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データで読み解くバルセロナ、『高いポゼッションの秘訣』と『数字上の弱点』とは?

2011.12.12

 ついに日本の地に降り立ったバルセロナ。クラシコで宿敵レアル・マドリードを圧倒し、満を持して世界一の座をつかみ取りにきた欧州王者の強さはいかほどのものなのか。イタリアで活躍するデータベース・マネージャーが、バルサの強さをデータから読み解く。

 まず前編として、「グアルディオラのバルサはどんなプレーをするのか?」、「バルサの弱点は?」にスポットを当ててみた。

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Text and date Aldo by MACCAGNI, Tlanslation by Mitsuo OGAWA, Photo by Getty Images

 バルセロナは、現在のサッカー界において、間違いなく世界ナンバーワンのチームだ。もしかしたら、史上最強チームと言ってもいいかもしれない。

 ペップ・グアルディオラが監督に就任して以降のバルサは実に12個ものタイトルを手中に収めている。その間の勝利数は公式戦全試合の72パーセントを占め、1試合平均のゴール数は2.5点。日頃からデータの作成と分析を担当している私からすれば、バルサが導き出す“驚異的な数字”は、しばしば「データの集計ミスではないか?」との疑問を抱かせる。そのたびに今のバルセロナがいかにすごいチームなのかを実感せずにはいられない。

 ここでは、彼らが昨シーズンのチャンピオンズリーグでの全13試合、そして今シーズンのチャンピオンズリーグ、11月1日のプルゼニ戦までの4試合の計17試合でのデータから、バルサの強さの秘密を分析し、そして「もしそれが存在するのであれば」弱点を探っていきたい。

■データで読み解く「グアルディオラのバルサはどんなプレーをするのか?」

 グアルディオラのバルサは、どんなプレーを身上としているのか? 一般的に言われているのは、「ポゼッションを重視」し、「ショートパスを正確につなぐ」といったことだろう。この点をデータで検証したい。

 まずは、ボールポゼッション。バルサのチャンピオンズリーグ17試合のボール保持時間の平均は、1試合あたり37分37秒で、全体平均の26分39秒を大幅に上回っている。さらに特筆すべきは「相手陣内でのポゼッション時間」で、大会全体の平均が10分15秒であるのに対し、バルサのそれは倍以上の20分38秒。つまり、ここ2シーズンの彼らは、文字どおり“驚異的な支配率”を誇っているのだ。

 有効なパスの数(ボールを相手ゴールに近づけたパスのことを示す)、それ以外のパス成功数でも、バルサは他を圧倒している。

 彼らの“有効のショートパス”の数(相手のプレッシャーを受けた場面で5メートル以内の味方にパスを通した回数)は1試合平均92.1回。全体の平均が46.6回だから、2倍近い数字である。また、成功したパスの総数は690.1回。ちなみに断っておくが、これは「1試合平均の数字」で、全体の平均は378.0回である。この数字だけど、バルサがいかにパスを通すチームかが分かるだろう。

「パスをつなぐ」という彼らの哲学がピッチ上で反映されていることを示す別のデータも紹介しよう。バルサが相手陣内で得たFKの場面で、直接シュートを狙った割合は15パーセント。全チームの平均は27パーセントである。この数字から見えてくるのは、FKからでもボールをつないで相手守備組織を崩そうとするバルサのスタイルだ。CKの場面でも、そのままゴール前に蹴り込むのではなく、ショートコーナーから攻撃を組み立て直すケースが多い。

■データで読み解く「バルサの弱点は?」

「バルサの弱点は?」と尋ねられると返答に困る。様々なデータから見るバルサは、ほとんど付け入る隙のない完璧なチームなのだ。ただ、「弱点を挙げるとすれば、高さがないことだろう」という声を時々聞く。確かに現在のバルサには長身選手が少ない。そう考えると、彼らの弱点を「空中戦」と考えることもできるだろう。

 バルセロナとレアル・マドリードというスペインの2強、マンチェスター・ユナイテッド、チェルシー、マンチェスター・シティ、アーセナルというイングランドの4強、それにイタリアからミランとインテル、ドイツからバイエルン。この9チームの平均身長(今シーズンのチャンピオンズリーグに出場経験のある選手が対象)を集計すると、実に興味深い結果が出た。

 バルサの平均身長176.5センチは、9チーム中で断トツの最下位。8位のインテル(180.6センチ)と比べても4センチ以上の差がある。ちなみにトップのチェルシーの平均身長は184.1センチ。「バルサは高さがない」というのは、感覚的な意見ではなく“厳然たる事実”でもあるのだ。

 ただ、ここ数年のバルサはそれを弱点と周囲に感じさせない“戦い方”を見事に実践している。むしろ、高さがないことを逆手に取り、相手を翻弄している印象さえ受ける。

 ポイントはここでも“パスをつなぐサッカー”だ。試合の主導権を握り、小刻みなシュートパスをつなぐ自分たちのサッカーに相手を引きずり込んで空中戦に持ち込む余裕を与えない。ここでもう一つ、面白いデータを紹介しよう。ほとんどすべての点でチャンピオンズリーグの平均値を上回るバルサだが、両サイドからクロスを入れた回数は1試合平均15.4回で、全体の平均(19.4回)より少ない。つまり、彼らはサイドを崩しても、ゴール前にクロスを上げるのではなく、ドリブルで切り込むことを選ぶのだ。

 このデータを頭に入れた上で、ダニエウ・アウヴェスのプレーを思い出してもらいたい。「世界最高の右サイドバック」という評価が定着した彼は、タッチライン際を上下動し、サイドのスペース広く使って積極的に攻め上がる。しかし、ただ錐のように直進するのではなく、チャンスさえあればカットインして中央に切り込み、クロスよりもワンツーを狙う姿が想像できるはずだ。

【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(twitterアカウントはSoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではグラビアページを担当。

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