2014.04.15

日本初となるアーセナル公式の常設サッカースクールが開校…アーセナルSS市川の理念とは

[ワールドサッカーキング1405号掲載]

4月15日、日本初となるアーセナル公式の常設サッカースクールが市川市で開校する。クリエイティブなプレースタイルと確かな育成実績を持つアーセナルの日本進出は日本サッカーに何をもたらすのか。代表を務める幸野氏にスクールの理念を聞いた。

インタビュー・文=国井洋之 写真=ゲッティ イメージズ

自前のピッチと実績豊富なスタッフ

――まず始めに市川でアーセナルのサッカースクールを始めるに至ったきっかけ、経緯を教えてください。

幸野 私は育成を中心にサッカーに関わる課題解決を図るサッカーコンサルタントとして活動しています。その中で感じていたのは、サッカーを日本の文化として根づかせるためには、多くの人にプレーする喜びを知ってもらう必要があるということ。そして、そのためにはまずグラウンドを作り、サッカーを楽しめる環境を作らなければならないということでした。そういう思いもあって、公共施設の建設や管理、運営などを民間の資金で行うPFI(プライベート・ファイナンシャル・イニシアチブ)という手法を使い、市川市から遊休地を有償で借り受けました。私たちが民間のファンドを作り、税金を使わずに民間のお金で施設を作って市民サービスを提供するという形を実現したわけです。サッカー施設の建設に関してこうした手法を使ったのは、恐らく日本で初めてだったんじゃないでしょうか。

――まずはグラウンドを作るところからスタートしたと。

幸野 そうです。グラウンドを作りたいというのがまず最初にあった。育成ではもちろん指導法なども大事ですが、グラウンドがなければ始まらない。日本において何が足りないかと言えばソフトよりもハード面。私自身、昔からグラウンドを作ることが大事だと思っていました。

――グラウンドの運用という点ではいろいろな選択肢があったかと思います。なぜアーセナルだったのでしょうか?

幸野 アーセナルはイングランドのクラブ、ヨーロッパのクラブの中でも育成で成功しているという印象がありました。育成の実績という部分でアーセナルと仕事をしたいなと。アーセナル側にも日本に進出したいという思惑があり、それがうまくハマった。長い交渉の末に契約が合意に至り、アーセナルを日本に連れて来ることができたわけです。ダイレクトパス中心の速いパス回しとクリエイティブなプレー、特にアタッキングサードの局面で見る者をワクワクさせるようなプレー。そういうアーセナルのメソッドを日本の子供たちに伝えることで、日本人にも同じプレーができると証明したかった。

――日本には他にも海外クラブが主宰するスクールが数多く存在しますが、アーセナルSS市川の特徴、売りというのはどんな部分ですか?

幸野 まずは自前のピッチを所有しているという点。現在は他のヨーロッパのクラブもどんどん日本に進出していますが、自前のフルピッチを持っているスクールは恐らく他にありません。ほとんどがフットサル場などの施設でやっている状況です。私たちには自前のピッチがあり、腰を据えて取り組める環境、試合ができる環境がある。そこが一番の特徴であり、魅力だと思います。更に現地から常駐のコーチが来日して、アーセナルのメソッドを伝えてくれる。もちろん、私たちがそろえたスタッフも優秀な人間ばかりです。

――スタッフの方々について詳しく教えてください。

幸野 まず、清水エスパルスのチーフスカウトとして岡崎慎司選手を発掘した実績がある興津大三をGMとして招きました。メインのコーチはオランダ出身でヴィッセル神戸と大宮アルディージャで育成コーチとしての実績を持つロビー・セルファイス。そして、もう一人はコンサドーレ札幌で選手としてプレーし、FC東京で指導者として働いていた権東勇介です。みんな私が信頼を置く、Jリーグのクラブにも負けない優秀なコーチ陣ですから、最高の環境が整ったと自負しています。

――現在もスクール生を募集していると思いますが、周囲の反響はいかがでしたか?

