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合理的だった豪戦、アジアカップは海外組を呼ぶべきではない/戸塚啓の日本代表分析

2014.11.19

OSAKA, JAPAN - NOVEMBER 18: Keisuke Honda of Japan looks on during the international friendly match between Japan and Australia at Nagai Stadium on November 18, 2014 in Osaka, Japan. (Photo by Masterpress/Getty Images)

Japan v Australia - International Friendly
[写真]=Getty Images

 結果を残したいのであれば、こうでなければならない。

 11月18日のオーストラリア戦で、ハビエル・アギーレ監督は前半途中からシステムを変更した。[4-3-3]から[4-2-3-1]へ修正した。

 遠藤保仁、今野泰幸、長谷部誠、内田篤人が揃って復帰した今回は、アルベルト・ザッケローニ前監督の香りが濃厚だ。[4-2-3-1]の配置で培ってきた連携は、当然ながらいまも息づいている。すでに出来上がっているコンビネーションを有効活用するのは、あらゆる意味で合理的だ。[4-3-3]の土台作りに充てていた時間を、より具体的なトレーニングに振り替えることができる。

Japan v Australia - International Friendly
[写真]=Getty Images

 選手とシステムの整合性も高い。

[4-3-3]でインサイドハーフを任されていた香川真司が、[4-2-3-1]ではトップ下へポジションを上げた。ディフェンスの労力が大幅に減ったことで、背番号10は本来の躍動感を取り戻す。ホンジュラス戦ではパスセンスをのぞかせた香川だが、彼が真価を発揮するのはペナルティエリア内とその周辺だ。ミドルレンジからどんどん狙っていくタイプではないだけに、3列目はゴールに遠過ぎる。また、オーストラリアのようにサイズのある選手との競り合いが続けば、守備だけで疲弊してしまう。香川という「個」を生かす意味でも、[4-3-3]の採用は説得力に欠けていた。

 オーストラリア戦後のアギーレ監督は、「システムはそれほど重要ではない」と話した。[4-2-3-1]から[4-3-3]へベースを移すとの明言は避けたが、非公開練習では2ボランチだけでなく2トップのシステムにも取り組んでいる。メキシコ人指揮官は日本人選手の順応性を評価しており、複数のシステムを使い分けることも選択肢に入ってくる。

 2014年の試合が終了したことで、アジアカップへ向けたアギーレ監督の構想はほぼ固まりつつあるはずだ。気になるのは海外組の扱いだろう。イタリア、イングランド、ベルギーはアジアカップ期間中にもリーグ戦が組まれているが、本田圭佑、長友佑都、吉田麻也、川島永嗣らをそれでも招集するのだろうか。

Japan v Australia - International Friendly
[写真]=Getty Images

 個人的には呼ぶべきではないと考える。

 2000年のアジアカップを制したチームには、当時のシンボルだった中田英寿が招集されていない。それでも、名波浩が攻撃のリーダーとなったチームは、「大会史上最強」の称号を得るほどの圧倒的強さを見せつけた。

 2004年大会のチームでも、海外組は少数派だった。ジーコは柳沢敦の招集を検討したが、サンプドリアからメッシーナへ移籍したばかりの彼は、プレシーズンのトレーニングを優先したいと申し出たのだった。3バックの一角を担っていた坪井慶介が負傷で離脱するなど、国内からもベストのメンバーを集められたわけではない。大会前の期待値は、いま現在のアギーレのチームよりも低かった。

 しかし、数少ない海外組だった川口能活(当時ノアシェラン)が守備を、中村俊輔(当時レッジーナ)が攻撃を牽引したチームは、頂点へと駆け上がるのである。当時はまだ経験の少なかった玉田圭司は、中国での戦いを通じてFWのポジション争いに食い込んでいった。

 2017年のコンフェデレーションズカップの出場権がかかるだけに、ベストメンバーでタイトルを取りにいくべきとの意見は根強い。しかし、その代償として海外組がクラブでポジションを失ったりしたら、結果的にチームの成長が阻害されてしまう。本田らがクラブで確固たる地位を築くのは、日本代表の利益に資する。彼ら抜きでも一定水準以上のレベルは保てるし、保てなければいけないと思うのである。

戸塚啓(とつか・けい)。1968年生まれ。サッカー専門誌を経て、フランス・ワールドカップ後の98年秋からフリーに。ワールドカップは4大会連続で取材。日本代表の国際Aマッチは91年から取材を続けている。2002年より大宮アルディージャ公式ライターとしても活動。

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