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ボスニア生まれの“魔術師”ピアニッチ「ロマニスタの熱い愛情をいつも感じている」

2014.11.11

ROME, ITALY - AUGUST 30: Radja Nainggolan of AS Roma celebrates after scoring the opening goal during the Serie A match between AS Roma and ACF Fiorentina at Stadio Olimpico on August 30, 2014 in Rome, Italy. (Photo by Paolo Bruno/Getty Images)

[ワールドサッカーキング12月号掲載]

14年ぶりのスクデットへ向けて順調な歩みを続けるローマにあって、ミラレム・ピアニッチは最もチームに不可欠な存在と言える。ロマニスタを魅了する卓越したテクニックと美しいゴール、ボスニア生まれの“魔術師”がローマをビッグタイトルへといざなう。
AS Roma v ACF Fiorentina - Serie A
インタビュー・文=ピエロ・トーリ
翻訳=高山 港
写真=ゲッティ イメージズ、アフロ

 地元出身で、子供の頃からロマニスタとして育ったフランチェスコ・トッティやダニエレ・デ・ロッシを軸とするローマにあって、ミラレム・ピアニッチはアメリカ資本を最も象徴する選手だろう。アメリカの投資グループがイタリアの首都に乗り込んで最初に獲得した選手の一人、それがピアニッチだった。

 ローマはフランスのリヨンでプレーしていた21歳の若者に1100万ユーロ(約14億円)を投じた。それから3年と数カ月を経た今、ピアニッチはテクニック面、フィジカル面、戦術面のすべてにおいて世界最高のMFの一人と評されるまでになった。

 今夏、ヨーロッパ中のビッグクラブがピアニッチの獲得に乗り出したのも当然だった。4000万ユーロ(約52億円)という巨額オファーを提示したクラブもあるという。だが近い将来、ヨーロッパのトップに躍り出ることを目標とするローマが、その原動力になるであろうピアニッチを手放すはずがなかった。クラブはピアニッチと新たに2018年までの4年契約を締結、年俸も手取り300万ユーロ(約4億円)を補償して、“チームの宝”を囲い込む意思を示した。

 昨シーズンは王者ユヴェントスの後塵を拝した。だが、ロマニスタの多くはスクデットの可能性はかなり高まっていると見ている。そしてピアニッチもまた、近い将来、“ローマの時代”が来ることを確信しているようだ。

あんな形で負けるのは本当に不愉快だ

――先日のユヴェントス戦では悔しい負けを喫したね。いいところまで行きながらあと一歩のところでユーヴェに勝つことができない。ローマには何が欠けているのだろう?

ピアニッチ 僕が見る限り、欠けているものなんて何もない。特に今シーズンのローマは、完璧なチームに仕上がっていると言える。選手層も厚くなった。故障者が出ても、それを補うだけのメンバーがいる。主力が抜けてもチームの戦力が落ちないということは、今のローマの強みだと思う。ユーヴェ戦では悔しい負けを喫したけど、あれは単にツイてなかったというだけだよ。

――ツイてなかったとは、具体的には何を指している?

ピアニッチ ゲーム中におかしなことが起きたのさ。それがなぜか僕らに不利な形で起こる。一つの不運がゲームの勝敗を決める。その勝敗がスクデットの行方を決めることだってあるというのにね。

――それは不利なジャッジのことを言っているんだよね? あの試合のレフェリーのジャッジについては、今もイタリア中が大騒ぎしている。

ピアニッチ そうだよ。あの試合のジャッジはどうにも理解できない。リプレーを見てもユーヴェに与えられた2つのPKはあり得ないものだったし、決勝点となった(レオナルド)ボヌッチのシュートだってオフサイドと判定されるべきだった。要するに、ユーヴェの3点はいずれもミスジャッジから生まれたものなんだ。本来ならローマが2-0で勝っていたゲームだよ。あんな形で負けるのは本当に不愉快だ。勝ち点3を失っただけじゃない。ユーヴェが得た勝ち点3を踏まえると、実質6ポイント失ったことになるんだ。この6ポイントがスクデット争いにどれほどの影響力を持つか、誰にだって理解できるだろ?

