2018.10.23

【コラム】現役最高のイタリア人選手に選ばれた“小兵”インシーニェ。今季絶好調の秘訣とは?

インシーニェ
好調を維持するナポリのエース・インシーニェ [写真]=LightRocket via Getty Images
1998年にローマに語学留学し、同市内のアマチュアクラブ、ロムーレアの練習に参加。カルチョだけでなく全てのアッズーリをこよなく愛し、日伊協会会報誌『CRONACA』では、イタリアに特化したスポーツ記事を連載中。2017年11月『使えるイタリア語単語3700(ベレ出版)』を共同執筆。イタリア語検定協会事務局員。

 イタリア人選手で今、最も期待されている男。それはナポリの小兵、ロレンツォ・インシーニェだ。『コリエレ・デッロ・スポルト』紙が今月行ったインターネットでのアンケート調査で、インシーニェが現役最高のイタリア人選手に選出された。現在のイタリア人選手には突出した才能の持ち主がいないとはいえ、唯一、二桁台の得票率18パーセントを獲得。7パーセントの得票率で2位に入ったチーロ・インモービレ(ラツィオ)に2倍以上の差をつけ、トップの地位を獲得した。

 今シーズンのインシーニェは、すこぶる好調だ。今年6月に27歳の誕生日を迎え、サッカー選手として最も脂の乗った時期を迎えている。数字の上でも好調さが窺える。リーグ戦では9試合を終えて6ゴールをマーク。16-17シーズンは、トップリーグにおけるキャリアハイの18ゴールをマークしているが、このシーズンはリーグ戦で13試合目までゴールがなかった。それゆえ、今シーズンは自身のシーズン最多ゴールを感じさせるほどの素晴らしいスタートダッシュを切ったと言えるだろう。チャンピオンズリーグでは、昨シーズンのファイナリストのリヴァプールを相手に決勝弾も決めており、決定的な仕事も見せている。開幕からゴールラッシュが続く要因は、ポジションの変化にあるようだ。3トップの左サイドを担った昨シーズンは、自陣ペナルティエリア近くにまで戻り守備を要求された。しかし、カルロ・アンチェロッティ監督が就任した今シーズンは2トップの一角を占め、より高い位置で、攻撃に専念するようなプレーが求められている。そのため、非凡な技術力がアタッキングゾーンで遺憾なく発揮され、それがゴール量産につながっている。実際、インシーニェもより攻撃的にプレーするように指示を受けていることを認めており、6ゴール目を決めたセリエAのサッスオーロ戦後にはこう語っている。「ゴールを目標として常にピッチに立っているよ。そうすることで期待に応えることができる。アンチェロッティ監督には、守備面を軽減して、よりゴールに近い位置でプレーするように言われているんだ」

インシーニェ

今季はアンチェロッティ監督のもと、より攻撃的にプレーするようになった [写真]=NurPhoto via Getty Images

 1メートル63とセリエAで最も小柄なインシーニェをピッチの上から俯瞰すると、まるで子供が大男たちに混ざってプレーしているように見間違えるほど。フィジカルが圧倒的に物を言う現代フットボールの中で、インシーニェの存在は奇跡のようなものだ。小刻みなタッチから生み出されるドルブル、切れ味鋭いキックフェイント、正確無比なFK、意外性のあるラストパスをストロングポイントとすることで、サッカー選手としての過酷な生存競争を生き延びてきた。しかし、インシーニェをトップレベルで支えている優れた点はこれだけではない。チーム内でもトップレベルの持久力の高さもこの小兵の持ち味の一つ。レンタル移籍したフォッジャ時代とペスカーラ時代に、ズデネク・ゼマン監督によって、厳しく鍛えられたおかげだ。最後まで連続してエレベーターのように上下動を繰り返しても、それが可能なだけのスタミナを持ち得ているが、後半になれば当然運動量の低下は否めない。けれども、今シーズンは、守備の負担が軽減されていることで、攻撃に比重を置くことができている。それゆえ、リヴァプール戦で生まれた決勝ゴールも、偶然の産物ではなく、智将アンチェロティの進言がズバリと的中した形となった。

 今シーズンのセリエAの優勝争いは、9試合を終えただけであるが、すでにユヴェントス優勝の様相を呈している。ナポリも2位につけて首位ユヴェントスに必死に食らいついてはいるものの、勝ち点4差は大きい。それでも、インシーニェがこれまでのような好調を維持し、シーズン終盤まで得点を重ね続けてチームを牽引することができれば、リーグ戦の行方もまだ分からない。昨シーズンからはゲームキャプテンを任される機会も徐々に増え、精神面でもチームを支える立場になり、“バンディエラ”の言葉も板につき始めようとしている。ナポリの近郊の町、フラッタマッジョーレの出身で、下部組織から這い上がってきた選手だけにティフォージの期待も一際大きなもの。ナポリに2度のスクデットをもたらした英雄ディエゴ・マラドーナに重ね合わせる人たちもきっと少なくないだろう。

▼アンケート結果(現役最高のイタリア人選手ベスト10)
ロレンツォ・インシーニェ(ナポリ)…18%
チーロ・インモービレ(ラツィオ)…7%
フェデリコ・ベルナルデスキ(ユヴェントス)6%
ニコロ・バレッラ(カリアリ)5%
ジョルジョ・キエッリーニ(ユヴェントス)5%
フェデリコ・キエーザ(フィオレンティーナ)5%
アレッサンドロ・フロレンツィ(ローマ)5%
ロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)5%
マッテオ・ポリターノ(インテル)5%
マルコ・ヴェラッティ(パリ・サンジェルマン)5%

文=佐藤徳和

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