幸野 大きな反響がありました。特にグーナーの方からは「ぜひ来たい」、「どうしてもウチの子を入れたい」という要望がたくさんありましたね。そういう期待に応えるべく、現在も着々と募集活動を進めてます。既に1時間の入校説明会を20回以上はやりました。実際に開校したら問われるのは中身ですし、丁寧に説明して、納得した上で入って頂きたいですからね。

選手優先の理念と自立を促す指導法

――アーセナルSS市川はスクールだけでなく、チームとしても活動するそうですね。

幸野 4歳から12歳までは男女混合のスクールですが、中学生に関してはチーム登録しています。既に男子は新1年生と新2年生のセレクションが終わってチームが完成している。女子もセレクションの最中で、今後チームとして活動していく予定です。当初は女子チームを作るべきかという議論があったのですが、間口はできるだけ広いほうがいいという結論に達した。私たちの基本理念の中に「プレーヤーズファースト」というのがある。とにかく選手たちが最優先という考え方です。私たちがチームを作ることで選手の選択肢が広がるわけですから、そういう意味でこれもプレーヤーズファーストの一つですよね。

――チーム登録したということは、実際に大会などにも出場されるのですか?

幸野 中学生についてはジュニアユースのチームとして活動します。ですから、「アーセナルSS市川」という名前のチームが主要な大会に出ていく。アーセナルの名がついたチームが日本の大会に出るんですから画期的ですよね。実際、千葉クラブユース選手権にエントリーして、既に組み分けも発表された。そこに「アーセナルSS市川」という名前があるのは感慨深いです。個人的には日本のサッカー史に残る出来事だったと思いますし、ついにそういう時代が来たんだなと。

――今後、同じようなケースも増えてきそうです。

幸野 私たちが先駆者となって、中学レベルの公式戦に世界中のクラブが入り込むような時代が来たらいいですよね。先程のプレーヤーズファーストにも通じますが、子供たちの選択肢はできるだけ多いほうがいい。最近は宮市亮選手のように、子供たちが直接ヨーロッパのクラブに行くことも可能な時代になった。恐らく、今の小・中学生の中には、直接海外に行きたいと考えている子もたくさんいると思います。私たちのセレクションを受けた中学生の中に、沖縄から来た選手がいる。「どうしてもここでやりたい」ということで、母親と兄弟を沖縄に残して父親と2人で移住してきたんですよ。驚きましたけど、それだけ私たちへの期待が大きいということです。中学生にして既に憧れのクラブがあって、明確な目的意識を持っている。私たちはその期待に応えていかなければいけませんし、それに応えるだけの施設とスタッフをそろえることができたと思っています。

――先程、理念という言葉が出ましたが、スクールとしての今後の取り組み、ビジョンについても聞かせてください。

幸野 これまでサッカーコンサルタントとして育成に関わってきた中で、私自身が最も重視してきたのが子供たちの「自立」です。子供たちを大人として扱い、自分の頭で考えられるような選手に育てる。コーチに言われたことだけやっているようでは絶対に上にはいけませんから。自分で考えて選択し、失敗したら自分で責任を負う。スクールとしてそういう教育をしていきたいですね。日本人は和を尊び、争いを好まない。仲間と手をつなぎながら生きていく。潜在的にそういうマインドを持っている。それは悪いことではないんですが、ことサッカーに関してはリスクを犯してチャレンジするメンタリティーが必要になる。

――確かにチャレンジする意識というのは日本人に欠けている部分かもしれませんね。

幸野 だから指導者は、失敗してもいいからどんどんチャレンジしなさいと教えなければいけない。メンタリティーも一緒に変えていく。アーセナルのメソッドをただ輸入すればいいというわけではないんです。私は実際に世界トップクラスの育成機関をこの目で見てきましたし、Jリーグのトップの育成に関わったスタッフもいる。ですから日本の育成の良い部分、悪い部分というのを知っています。その経験を生かして日本の良い部分とヨーロッパ良い部分、アーセナルのメソッドをうまく融合させていく必要があると思っています。スクールから実際にプロになれる選手はほんの一握りかもしれない。でも、プロになれなかった子供たちがいずれ社会に出た時、新しいことにチャレンジしていけるような指導を実践していきたいですね。

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