レアル・マドリード移籍を振り返ったイジャラメンディ
[ワールドサッカーキング0905号掲載]
バスク地方の小さな村で生まれ育った若者が、世界にその名をとどろかすレアル・マドリーの一員となった。青年の名はアシエル・イジャラメンディ。その双肩には、スペインの未来が託されている。

インタビュー・文=ホセ・フェリックス・ディアス Interview and text by Jose Felix Diaz
翻訳=高山 港 Translation by Minato TAKAYAMA
写真=ゲッティ イメージズ、アフロ Photo by Getty Images, AFLO
アシエル・イジャラメンディは、バスク地方ギプスコア県出身のセントラルMFである。レアル・ソシエダの下部組織で育ち、2011-12シーズンにリーガ・エスパニョーラデビュー。昨シーズンは、R・ソシエダをリーガ4位に導く大活躍を披露し、クラブの、そしてバスクサッカー界の未来を担う存在として大きな注目を集めた。
そして今年の夏、彼の周辺は一気に賑やかさを増したU-21スペイン代表の一員として参加したU-21ヨーロッパ選手権で欧州制覇を達成。一躍、スペイン中にその名をとどろかせると、更にはレアル・マドリーが約42億円という破格とも言える大金を投じて彼を獲得したことで、イジャラメンディの名前は世界中を駆け巡ることになったのだ。今やその双肩にはバスクサッカー界のみならず、スペインサッカー界の未来が託されている。
計り知れないほどのプレッシャーを感じているはずだが、イジャラメンディは強気にこう語る。「マドリーのような偉大なクラブからの誘いを断れるはずはない。時期的にも最適だったと思う。ちょうど良いタイミングでビッグクラブに移籍できたと思っているよ」
クラブの期待は肌で感じている
――まずは夏のU-21欧州選手権を振り返ってくれるかな。
イジャラメンディ パーフェクトな大会だったね。初戦から決勝まで、非の打ちどころのない戦いぶりだったと思う。チームの団結力も申し分なかった。ミスも少なかったし、スペクタクルな攻撃サッカーを実践した上での優勝だった。僕らの努力が報われたという感じだ。このチームのレベルの高さを見れば、スペインの将来は約束されたも同然だ。今回、欧州選手権を戦った選手たちは、近い将来、スペインのA代表として重要な役割を演じるはずだよ。
――そして大会後にはR・マドリー移籍が正式に発表された。移籍を決意した経緯を教えてくれるかな。
イジャラメンディ マドリーの一員になるというのは、僕にとっては人生に1回あるかないかのチャンスだった。僕のサッカー人生において最大の挑戦とも言えるだろう。フロレンティーノ・ペレス会長、そしてマドリーのフロント陣が僕に興味を示してくれて、獲得に動いてくれた。僕にとっては本当に信じられないようなことだった。マドリーに誘われて「ノー」と言える選手なんていないよ。
――R・マドリーから具体的な話が届いたのはいつ頃?
イジャラメンディ U-21欧州選手権が終わり、バカンスに入ってから数日後のことだった。代理人からマドリーからオファーがあったと伝えられたんだ。僕にそれを断る理由は見当たらない。すぐにマドリッド行きの準備を始めたよ。
――R・マドリーは君を重要な選手として評価したようだけど、このことをどう思う?
イジャラメンディ とにかく、僕を獲得するために大きな努力を払ってくれたことに感謝している。僕が重要な選手だって? それは時間が経てば分かることだよ。正直に言って、現段階で僕がマドリーの主役を演じることができるとは思っていない。マドリーでプレーしているのはとてつもない選手ばかりだからね。ただ、僕としてはチームに貢献するために自分のできることを全力でこなすつもりだ。現時点で、(カルロ)アンチェロッティ監督が戦力外と見なしている選手は誰もいない。つまり、僕にもチャンスがあるということさ。クラブの期待は肌で感じている。だから、この伝統あるエンブレムを汚さないよう、最大限の努力をするしかないと思っているよ。そして、僕が加わったマドリーの13-14シーズンが大きな成功をつかむことを願うだけさ。期待を裏切らないようベストを尽くすつもりだよ。
マドリーは本当にスペシャルなチーム
――マドリッドの印象は?
