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日本がキャッチアップすべき育成モデル、アスレティック・ビルバオ

2016.02.05

 レアル・マドリードに続き、バルセロナのBチームも2部B(3部)所属となった今シーズン、スペイン1部で唯一セグンダA(2部)所属のBチームを保有しているのがアスレティック・ビルバオだ。Bチームにあたるビルバオ・アスレティックの登録27名の平均年齢は20.7歳(1月末時点)と若く、チーム最年長は91年4月生まれのMFマグダレノ(24)だ。

「欧州屈指の2部リーグ」と呼んでいいセグンダAを、20歳そこそこの若いチームで戦い抜くには少々無理がある。実際、第22節が終った時点でビルバオ・アスレティックは最下位の22位で、残留圏内となる18位(マジョルカ)までの勝ち点差は8ある。ビルバオの関係者からも「若いチームでセグンダA残留はミッション・インポッシブル」といった諦めの声が漏れ聞こえてくるが、驚くべきことに誰もが「バルベルデの後任は“クコ”・シガンダ」と口にする。

“クコ”ことホセ・アンヘル・シガンダは選手としてオサスナ、ビルバオでプレーし、指導者としてはすでにオサスナのトップチーム(当時リーガ1部)の監督を務めた経験も持つ。2011-12シーズンからビルバオ・アスレティックの監督に就任し、今季で5年目を迎える。Bチームを19年ぶりに2部へと引き上げながらも、今シーズンは開幕から黒星続きの苦しい年を送っているがシガンダだが、一貫して「残留は目指す。結果にもこだわる。しかし、このチームの最大の目標は一人でも多くトップチームに選手を送り出すこと」と言い続ける。

 後半戦が始まった段階で降格が濃厚となり始めている普通の2部クラブであればとっくに監督交代が起こっているはずだが、ビルバオの育成に携わる関係者からは「全敗して3部降格が決まったとしてもクコの解任はない」という力強い言葉が出てくる。それどころか、サイクルの終焉が近づいているエルネスト・バルベルデの後任監督の最有力候補としてシガンダの名前が当然のように挙がる。

 確かに今シーズンもFWイニャキ・ウィリアムスを筆頭に、FWサビン・メリーノ、DFイニゴ・レクエといったカンテラーノ(下部組織出身選手)たちがシガンダのBチームを経てトップチームに定着した。中でも1月下旬に2021年までの契約延長を結んだイニャキ・ウィリアムスはビルバオの新星として今や欧州ビッグクラブが獲得を狙う逸材だ。そうした引き抜きを想定して契約解除金は5000万ユーロ(約65億円)に設定された。

 とはいえ、ウィリアムスやフランス領バスク出身のフランス代表DFエメリック・ラポルテといった若手は数年以内にビッグクラブが契約解除金を支払い引き抜くことになるだろう。12年夏のハビ・マルティネス(現バイエルン)、14年夏のアンデル・エレーラ(現マンチェスター・U)の移籍はいずれも獲得先のクラブが契約解除金を支払って実現したもので合計額は7600万ユーロ(約98.8億円)にのぼる。

 バスク出身以外の地域から選手を獲得できないため、主力の引き抜きはチーム強化にとって非常に痛いが、ビルバオはこうして得た資金のほとんどを育成に投資して次なる若手を育成することに邁進する。すでにトレーニング・センターである“レサマ”の拡張工事のために2000万ユーロ(約26億円)が用意されている。

 人口約220万人のバスク州のみ(実際にはナバーラ州、ラ・リオハ州、フランス領バスクも“バスク”と定義されている)で選手を獲得・育成し、バルセロナ、レアル・マドリードと並び2部落ちの経験がなく継続的な強さを誇るバスクの雄、アスレティック・ビルバオはやはり日本が常にキャッチアップすべきクラブであり、育成モデルだ。

文=小澤一郎

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