2011.11.02

止まらないメッシとバルサ。『ストップ・ザ・バルセロナ』は不可能なミッションなのか


文/翻訳協力=ルイス・シエラ/オフィス・アドオン、協力=EIS

■“けがの功名”による超攻撃的な新布陣の誕生

 ボールを失わないこと。バルセロナの戦術は「ボールを持っている限りは常に有利に試合を進められる」というシンプルな哲学に基づいている。試合中、唯一の例外は、相手が前掛かりになり、敵陣内にスペースが広がったとき。この場合、バルサは迷うことなく攻撃を加速させ、一気にゴール前まで攻め込む。

 もっとも、バルサと対戦する大半のチームは、簡単にスペースを明け渡さないよう自陣に人数を集め、守備を固めて戦う。それに対抗するため、バルサは狭いスペースでボールを正確につなぐ戦い方を選択することになるが、この戦術では選手間の距離が短く保たれ、ボールを失った際には近い位置にいる複数の選手がすぐに守備に移れるという利点もある。また、相手陣内でボールを奪い返せれば、攻撃を仕掛け直す時間が短縮され、同時に数的優位な状況を作ることもできる。

 バルサは今シーズン、3−4−3のフォーメーションを導入。これが少なからず話題を呼んでいるが、先述の戦い方が大きく変わることはない。バルサは、ボールを持っている選手の周囲に、サポートできる距離と角度を保ちながら複数の選手が陣取って攻撃を展開している。

 では、なぜセンターバックを1枚減らした3−4−3が採用されているのか。それは、バルサの最終ラインの状況にヒントがある。今シーズンのバルサは開幕以来、カルラス・プジョルとジェラール・ピケのコンディションが万全ではない。とりわけ、最終ラインから高精度のロングパスを繰り出すピケの不在は大きな痛手だ。そこで、ジョゼップ・グアルディオラ監督は、中盤にパスの受け手を増やし、最終ラインからショートパスをつないでビルドアップする回数を増やすことに解決策を見いだした。4−3−3の布陣でこれを行おうとすれば、トップ下の選手がポジションを下げなければならないが、単純に中盤の人数を1人増やせばその必要がなくなる。セスク・ファブレガスの加入やチアーゴ・アルカンタラの台頭によって中盤の層に厚みが増したため、最終ラインからのパスを引き出しさえすれば、高いキープ力を生かした攻撃が可能になる。ボールを容易に失うこともないため、ストッパーはサイドに大きく開き、サイドバックのような役割も果たしている。

 結果として今まで以上に攻撃的なスタイルが生まれ、驚異的なゴールラッシュで大きなインパクトを与えているのが今のバルセロナだ。ピケのコンディションが整った状態であれば基本システムの4−3−3も採用するなど、バルサは“けがの功名”的に攻撃的な戦術のオプションを手に入れたことになる。

 もちろん、いずれのシステムを採用した場合も、攻撃の絶対的な中心となるのはリオネル・メッシだ。圧倒的な突破力やシュート精度の高さについては、もはや説明不要かもしれないが、今シーズンのメッシは新加入のセスクとのコンビによって、新たなオプションを生み出している。

 セスクがペナルティーエリア付近からタイミングを見計らってFWのような動きをした場合、メッシはパサーの役割を担う。互いにゴール前のスペースを消し合うことなく、縦にクロスする動きからわずかに自由になる時間とスペースを利用して、高精度のパス交換からゴールを生み出している。ただでさえ止めることが難しかったメッシがセスクとの縦の連係を手にしたことにより、相手守備陣の負担はますます増えることになった。今シーズンのメッシは、自らゴールを決めると同時に、セスクを始めとするチームメートのゴールを導き出すプレーも増えている。

■「ストップ・ザ・バルサ」は不可能なミッション

 グアルディオラ監督の就任以降、いまだにポゼッションで相手を下回ったことのないバルサに対し、対戦相手はどのように守るべきか。それは現代サッカー界全体のテーマでもある。あるチームはゴール前で致命的なスペースを作らぬよう自陣深くに張り付き、またあるチームは、パス回しの第一手を潰そうと前線から果敢にプレスを掛ける。だが、どちらがより効果的かという答えはまだ出ていない。なぜなら、バルサがいずれの相手も攻略してしまっているからだ。

 分かりやすい例としては、前者がジョゼ・モウリーニョ監督率いるレアル・マドリードの戦法であり、後者はアレックス・ファーガソン監督率いるマンチェスター・ユナイテッドがチャンピオンズリーグ決勝で用いた戦法だ。最高のクオリティーを有する選手たちをそろえた両チームだが、いずれもバルサに敗れ去った。だが、両チームがある時間帯にバルサを大いに苦しめたことも事実。これが意味するのは、レアル・マドリードが見せたような鉄壁の守備を90分間にわたって行い、その中でユナイテッドのように高い位置からの果敢なプレスでボールを奪いにいく時間帯を作れば、得点を奪える可能性が高まるということだ。

 とはいえ、これは極めて不可能に近い。いずれの戦術でも、必要とされるのは絶え間なく走り続ける体力と、プレーを素早く読むための高度な思考力。しかし、バルサはボールを素早く動かし続けることができる。人よりも速く動くボールの後を追い続ければ、体力も思考力も低下し、パスワークへの対応が遅れることは明らか。つまり、バルサにボールを持たれ続ける限り、勝利の可能性は遠ざかることになる。バルサを超えるチームが現れるとすれば、それはバルサのポゼッション力を上回るチームが出現する時だろう。

◇メッシがゴールラッシュ、バルサの記録も
・バルセロナ、メッシのハットトリックなどで快勝…決勝T進出決定
・ペップがメッシのクラブ得点記録更新に太鼓判「破ると確信」

◇バロンドール候補にバルサから最多人数
・FIFAバロンドールの候補者23人が発表…バルセロナからメッシら最多8人が選出

◇3−4−3はドリームチームも採用
・バルサの序盤戦考察。ドリームチームを栄光に導いた3-4-3は進化のカギなのか?

【浅野祐介@asasukeno】1976年生まれ。『STREET JACK』、『Men's JOKER』でファッション誌の編集を5年。その後、『WORLD SOCCER KING』の副編集長を経て、『SOCCER KING(@SoccerKingJP)』の編集長に就任。『SOCCER GAME KING』ではCover&Cover Interviewページを担当。