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苦しんだ前半戦…巻き返しを誓うユルゲン・クロップ「ただ前だけを向くのみだ」

2015.02.18

[ワールドサッカーキング3月号掲載]

ドルトムントを語る上で選手以上に欠かせない人物、それが指揮官のユルゲン・クロップだ。クラブに数々の成功をもたらしてきた“創造主”はどのような哲学を持ち、今何を考えているのか。自身のサッカー感、更には後半戦への意気込みについて、指揮官が胸の内を明かしてくれた。

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取材協力=ボルシア・ドルトムント
翻訳=円賀貴子
写真=ムツ・カワモリ

ボールを奪い返すチャンスは失った後の5秒間にある

──まずはあなたの「サッカー感」についてお聞きします。指導者にとって最も重要な資質は何だと思いますか?

クロップ これは指導者に限ったことではないが、サッカーをより深く理解する必要がある。私がそれをできるようになったのは33歳の時だった。残念ながら、選手として素晴らしいキャリアを送るには少し遅かったよ(笑)。だが、監督の仕事をするのには何とか間に合った。

──チームを構築していく上で、「組織」と「個」のどちらを優先していますか?

クロップ もちろん、個のクオリティーは重要だ。選手たちが思いどおりにボールを蹴れないようでは、チームとして機能しないからね。特別な個性を「不必要」と言うつもりはないよ。だが、チームよりも個を優先するような選手がいるとすれば、ウチのチームでは居場所がなくなるだろう。

──「1-0」と「4-3」、勝利を収めるなら、どちらのスコアを好みますか?

クロップ それは時と場合によるよ。今の我々はブンデスリーガで残留することしか考えていない。だから今の私にとって重要なのは、スコアではなく勝ち点3なんだ。

──国内外を問わず、現在最も興味深いサッカーを見せているチームはどこでしょうか?

クロップ 自分たちの難しい状況を考えると、正直、今は他のクラブのサッカーについて考えている暇はない。もちろん、数日後に対戦する相手となれば話は別だけどね。

──あなたが考える世界最高の現役監督は誰でしょう?

クロップ それについても答えられない。私は他の監督の下でプレーしたことがないし、彼らの仕事ぶりというものをよく知らないからね。

──それでは、あなたが最も大きな影響を受けた指導者は?

クロップ ヴォルフガンク・フランクだ。彼は私だけでなく、あらゆる人にとって監督以上の存在だった(編集部注:フランクはドイツサッカー界に4バックをもたらした監督として知られる)。例外的で希に見る人間だったよ。ヴォルフガンクは我々の世代のすべてのサッカー選手に影響を与えたし、その影響力は今も続いている。私はそのことを既に1000人以上の選手に伝えてきた。

──あなたの戦術の代名詞とも言える「ゲーゲン・プレッシング」の肝となる要素は何でしょうか?

クロップ ゲーゲン・プレッシングを語る上では、まず我々の基本的なコンセプトを説明する必要がある。我々のサッカーでは、自分たちがボールを持っている時は全員で攻め、持っていない時は全員がボールを奪おうとしなければならない。そして、相手からボールを奪い返す最大のチャンスは、ボールを失った後の5秒間にあるんだ。だから私は守備の仕事でルールを作った。攻撃に関しては、ウチの選手たちは常に得点できるだけのクオリティーを持っている。誰も心配する必要はないよ。


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「自信」というのは小さな植物のようなもの

──ドルトムントの監督に就任して6年半が経ちます。最も記憶に残っているのはどの試合ですか?

クロップ 余りにもたくさんあるから、1試合だけ挙げることはしたくない。多くの人たちはチャンピオンズリーグのマラガ戦や、我々が初めてリーグ優勝を決めた日のこと、そしてDFBポカールでの勝利を最高の思い出として挙げるだろう。だが正直に言えば、私にはもっと多くの素晴らしい出来事があったように思う。このクラブの特別な雰囲気も含めてね。

──では逆に、ドルトムントに来てから最もショックだった出来事は?

クロップ 常に勝ち負けがつきまとうサッカーについて語る時、「ショックを受ける」という表現は大袈裟すぎる。それに私は、負けた後でもすぐに気持ちを切り替えられるタイプでね。負けた試合から課題を見つけ、すぐに次の試合に生かすことができるんだ。もちろん、今シーズン前半戦は楽しい思い出とは言えないがね。

──香川真司選手について伺います。彼の再入団が決まった瞬間の感想は?

クロップ もちろん、ものすごくうれしかったよ。あれだけのクオリティーの選手、あんなに素晴らしい人間を再び獲得することができたんだからね。

──しかし、香川選手はいまだに本調子を取り戻せていません。いったい何が原因なのでしょうか?

クロップ 「自信」というのは繊細で小さな植物のようなものだ。つまり簡単に踏み潰されてしまうんだ。シンジのマンチェスターでの日々は容易ではなかったし、ケガとも戦っていた。その影響はここに戻って来てからも大きく、プレーのリズムが失われていた。

──後半戦の彼にどのような活躍を期待していますか?

クロップ 選手全員に期待していることと同じだよ。つまり、チームとして成功できるよう、すべてを出し切ってくれることだ。私は特定の選手だけにリュック(重荷の意味)を背負わせるのを好まない。シンジがまた、たくさんの喜びを味わえると私は信じている。


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今は残留のことしか考えていない

──今回の冬季キャンプは満足のいくものとなりましたか?

クロップ 我々はプレシーズン中に7週間もトレーニングを行ったが、今回のキャンプはその時よりもずっと充実したものになった。どの選手も夏より良い状態にある。それが私を前向きにさせてくれている。

──改めて、前半戦の不振の原因は何だったのでしょうか?

クロップ それについては、私とハンス・ヨアヒム・ヴァツケ、ミヒャエル・ツォルクの3人で、8時間以上も掛けてすべての面から分析した。だが、今となっては前半戦のことを考えても何の意味も持たない。前を向くのみだ。ただ前だけをね。

──1月の移籍マーケットでケヴィン・カンプルを獲得しました。この補強の狙いは?

クロップ 当然ながらミキ(ヘンリク・ムヒタリアン)が負傷していたこと、そしてシンジがアジアカップ、(ピエール・エメリク)オーバメヤンがアフリカネーションズカップに行っていたことも関係している。ケヴィンは素晴らしい選手だよ。スピードとテクニックがあって、様々なポジションで起用できる。既にザルツブルクでゲーゲン・プレッシングを習得していることも大きいね。そのことが、ドルトムントでのスタートを楽なものにしている。

──後半戦の目標はあくまでも残留でしょうか? それとも“更に上”を見据えているのですか?

クロップ 今の我々は残留のことしか考えていない。

──チャンピオンズリーグではユヴェントスと対戦することになりました。ユヴェントス戦での勝算は?

クロップ それは実際に彼らと向き合う時期になってから考えればいい。もちろん、魅力的な抽選結果ではあったけどね。何と言っても1997年のファイナルの再現だ。とても伝統のある組み合わせだよ。だが、最も重要なのはリーグでの残留争いだ。

──あなたの熱心なファンは日本にも少なくありません。いつの日か、日本代表を率いることに興味はありませんか?

クロップ (笑)実を言うと、私はまだアジアに行ったことがなくてね。だから今夏のアジアツアーを今から楽しみにしている。だが私の仕事に関して言えば、現時点ではドルトムントのことしか頭にないよ。

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