――イタリアではいつも、“心理的従属意識”という言葉が用いられる。多くのレフェリーがユーヴェのプレッシャーを感じているというのだが、それについてはどう思う?

ピアニッチ 約3年前にセリエAにやって来てから、ユーヴェが判定に恵まれたというケースを何度か目にしてきた。逆にユーヴェに不利になる判定はほとんど見たことがない。ということは、“従属意識”は存在していると言えそうだね。ただ、ユーヴェが強いチームだということを否定するつもりはない。素晴らしい選手たちを擁した、伝統あるクラブだということは認めるよ。だからこそ、強いユーヴェを倒したいと強く願っている。彼らを倒すことができたら最高だろうね。

ローマが優る点はティフォージの存在

Parma FC v AS Roma - Serie A

――今のローマがユーヴェに勝るものがあるとしたら、それは何だろうか?

ピアニッチ 両者の力はすごく拮抗しているし、差は全くないと言える。勝敗を決めるのはちょっとした“出来事”だと思う。選手のちょっとしたミスや、レフェリーのジャッジで勝敗が決まるんだ。あえてローマが優っている点を挙げるとすれば、ティフォージの存在かな。ローマファンは本当に情熱に溢れている。僕らは毎試合、ファンの情熱を感じながら大きなモチベーションを持ってプレーしている。どこに行っても、サポーターの声援の下でプレーできるんだ。ロマニスタの熱い愛情をいつも感じているよ。

――ローマとユーヴェの戦力を比較してみようか。まずはディフェンス面から。

ピアニッチ ディフェンス面での差は全くないと思う。ローマは守備の中心だった(メディ)ベナティアが移籍したけど、代わりにやって来たギリシャ代表の(コスタス)マノラスはベナティアの穴を補って余りあるパフォーマンスを見せてくれている。一方のユーヴェ守備陣はイタリア代表の3人で構成されている。そして、今も世界最高のGKの一人と称される(ジャンルイジ)ブッフォンもいる。ただ、僕らにも(モルガン)デ・サンクティスがいる。僕は彼の安定したセービングは世界ナンバーワンだと思う。

――中盤はどうかな?

ピアニッチ 僕はローマの選手だから、当然ローマのほうが優れていると言うよ(笑)。実際のところ、ローマのほうが優っているんじゃないかな。僕、デ・ロッシ、(ラジャ)ナインゴラン、それに(ケヴィン)ストロートマンも間もなく戻って来る。更に今シーズンは正真正銘のカンピオーネと言うべき(セイドゥ)ケイタも加わった。加えて、高い潜在能力を持った若手も大勢いる。ユーヴェにも素晴らしいMFはいるけど、タレントの量ではローマが優っていると思うけどね。

――じゃあ前線は?

ピアニッチ FW陣に関してもローマに1票を入れたい。質、量ともにローマが上回っているよ。(フアン)イトゥルベの加入でローマの攻撃のクオリティは上がった。それに、若い(マッティア)デストロと(アデム)リャイッチがともに成長著しいからね。確かに(カルロス)テベスは一人でゲームを決めることができる世界有数のストライカーだ。ただ、全体で見れば、ローマのほうが一枚上だよ。

――最後に采配面の比較もお願いしたい。リュディ・ガルシアとマッシミリアーノ・アッレグリ、どちらが上?

ピアニッチ もちろん、ガルシアに票を投じる。彼はわずか1年余りで素晴らしいチームを作り上げた。ガルシアのやり方に不満を抱く選手は一人もいないよ。アッレグリがどんな人間なのか僕は知らない。ただ、ユーヴェを3連覇に導いたアントニオ・コンテの後任ということが、とてつもないプレッシャーになっているはずだ。アッレグリも勝者のメンタリティーを持った監督だろうとは思う。だけど、不慣れな土地、不慣れな雰囲気の中で、自在に采配を振るえるとは思えない。

今季のローマについて語ったピアニッチが、自身のベストゴールやCLに言及。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング12月号でチェック!

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