏はセミナーの最後にこう話し、アーセナルサッカースクール市川特別セミナーは幕を閉じた。
By サッカーキング編集部
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