イジャラメンディ すべてが“ビッグ”だね。町も大きいし、サンティアゴ・ベルナベウも、マドリーのファンの数も桁違いだ。ソシエダとは何もかもが違うよ。マドリーの一員として数週間しか過ごしていないけど、既にチームのすごさ、偉大さは理解したつもりだ。マドリッドの町の至るところに、このクラブの伝統が息づいていると感じている。もちろんラ・レアル(R・ソシエダの通称)への懐かしさはある。サン・セバスティアンにあってマドリッドにない物もたくさんあるよ。ただ、マドリーでプレーするという、限られた人間に与えられた特権を放棄するつもりはないよ。
――実際に合流して、R・マドリーの印象はどう? 想像どおりのチームだった?
イジャラメンディ マドリッドに来る前に、(シャビ)アロンソからチームのことは聞いていたんだ。アロンソは「信じられないくらい素晴らしいチームだ」と言っていた。そして実際、そのとおりだったよ。最高のチームに加入したと感じている。マドリーは本当にスペシャルなチームだよ。
――マドリーのようなビッグクラブでポジションを勝ち取るのは難しいけど、その点に関してはどう思っている?
イジャラメンディ ポジション獲得のためには、謙虚な気持ちで練習に励むしかないと思っている。すごく難しいことは覚悟しているよ。マドリーの一員になって、僕の人生は激変するだろう。人口5000人の村から大都市にやって来たんだから、それも当然のことだ。でも、僕自身は何も変わらない。今までどおり、努力を怠らないつもりさ。
――ビッグクラブでの挑戦にプレッシャーはない?
イジャラメンディ ビッグクラブだからといって、委縮する必要はない。僕は今までどおりのプレーをするだけさ。今はシーズンに向けて最高のコンディション作りをすることだけを考えている。マドリーでのチャレンジに関しては、不安より期待感のほうが大きいよ。僕はポジティブな人間なんだ。
――アンチェロッティ監督からは何か特別なことを言われているの?
イジャラメンディ 僕と監督はほぼ同じ時期にチームに合流した。監督がチームに合流した2日後、僕がキャンプ地入りしたんだ。監督は僕を信頼していると言ってくれたし、僕の移籍に関して「巷でささやかれている金額のことなど気にするな」とも言ってくれた。友達もいないし、目新しいことばかりの環境に身を置いた僕にとって、アンチェロッティの言葉はすごくうれしいものばかりだった。彼の言葉で不安は取り除かれたよ。
――具体的にどんなプレーをするよう言われている?
イジャラメンディ まだ具体的な話には至っていないけど、「イジャラメンディらしいプレーをするように」と言ってくれた。他の選手のまねをするのではなく、自分自身のプレーをするよう言われている。自分ができることをしなさい、ということなんだと理解している。
――ジネディーヌ・ジダンの説得で君のR・マドリー入りが決まったと言われているけど、実際のところはどうなの?
イジャラメンディ いや、それは違う。ペレス会長からの電話がすべての始まりだった。会長は真剣に僕を説得してくれた。彼はマドリーがどんなクラブなのかを詳細に説明してくれた。そしてマドリッドに到着してからの最初の数日間、常に僕と一緒にいてくれたんだ。実は僕の故郷であるモトリコの村から、40人くらいの友人が入団発表を見にマドリッドまで来てくれたんだけど、会長はなんと全員を貴賓席に招待してくれたんだ。彼らにとっては一生の思い出になったはずだよ。会長は本当に細かいことにまで気を配ってくれる。もちろん、ジダンからも時々アドバイスを受けているよ。ジダンは子供の頃から憧れていた選手だ。そんな人のアドバイスを仰げるなんて、信じられない気分さ。
新加入のイジャラメンディがチームメート、新シーズンに言及。インタビューの続きは、ワールドサッカーキング0905号でチェック!